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文を見たら、四国の現状が少し見えた

一益の案内で吉田達は、築城途中の高松城内部へ案内されて、控え室的な部屋で一時待機させられる。その間に一益は、大広間に居る信房にこの事を伝えると、


「直ぐに連れて来てくだされ!」


と、信房は決断した。信房の命令形を受けた一益は、吉田達を大広間へ連れて来た。そして信房が


「六三郎殿のお父上の家臣の吉田殿達じゃな。儂は織田内府の四男で、現在の織田家当主、織田左中将の弟の織田讃岐守じゃ。


前置きは要らぬ、長宗我部殿へ見せる予定の文を見せていただきたい」


そう挨拶すると、


「は、ははっ。こちらにございます」


吉田達は直ぐに文を出して、それを一益が受け取り、信房へ渡すと、信房は読み出す


「どれ。「長宗我部土佐守様並びに長宗我部家の皆様へ。嫡男の弥三郎殿の正室である、初の兄の柴田六三郎です。いきなりの文、申し訳ありませぬ。


この文は現在、中国地方で共に毛利と戦っている羽柴筑前様と連名で書いております。改めて、この文を書いた理由ですが、実は一万八千もの大軍で出陣した、


織田家家臣佐久間摂津守様の軍勢が、備中国で毛利の軍勢に敗れてしまいました。大将の佐久間様を始めとした多くの面々が戦えない程の被害を受けており、


その中で、佐久間様が、「毛利以外の旗印を見た」と言っていたので、もしかしたら、伊予国の河野家を筆頭に、四国中の反織田家の軍勢が毛利に味方している可能性が出て来ました


そこで、長宗我部家の皆様に、「左中将様からの命令が出てから」、四国で反織田家の者達を叩きのめした後、我々への援軍として参戦していただきたく存じます。これより先は、羽柴筑前様に代わります


長宗我部土佐守殿。顔も見た事すら無いのに、いきなりの文、申し訳ない。柴田家六三郎殿と共に毛利にあたっておる羽柴筑前守じゃ。六三郎殿がおおよその事は書いておるが、


現在、儂達は東西南北の全てを毛利に囲まれている可能性が高い!この文が届いている頃には、儂の軍勢と六三郎殿の軍勢から、


合わせて一万の別働隊を編成して、北側の山陰を征圧する為に六三郎殿が出陣しているじゃろう。六三郎殿は、


儂に「山陽の毛利が山陰に来ない為、そして、佐久間様の代わりの総大将の羽柴様の軍勢が少なくては、佐久間様の二の舞になるので、残りの軍勢は預ける」


と言って、佐久間殿の残った軍議も合わせて二万八千を預けてくれたが、四国の者達、最悪の場合、九州の者達までもが、毛利の味方をしていたら、これでも足りないかもしれぬ


だから、長宗我部殿。四国内に居る反織田家の者達を叩きのめしたら、援軍に来ていただきたい!」と、あるな!


左近殿!長宗我部家の方々のうち、土佐守殿を始めとした、中枢の面々を急いで此処へ連れて来てもらいたい」


「ははっ!今から急いで出立します。その前に源三郎様、土佐守殿の二男の香川殿にも伝えておくべきです」


「うむ。左近殿達は、土佐国と阿波国へ直ぐに行ってくれ!儂は香川殿に先に話しておく」


「ははっ!それでは、失礼します」


一益はそう言って、大広間を出て行った。信房の命令を受けた家臣が長宗我部元親の二男で、香川家に養子に入っていて家老として仕えている香川五郎次郎親和(かがわごろうじろうちかかず〕を呼んだ


ちなみにだが、親和は信房の讃岐織田家において、長宗我部家とのパイプ役でもあると同時に、信房とも歳が近いので、友人の様な部分もある。そんな親和が大広間に到着すると、


「殿。お呼びでしょうか?」


「いきなり呼び出して済まぬな、香川殿」


「殿。拙者の事は、「香川」や「五郎次郎」と呼んでくだされ。確かに実家である長宗我部家との橋渡し役ではありますが、


拙者は殿のお人柄と、四国を暮らしやすい場所にすると言う目標に向けて共に邁進したいと思ったからこそ、家臣として仕えているのですから」


「分かってはいるのだがなあ、いかんせんまだまだ慣れなくてな。城主になった事も無い儂が、いきなり国主と言うのは」


「少しずつで構いませぬから、慣れてくだされ。それで、改めてですが、拙者が呼ばれた理由は何でしょうか?」


「そうであった。香川よ、こちらの方々は、越前柴田家の家臣なのじゃ。その越前柴田家は現在備中国で毛利と対峙しておる。詳しい事は、この文を読んでくれ」


そう言って、信房は親和に文を渡す。親和は文をじっくりと隅から隅まで読み、読み終えると


「殿!この文の内容から察するに、実家の父上達に四国の安全を確保する為に暴れ回って欲しい!そして、安全が確保されたら、毛利相手に援軍に来て欲しい。そう言う事ですな?」


「簡潔にまとめたらな。だが、此処で儂達四国側に小さい問題が起きた」


「どの様な問題でしょうか?」


「土佐守殿達が、毛利との戦に出陣した場合、誰が四国に睨みをきかせるかじゃ。儂も出陣したくてな」


「殿、それはなりませぬぞ?」


「やはり駄目か?」


「当然です!伊予国の完全征圧は勿論ですが、まだ讃岐国には、十河家が態度を明確にしていないのですから、


ここで父上だけでなく殿まで毛利相手に出陣したら、四国を抑えられる人間が居なくなってしまいます!


その様な事を言っている事が奥方様に伝わったら、また大変な事になりますぞ?それこそ、三ヶ月程前に、伊予国との境で諍いに巻き込まれた時の様に」


「うっ。あの時は、勝だけでなく義母上も恐ろしかった。思い出すだけで、恐怖が」


「殿。殿御自身ですら、奥方様と御母堂様に恐怖を感じる時があるのですから、拙者達家臣は、その恐怖は更に倍増します。お二人共、殿に無事でいただきたいからこそのお怒りなのですから」


「分かった分かった。そこまで言われては、此度の毛利との戦には出陣せんから。土佐守殿達に頼むとしよう」


「それが賢明です。父上達は、過去毛利に何度も伊予市征圧を邪魔されておりますから、此度の戦は、これまでとは見た事の無いほど、気合いが入る戦になるでしょう。積年の恨みをぶつける為に」


「ならば、儂達は邪魔しない様に後方から、弾薬や食料を送る事に専念しておこう。準備をしておいてくれ」


「ははっ!それでは、蔵に行って確認して来ますので、失礼します」


そう言って、親和は大広間を出て行った。長宗我部家と連携しながら、四国を統治すると言う難しい役割を信房は、周りに助けられながら、何とかこなしていた


そんな中での、初めての戦に関わる事案だった。

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― 新着の感想 ―
信房も六三郎とは縁のある人物だし、四国の面々には織田の武威を示すいい機会にもなりそう。
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