凶悪な策の一手目は敵を惑わす事から
天正十三年(1585年)十月十二日
伯耆国 某所
「殿!数日前の軍議にて、加藤殿が提案しました米蔵が完成しました!米蔵の中には、偽の米俵も大量に設置しております」
皆さんこんにちは。官兵衛さんの毛利の足軽達を一網打尽にする軍勢から6日後に、偽の米蔵
又の名を「毛利の足軽ホイホイ」が完成したと源太郎から報告を受けております、柴田六三郎です
偽の米蔵の中には、簡易ダイナマイトと小さい石を詰めた米俵が50俵設置されておりまして、疑われない様に、本物の米俵も30俵ほど、米蔵の前と中に設置しております
それで、策の大まかな内容といたしましては、毛利を見つけたら即逃げて、その際、米を捨てていく事を大声でアピールして、俺達が逃げたあとに、米蔵に毛利の足軽達が入っていったら、火矢を放つ!
という、ある程度、演技力が必要な策ですが、緊張感溢れる戦場ですから、例え棒読みでも大丈夫でしょう
ちなみにですが、毛利の足軽達を一網打尽にする為の策として、1番凶悪なのが、米蔵の土台及び周辺に簡易ダイナマイトを埋め込んでおります
まあこれは、爆心地を大きめに取って、1人でも多く毛利の足軽達を討ち取ってしまえ!と言う事です
まあ、これを毛利に見つからない為に小競り合いが何度かありましたが、撃退しました。ですが、目敏い足軽や大将は気づいたかもしれません
それならそれで、引っかかる人間が増えて、良い事かもしれません。とりあえず、毛利の山陰を守る軍勢が総攻撃をかけて来たら、俺達は逃げるフリをするだけなので、毛利が動くまでは待つだけです
六三郎達が凶悪な策で毛利を待ち構えている頃、吉川元春率いる毛利軍は
「殿。足軽達から、織田が米蔵を建てたと報告がありました」
「米蔵?織田はそんな物を作る余裕があるのか」
「しかも、中には乱雑に米蔵の外に放り投げられた米俵もあったそうです」
「大事な兵糧をその様に扱うとは、此度、山陰を攻めている大将は何を考えておるのじゃ?全く読めぬ!」
「殿。足軽達の不満も高まって来ましたので、ここは」
「そうじゃな。明日、全軍で突撃して、織田が逃げたのなら、追撃せずに兵糧を回収しよう。足軽達は勿論、大将格の者達にも伝えておいてくれ」
「ははっ!」
こうして、なし崩し的な流れで山陰の毛利軍は、六三郎率いる織田家の別働隊の兵糧を奪う為の突撃を決断した。
天正十三年(1585年)十月十三日
伯耆国 某所
「六三郎殿。そろそろ毛利が焦れてくる頃合いですな。手の者が毛利の軍勢が総攻撃と思しき、準備をしているそうですぞ」
皆さんおはようございます。黒田官兵衛さんから、毛利の軍勢が焦りから大軍を動かす十準備をしていると報告を受けました柴田六三郎です
俺達が進軍を開始してから、10日くらいしか経過してないのに、そういう展開になると言う事は、秀吉はかなりの規模の青田刈りを実行した様ですね。それでは、俺達も準備を開始しましょう
「官兵衛殿。素晴らしい報告、ありがたき。それでは我々も準備に取り掛かりましょうか」
「うむ。どの様に毛利の軍勢を攻撃するか、期待しておりますぞ」
「あまり過度な期待はしないでくだされ」
そんな感じの与太話をしながら、準備をしながら待っておりましたら、
「殿!毛利が攻めて来ました!」
最前線に居る銀次郎達が毛利を見つけたみたいです。それじゃあ、一芝居始めますか!
「撤退じゃあ!撤退せよ!米は捨てていけ!撤退の邪魔じゃあ!皆、急げ!」
「撤退じゃあ!」
「武器だけ持って撤退せよ!」
「撤退じゃあ!」
俺が芝居のスタートを切ると、皆も芝居をする。そして、ちゃんと行動も起こしまして、毛利から距離をとりながら、事前に決めていた隠れ場所に集合して、毛利の動きを観察しましょう
六三郎達に見張られている事を知らない、毛利の足軽達は、最初の米俵を見つけると
「こ、米じゃあ!久しぶりの米じゃあ!」
「儂にも!儂にも米を!!」
「くそ!!この米俵は偽物じゃあ!他の米俵は!」
我先にと米俵に飛びつく。ちゃんと米の入っている当たりの米俵を見つけた足軽は、他の足軽に奪われない様に、口の中に米を放り込むが、途中で
「うっ!げえええ!こ、この米俵、石が混ざっておる!くそお!これっぽっちの米で腹が膨れるか!他の米俵も寄越せ!」
中身をかさ増しした石を齧った事で、米が少ない事に気づく。そしてまた、別の米俵に飛びつく。それを繰り返していくうちに、
「米蔵の中に大量の米俵があるぞ!全部持って行くぞ!」
と、1人の足軽が米蔵の存在をアピールした。ちなみにだが、この足軽、山中鹿之介が潜入させた尼子新宮党の1人で、
言葉のイントネーションでバレない為、そして毛利に大打撃を与える為に、自ら志願した強心臓の持ち主である
そんな事を知らない毛利の足軽達は、我先にと米蔵の中に入っていく。米蔵の周囲も合わせて千人くらいの足軽が集合した事で六三郎は、
「それでは源三郎。米蔵の中に火矢を頼むぞ!」
「ははっ!」
昌幸の嫡男の信幸に火矢を放つ命令を出す。火矢は、綺麗な弧を描いて、米蔵の窓の隙間から入り、米蔵の床に刺さる
火矢が刺さって、およそ2秒後、
ドーン!と米蔵が大爆発を起こす。米蔵の中に居た足軽の殆どは、即死した。それだけでなく、
「ぎゃああ!熱い!熱いい!」
と、全身火だるまの足軽が、米蔵の外に出て来て、無事だった足軽達の恐怖心を倍増させる。そして、運の悪い事に、
火だるまになった足軽が力尽きて倒れた場所は、簡易ダイナマイトが詰め込まれている米俵の上だった
勿論、その周囲の地面にも簡易ダイナマイトが埋め込まれている。米俵の中の簡易ダイナマイトに火が付くと、
ドン!
と、足軽の死体が吹き飛んだ。そして、その死体に目を奪われた足軽達は、地面に埋め込まれている簡易ダイナマイトの爆発から逃げられず、
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
と爆発に巻き込まれて、即死した者、片足が吹き飛んだ者、腹が抉れて内臓が飛び出ている者等、まさしく阿鼻叫喚の地獄絵図になった
この爆発で毛利の足軽達は、およそ千五百人が戦闘不能になった。この光景を見た吉川元春は、
「な、何が起きたのじゃ?何故、地面が黒焦げになっておる!何故、足軽達の死体だらけなのじゃあ!!」
と、困惑しながら叫んでいた。それを見ていた六三郎は、
「全軍突撃じゃあ!!毛利が動揺しておるぞ!好機を逃すな!」
「「「「おおお!」」」」
全軍突撃を命じた。六三郎達の突撃に毛利の足軽達は、
「あ、あんな化け物達と戦えるか!」
「儂達も焼かれてしまうぞ!」
「織田には人を焼く鬼が居るぞ!逃げろ!」
と、散り散りになって逃げていった。
足軽達の逃散に吉川元春も、
「仕方ない!撤退じゃあ!」
戦を諦めて撤退する決断を下して、撤退していった。




