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俺どころか親父が生まれる前からのイザコザ

家の中に俺、源太郎、銀次郎、昌幸さんで入ると、既に兄弟と思しき男児3人が居た


「さて、尼子殿。山中殿以外で、新宮党の主だった面々を紹介していただけますかな?」


「はい。拙者の倅の豊若丸、峯君丸、常若丸の三人です。皆、柴田様に挨拶を」


「尼子豊若丸です」


「尼子峯君丸です」


「尼子常若丸です」


「ふむ。三人共、歳は何歳じゃ?豊若殿から教えてもらおう」


「十八歳です」


「十五歳です」


「十二歳です」


「ほう。尼子殿。3人は全員元服したのですか?」


「いえ、上二人の豊若丸と峯若丸は元服したのですが、末の常若丸はまだ元服しておりません」


「元服した2人を従軍させる目的で、拙者に会わせたのなら理解出来るが、元服前の末子の常若殿を会わせた目的を教えていただけますかな?」


俺が質問すると、尼子殿じゃなく山中殿が、


「柴田様!その件に関しましては、拙者から説明させていただきたく」


自分が答えます。と言って来たので、


「それでは山中殿でも良いから、説明してくだされ」


「ありがたき。それでは、先ず常若様を柴田様にお会いさせた理由ですが、我々が討死する最悪の事態が起きた時、柴田様に常若様を保護していただきたく!」


「それならば、無理に軍勢を結成せずに、尼子殿家族を山中殿達家臣の皆で支えながら、静かに暮らせば、その様な最悪を考えなくとも、良いと思いますが?」


「柴田様。そのお考えは当然ですが、それでは尼子家が独立した大名に戻れないのです!そもそもの話になりますが、尼子家と尼子新宮党の違いを、柴田様は分かっておりますか?」


「尼子家が本家で、新宮党が分家ぐらいの違いしか分からないが」


「大まかに言えば、その認識で間違いありません。ですが、その関係を壊したのは他ならぬ尼子家の本家筋なのです」


「どう言う事ですか?」


「拙者も父や祖父から聞いた話ですが、最初のきっかけはおよそ七十年前の戦で、経久公の嫡男の政久まさひさ様が討死した事でした


そして次のきっかけは。今よりおよそ五十数年前でした。尼子家の最大版図を築く土台を作っておりました、尼子経久あまごつねひさ公の三男で、尼子家に従っていた塩冶えんや家に経久公の三男の、


興久おきひさ様が養子に入り、塩冶家も力を付けて、尼子家の為に戦っていたのですが、周辺の国人領主達に唆されて、尼子家に謀反を起こしたのです


その謀反は失敗に終わりましたが、その際、最も働いたのが、経久公の次男で、又四郎様の祖父にあたります国久くにひさ様が総領を務める新宮党でした


ですが、経久公の家督を継いだのが嫡孫の晴久はるひさ様が継いだ頃から、国久様率いる新宮党が尼子家本家から距離を取っていた頃、毛利が大内を滅ぼして、


尼子家に牙を向けたのです。そして晴久様は毛利の謀略から、又四郎様の祖父の国久様、父の誠久さねひさ様、そして又四郎様の兄君達を粛清し、新宮党を弱体化させたのです。


その結果、新宮党の領地も尼子家本家が吸収して、晴久様の時代に、尼子家の最大版図が出来上がったのです。


ですが、柴田様も知ってのとおり、尼子家は毛利に負けました。そして、大名としての尼子家は滅亡しました。拙者としては、戦に敗れた事は時の運もあると思いますので、


仕方ないと思っております。ですが毛利は、謀略のかぎりをつくし、尼子家を内部崩壊させただけでなく、


経久公から家督を継いで、尼子家を安定させていた晴久様が急死して、揺れる尼子家の家督を継いだお若い義久よしひさ様が当時の公方様の仲介で成し得た和平を


一方的に破棄し、尼子家を攻撃し続けた結果、義久様が家督を継いでから、わずか五年で尼子家は滅びました。


拙者を含めた家臣達は、義久様、弟君の倫久ともひさ様、秀久ひでひさ様が毛利の人質になる事と、出雲国と石見国から出ていく事と、毛利に仕える事を条件に命を助けられました


ですが、このままでは、尼子家は毛利に良い様に使い潰されてしまいます。又四郎様は、晴久公の頃の様な多数の領地を求めているわけではありませぬ。又四郎様は」


俺は山中さんの説明を聞きながら、70年以上昔からの歴史があるとか、流石名家だなと思いつつ、


山中さんがそこまで言ったところで、


「山中殿、そこから先は尼子殿から直接聞きたい!尼子殿の思いを聞かせていただきたい!尼子殿は、尼子家を再興したとして、そこから「こうしたい!」と言う目標はあるのですか?」


「柴田様、それは」


俺が質問すると、山中さんが間に入るけど、


「尼子殿に聞いておるのじゃ!山中殿は黙っていただこう!」


俺は無理矢理黙らせる


「さて、改めて尼子殿。尼子殿の思いを、目標を聞かせていただきたい!」


「拙者は、、拙者は、、祖父と父と兄達を謀殺した毛利に一矢を報いたい!そして、戦に勝利した暁には尼子家本家の方々に、


尼子家を再興する意思があるのか、無いのであれば拙者や息子達が尼子家として大名になって良いのかを聞きたい!


柴田様!拙者は今年で三十三歳ながら、人生の殆どを東福寺の僧侶として生きておりました!そんな拙者ですが、尼子家を再興したい!!それが拙者の思いであり、目標です!」


尼子殿は、そうはっきりと言い切った。尼子殿の言葉を聞いて山中さんは泣いていた。源太郎達3人も、少しばかり泣いている。息子さん達は、言わずもがなだ


尼子殿の思いと目標を聞かせてもらったんだ、それじゃあ、


「尼子殿の思いと目標、しかと受け取った!毛利に一矢と言わず、痛撃を与えようではありませぬか!」


「では、柴田様!」


「うむ。尼子新宮党の面々を軍勢に入れましょう!先ずは毛利を叩く事を最優先に考えましょう!」


俺がそう言うと、尼子殿と山中さんは


「「ありがたき!」」


と言って平伏した。まあ、とりあえず尼子殿が山中さんの傀儡じゃない事を確認出来たし、良しとするか。

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― 新着の感想 ―
西日本にすら「柴田の鬼和子は滅んだ家の子を保護する」って評判流れてそうw とはいえ傀儡じゃないなら恩とかで山中さんを抑えることもできそうか?
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