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子供は眠い時は眠りなさい

天正十三年(1585年)五月十二日

甲斐国 躑躅ヶ崎館


「皆!そして、六三郎殿!昨日は泥かぶれの対策を話し合っていたのに、途中で眠気に負けてしまい、申し訳ない!」


「虎次郎様。頭をお上げくだされ!元服どころか、十歳にもなっていないのですから、眠気に負けてしまうのも無理はないかと」


「傅役である五郎殿の言うとおりですぞ虎次郎様。虎次郎様が六三郎殿の様に、元服して更に二十歳を超えているなら、起こす為に一喝もしますが、虎次郎様は」


「叔父上達!お気持ちはありがたい!だが、その様に甘やかされてばかりでは、皆がついて来てくれませぬ!今年で九歳、六三郎殿は今の拙者よりも若い八歳で初陣を迎えただけでなく、勝利を掴んだ!


その時の六三郎殿は、戦が終わるまで、眠るどころか、横にすらならなかった、それだけでなく、自らが前線に出て戦っていたそうです!その様な子供でも、


頑張る時は頑張らないと、家臣達はついて来ぬと拙者は思うのです。だからこそ皆に頭を下げて、詫びております」


「虎次郎様!それは我々の配慮不足です。なので、気を病まないでくだされ!」


「そうですぞ!我々のせいです!」


「申し訳ありませぬ!」


皆さんおはようございます。朝から虎次郎様が、五郎さんと典厩様を始めとする家臣の皆様に、「昨日は話し合いの途中で寝てしまって済まない!」と、頭を下げている大広間に居ます柴田六三郎です


俺としては、五郎さんや典厩様達と同じ様に、あんな遅い時間に起きている、年齢的に小学生な子供は居るわけないから仕方ないか。ぐらいの気持ちなんですが、


虎次郎様は、13年前の俺の初陣の話を例として出しているので、正直言って、恥ずかしいです。あんな例外も例外な極限状態の話を出されても、ねえ。


で、そんな虎次郎様の事を何とかしてくれ!と目で訴えてくる五郎さんと典厩様、そして家臣の皆様が居るので、仕方ないから、少し余分に働きますか


「虎次郎様。少し、よろしいですか?」


「六三郎殿!昨日は申し訳なかった!六三郎殿が八歳で迎えた初陣の時の様に、途中で寝ないで、最期まで話し合いに参加しますので」


「虎次郎様。その、拙者の初陣の話ですが、少しばかり話が間違って伝わっておりますので、聞いてくだされ」


「ど、どの様な話なのですか?」


「はい。初陣で拙者は、確かに前線に出て戦いました。ですが、戦の趨勢が決まり、これから戦後処理を行なおうとした時、


与力として参加してくださいました方々から、「今の眠そうなお主では、頭が回らないだろうから、一度寝て、頭をすっきりさせてから、また来い」や、


「流石に子供が、この様な夜中に起きているのは無理じゃ!今は寝ておけ」と言われました。実際に、その時の拙者は、戦の緊張が解けた事もあり、一気に眠気が襲って来たので、言葉に甘えて、眠りにつきました


改めてですが、虎次郎様。今、甲斐国も武田家も、戦が起きて、緊張状態というわけではありませぬ


そして、虎次郎様は、武田家の皆様からは勿論、織田家の皆様からも、健やかに育って、元服して、嫁をもらい、子を多く成して欲しいと願われているのです!


なので、平和な今は、しっかり眠りましょう。昔から言うではありませぬか。「寝る子は育つ」と。拙者の家臣の赤備えのうち、身の丈が6尺を超えている者達は、


しっかり食べて、しっかり身体を動かして、眠い目をこすりながら理財や軍略を学んで、長い時間眠った結果、6尺もの身の丈になったのです。だから、虎次郎様も、今は眠る時は、眠りましょう。


虎次郎様の為に、家臣の皆様は働いているのです。そして、虎次郎様の甲斐国の民の為に泥かぶれを1日でも早く根絶しようという思いは、家臣の皆様も同じです


ですが、その甲斐国を治める虎次郎様が、「甲斐国を良くする為に、眠らずに頑張った結果、体調を悪くしました」なんて事が、織田内府様や、左中将様に伝わろうものなら、家臣の皆様どころか、拙者まで、


「お主達は元服前の子供に、何故無理をさせておる!」と叱責をくらい、最悪の場合、切腹を命じられるかも、しれませぬ。なので、虎次郎様。


仁科様や典厩様を始めとした家臣の皆様との話し合いで、眠たくなっても、そのまま眠って良いのですから、お気になさらないでくだされ」


「六三郎殿の実体験が、その様な事だったとは。分かりました。出来るかぎり頑張りますが、眠たくなった時は、五郎叔父上や典厩叔父上を始めとした、皆に言います」


「それがよろしいかと。虎次郎様は主君です。拙者の様な、家臣の倅とは立場が違うのですから」


「六三郎殿、忝い。それでは、改めてじゃが、五郎叔父上、典厩叔父上、そして皆!これから泥かぶれの対策の話し合いの続きを行なう!


六三郎殿、前日は確か、泥かぶれの原因となる生物の卵対策をどうするか。でしたな?」


おお。卵の話になった時は寝ていると思ったのに、ギリギリ頭に入っていたのか!これも、当主として、国主としての意地ってやつかな?まだ子供なのに、格好いいじゃないか!


「ええ、そうです。その卵は水の流れが無い、もしくは悪い場所の近くにある植物に産み付けられておりますので、南蛮の者達が取った対策方法は、


領民も巻き込んでの人海戦術での卵の回収と、卵や卵から孵化した生物を殺す為に石灰を撒く、もしくは植物ごと燃やす!の3つです」


さて、どんな反応になるかな?

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― 新着の感想 ―
農民は特に親類縁者を泥かぶれにやられてそうだし、食料とかを保証できれば鬼気迫る勢いで参加しそう。
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