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織田家三代への忠節に感謝

天正十三年(1585年)五月十一日

近江国 某所


場面は変わり、徳川家が期間限定の当主交代のフラグを立てていた頃、信長と勝家の軍勢は、勝家の体調を気遣いながら進んで、3週間かけて、近江国へ入っていた。


その道中、一時的な休憩を取りながら、高代の指導で勝家の右手のリハビリを行なっていた


「権六!高代の指導で右手はどの様になっておる?」


「はい。高代殿の進めるお手玉を握る訓練のおかげで、以前より半寸程、指が動きますし、腕も微々たる程度には曲げられる様になりました」


「そうか!確かに道のりは長いが、効果が現れているのならば、儂としても喜ばしい!」


「大殿。ありがたきお言葉にございます。ですが、まだ一番柔らかいお手玉ですら、完全に握る事も出来ませぬ。改めて、まだまだ先は長い事を実感しております」


「慌てずとも良い。家督を六三郎に譲ったのじゃ。時間的な余裕はあるうえ、屋敷には利兵衛や源四郎といった内政の差配が出来る者達も居る。極端な話、


権六は、領地に居るだけで良い。それこそ、十年前、六三郎が権六の嫁をあてがって欲しい理由に「耄碌しない為」とあげていたが、そうならない為にも、高代の指導は必要じゃな」


「大殿。あの頃は六三郎の言葉に「その様な事は無い」と思っておりましたが、まさか現実に起きるとなると、拙者の様な普通の武士から、あの様な子供が生まれた事が不思議でなりませぬ」


信長と勝家の会話を聞いていた高代は


「内府様、柴田様。いきなりで申し訳ありませんが、六三郎様は、ご自身ではなく柴田様に嫁をあてがう希望を出していたのですか?」


思わず、会話に入って質問すると、信長は


「ああ。六三郎が、十年前に起きた武田との戦のあと、権六に褒美や領地を与えたから、それ以外の事を叶えてやる事で、


褒美とする旨を伝えたら、三つも希望を出して来たが、可能な物ならば、叶えるつもりだったが、まさかの権六の嫁とはな」


「大殿。しかも、「男だったら一廉の武将になれた程の女子」とも条件を出しておりましたから、正直なところ、その様な女子、居るわけが無いと思っておりましたが」


「しかもじゃ、権六に市を会わせる前に六三郎から文で、子を産めない女子て構わぬとも言って来たからな。その理由も、自分の事で権六に要らぬ気苦労をさせているのだから、


子を産める若い女子を嫁にもらって、その女子が権六を振り回したら気の毒だから、若い女子でなくとも良い。じゃったからのう」


「六三郎様がその様な事を」


「まあ、今のところ、六三郎の三つの希望で叶えてやれたのは、この一つだけだがな。残り二つに関しては、越前国で自由にやらせても良いとして、


西国の戦に関しては、甲斐国の状況次第か。半介と藤吉郎が山陽と山陰から進軍して、それぞれ毛利相手に有利に戦っているからのう。


恐らく中国地方の殆どを治める毛利は、遅くとも年内には、降伏する見通しじゃ!と、なると六三郎が希望する西国の戦は九州になるか。毛利次第ではあるが、遅くとも三年以内には、九州征伐も始めたい」


「大殿。その時、拙者も出陣するつもりです」


「権六。流石にそれは許可出来ぬ。右手の事もあるが、年齢的に無理をさせたくない!それに、六三郎が言っていたではないか!


「越前国で母上とのんびり過ごして、長生きしろ」と。その言葉を権六が飲んだから、六三郎に家督を譲ったのだろう?ならば、六三郎達を信じてやれ!」


「大殿。分かりました」


「権六、お主の存在は、まだまだ六三郎達若い世代には必要なのじゃ。だからこそ戦場に立たずとも、出来る事をやってくれ!」


「ははっ!」


「うむ。それでは、安土城へ進むとしよう!皆、出立じゃ!」


「「「ははっ!」」」


信長と勝家の会話が丁度良いところでまとまったので、信長は再出発する事を伝えて、安土城へ向かった


天正十三年(1585年)五月二十日

近江国 安土城


「帰蝶、勘九郎、松、五郎左!今帰ったぞ!」


「「「「お帰りなさいませ!」」」」


安土城の大広間に信長達が到着した。信長の挨拶を聞いて、4人か平伏して返事をする。返事を聞いた信長は、信忠に近い下座に座ると、


「此度の北陸征伐、久しぶりに胸が高鳴る戦であった!特に五郎左!お主の倅は、初陣かあの様な戦では、これからの戦が物足りなくなるかもしれぬぞ?」


「大殿。どの様な戦だったか、教えていただきたく」


丹羽長秀にリクエストされた信長は待ってましたと言わんばかりに、ドヤ顔で、


「それではひとつずつ、話していくとしよう」


そう言いながら、自身が到着したあたりから、沙汰をくだしたところまでを説明すると、


「それは確かに、倅のこれからが心配になりますな」


「しかし六三郎め、その様な策を思い浮かべるとは」


「やはり、六三郎殿は常人とは考えが一味も二味も違いますね」


「改めて、道乃が六三郎の正室になった事は、大変でしょうけど、上手く六三郎を支えてくれるでしょう」


それぞれが六三郎のやった事を聞いて、色々と感想を述べていた。その中で信忠は


「権六。改めて、これまで、祖父の代から織田家の為に働いてくれて感謝しかない!六三郎の事じゃ、権六をゆっくりさせてくれるか怪しいか、家督相続の件、認めよう。これまでの働き、誠に感謝する!」


勝家から六三郎への家督相続を認めると、これまでの働きに平伏して、感謝の意を表して平伏した


それを見た勝家は、


「勘九郎様、いえ、殿。勿体なきお言葉にございます。拙者の様な戦しか知らぬ男を、織田家が召し抱えてくれた事、忠節を持って感謝を示し続けたつもりです


拙者から家督を継いだ六三郎は、かなりの常識外れですが、織田家への忠節だけはしっかりと持っておるはずです。なので、これからの柴田家の事を、しっかりと引っ張ってくれる事を信じて、家督を譲りました」


「権六。儂も六三郎の事は幼い頃から知っておる。だからこそ胸を張って、六三郎と言う内政においても軍事においても、日の本随一である息子を育てた事を誇りに思え」


「ははっ!」


信忠と勝家のやり取りを、その場に居た面々は黙って見ていた。丹羽長秀に至っては、涙を流していた。


ひととおり、場が落ち着いた時に信長が、


「それでは勘九郎よ。此度の戦で捕縛した上杉家当主を含む、面白い面々を紹介しよう!勝蔵!越後守と高代達を連れてまいれ!」


「ははっ!」


信長は長可に景勝と高代達姉弟を連れてくる様、命令した。信長の目的とは?

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― 新着の感想 ―
実際六三郎がバリバリ仕事することになると跡継ぎ育成とかが難しいし、勝家が比較的元気で控えていてくれるのは財産だよなぁ…。
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