名将2人と六三郎は凶悪な策を出す
「では、官兵衛殿。本陣で話を聞かせてくだされ」
「ええ。では、移動しましょう」
俺達は本陣に移動しまして、昌幸さんと源太郎と、上杉さんと山中さん、そして市兵衛と虎之助を交えて官兵衛さんの話を聞く事に
「さて、官兵衛殿。毛利を一網打尽に出来る可能性のある策を教えていただきたい」
「はい。先ずは各々方、現在、毛利は我々を攻撃すると同時に兵糧を奪いに来ている。その事は理解していると判断して、その行動を利用する策として、先ず、一手目の動きとして、米俵を毛利にわざと奪われる様に捨てていきます」
官兵衛さんの説明に源太郎は
「黒田殿。それでは、毛利に兵糧をみすみす与えてしまう事に」
と、ツッコむが、官兵衛さんは
「飯富殿。確かに中身が米のままだったら、兵糧を与えてしまう事になりますが、此度、この策で米俵に詰めるのは、米以外の物、
それこそ石でも土でも良いのです。まあ、何個かは本物の米の詰まった米俵を使う事になりますが」
そう説明する。それを聞いた昌幸さんは、
「成程、黒田殿は偽の米俵で敵を誘い出して、本物の米俵もいくつか奪わせて、毛利の足軽達が我先にと集まって来た時に、一網打尽にする!そう言う策ですな?」
策のおおよそを理解した様で、官兵衛さんも
「真田殿。展開を読んでいただき、ありがたい!この策では、毛利の足軽達が一方は米を食えて、一方は食えない。
これを続ける事で、兵糧に執着させるのです。そして、多くの足軽が飛びついて来たときに、種子島と弓で一斉射撃を行うのです」
中々エグい策の中身を説明してくれた。そして、策を聞いた昌幸さんは悪い所が出たのか
「それならば黒田殿。毛利の足軽達が目の前の米を食えない様に、米の詰まっている米俵に油を染み込ませてやりましょう」
「それは良い改善案ですな。真田殿、是非とも使わせてもらいます」
と、昌幸さんの改善案を受け入れて、
「六三郎殿。これまでの話を聞いて、拙者の策を使いませぬか?」
と聞いて来たので、
「官兵衛殿。見事な策です。使わせていただきます。ですが、拙者からもひとつ改善案をよろしいでしょうか?」
「言ってみてくだされ」
「ええ。毛利の足軽達を一網打尽にする最期の米俵に詰める物を、どうせならば、攻撃出来る物に変えませぬか?」
と、俺が言うと、
「殿。まさか、あの武器を米俵に詰めて、使うのですか?」
昌幸さんは気づいた様だけど、
「喜兵衛。お主の予想通りじゃ。どうせ一網打尽にするのだから、誰も報告に行けない様にすべきと思わぬか?」
俺がそう言うと、顔が一気に緊張しだした。そんな怖い事言ったかな?俺がそんな事を考えていたら、官兵衛さんが
「六三郎殿。何やら恐ろしくも面白い武器を使う様ですな。どの様な武器か教えていただきたい」
と聞いてきたので、簡単に教えましょう
「官兵衛殿。簡潔に言いますと、種子島に使う硝石を種子島ではなく、程よい大きさの筒に入れた物です」
説明を聞いた官兵衛さんは
「ほう。話を聞くに、何やら種子島そのものよりは、敵に被害を与えやすい様ですな」
と、納得してくれた様ですので、
「では、官兵衛殿。喜兵衛と拙者の改善案を使った策で行きましょう」
「ええ。これから、偽の米俵作りに取り掛かりましょう」
「そうですな。それでは各々方、家臣の皆やお仲間に、偽の米俵を作らせてくだされ」
「うむ」
と、話が決まりそうになった時に虎之助が
「六三郎殿!黒田殿の策をより完遂に近づける為に、簡易的な米蔵等の、米俵を大量に置く場所を作るのはどうでしょうか?」
「黒田殿。虎之助殿の策も含めてもよろしいですかな?」
「そうですな、その様な建物があれば、我々が兵糧を捨てて逃げた様に見えるでしょうし、実行しましょう」
こうして、黒田官兵衛孝高立案から、真田喜兵衛昌幸と六三郎と加藤清正の改善案で、更に凶悪さを増した策の実行が決まった
そんな事を知らない山陰を守る毛利の軍勢を率いる大将の吉川元春は、
「織田の軍勢は中々しぶといな。軍勢の数は儂達が一万二千で、織田は一万程と聞いておったのじゃが、儂達の軍勢が少しばかり押されておるな」
数で勝る自分達が押されている現状に、少し苛立っていた。そこで、近くに居た家臣に
「お主、前線の状況を目の前で見ておるが、織田の兵達はどの様であった?」
と質問する。質問された家臣は
「全員の士気が高いです。特に赤備えの軍勢は凄まじく、一人で毛利の足軽を十人は討ち取っている程です」
「織田の武士は弱兵と聞いていたが、骨のある者が複数居ると言う事か」
「それだけでなく、どうやら尼子の残党も軍勢の中に入っている様でして、我々の撤退の際、多くの足軽を逃さずに討ち取っているのです」
「ここへ来て尼子まで出てくるか。最初に山陰を攻めて来た軍勢が山陽に移動したから軍勢の質は落ちたと思ったのじゃがなあ」
「殿。苦戦の理由として、織田の軍勢が予想外に粘る事も理由の一つですが、やはり、兵糧が足りてない事で足軽達が、織田の兵糧を奪おうとして、足並みが乱れているのが最大の理由かと」
「兵糧不足か。こればかりは儂が又四郎に頼んでもどうにも出来ぬ問題じゃからなあ。仕方ない、次の攻撃は、織田の兵糧を奪う事を優先するか」
「よろしいのですか?」
「仕方あるまい。兵糧不足で足軽達が逃げるだけでなく、織田に寝返ったら、儂達が苦しくなる。足軽達の士気を高める為にも、この事を伝えてまいれ!」
「ははっ!」
こうして、軍勢の事情があるとはいえ、吉川元春は兵糧を奪う事を決定した。六三郎達が凶悪な策で待ち構えている事は、当然知らない。