親父の新たな希望と姉弟の新展開
「どうした高代?何か言い忘れた事でもあるのか?」
「いえ。そちらの家臣の方の右手が気になりましたので。もしや、動かないのでは?」
高代さんは親父が気になっていた様だ。言われた親父は
「その通りじゃ。戦場で気を失って、二十日ほど寝ていたら、動かなくなったが、もう戦場に立つ事も無いのじゃから、これぐらいは」
右手の麻痺を受け入れる発言をしていたけど、高代さんは
「なりませぬ!私の母も、家臣の方と同じ、いえ、家臣の方以上に、手が動かなくなりました。ですが、ある事を毎日頑張ってもらって、
病にかかる前と、ほぼ同じ状態になりました。なので、家臣の方も、是非とも試していただきたく!」
麻痺の改善方法がある様な事を言ってるけど、どう言う事だ?俺がそう思っていると、高代さんは
「これが、母が使っていた物です」
そう言って、裁縫箱の中にある物を見せる。その物とは、
「これは、幼い女子が遊ぶお手玉ではないか」
大殿が指摘したお手玉だった。お手玉って、通常は3個を投げてキャッチしてを繰り返す物のはずなのに、目の前のお手玉は5個ある。これは何かしらの意味があるのか?
そんな俺の考えが分かったのか、高代さんは、
「六三郎様。何故、お手玉が五個なのか不思議だと思っている様ですので、一個ずつ確認していただけたら、もしかしたら違いや目的が分かるかと」
俺にお手玉を触る様、促して来たので、
「で、では」
俺は1個ずつ触ってみると、めっちゃ柔らかい、柔らかい、普通、少し硬い、めっちゃ硬いのお手玉セットになっていた
「高代殿。硬さがそれぞれ違う事は分かりましたが」
「此方は、一番柔らかいものから握っていき、少しずつ、指や手が動く様に、鍛えていく為のお手玉です。母も、このお手玉を毎日、少しずつ握る訓練を行なった結果、不便は少なくなりました」
「高代、それは誠か?」
「これを毎日、続けていけば」
大殿と親父は驚いているし、三郎様と典厩様は、「マジで?」みたいな顔になっているけど、高代さんの説明を聞いて俺は、
前世で見た高身長イケメンで先祖代々、医者の家系の筋肉ムキムキマッチョが主人公の医療系マンガをふと思い出した
確かあのマンガの話で、あるスポーツの日本代表選手の腕が切れたところを修復手術したけど、神経も切れていたから、
その為のリハビリで柔らかさと大きさの違うボールを握らせて、最終的に五輪で復活した話があったけど、それの戦国時代版と言う事か
驚いている俺達に高代さんは、
「勿論、一朝一夕で動く様にはなりません!なので、毎日少しずつ、そのお手玉を握ってください」
そう伝える。そして大殿は、
「権六。六三郎に家督を譲っても、まだまだ楽隠居は出来ぬ様じゃな!だが、これで権六の手が少しでも、動く様になるのなら、とても喜ばしい!
権六!還暦を超えてから、己の身体と戦うのじゃ!負けていられぬぞ!」
「はっ!これならば、屋敷を改装しなくても済むので、ありがたく!高代殿!誠に、忝い!」
親父に発破をかけて、親父は高代さんにお礼を言う。すると、高代さんは
「あ、あ、あの。今、織田様が、六三郎様に家督を譲ったと仰っておりましたが、もしかして、こちらの家臣の方は」
「ああ。高代の予想したとおり、六三郎の親父じゃ!」
「ええ!!六三郎様のお父上様でしたか。不躾な物言い、申し訳ありませぬ!」
リハビリをやる人が、俺の親父だと今頃知った様で、慌てていた。まあ、余程の歴史好きじゃないかぎり、
名字、仮名、諱の仮名の部分なんて、推しの人物じゃないかぎり覚えないし、
歴史系バラエティー番組は勿論、歴史の授業でも、仮名を教えるなんて事はしないからね
で、慌てている高代さんに、親父が
「高代殿。先程、二年前まで弟達は朝倉家の人間である事を知らなかったと言っていたが、では、武士の作法や教養などは、全く知らないと言う事で良いのか?」
宗太郎と宗次郎の武士としての色々を聞くと、高代さんは
「はい。一応、元服させて、宗滴公の宗の字を仮名に使い、朝倉家の通字である景の字を諱に使っておりますが、人生の殆どを百姓として生きておりますので、
武士としての作法や教養に関しましては、教えてくださる人が居ない事も有り、手付かずのままです」
そう答える。まあ、周りの地侍の人達も、そんなものは教えられそうにないしな。それを聞いた親父は
「そうか。ならば、儂の手が少しでも動く様に色々と教えてくれた、高代殿への礼として、弟達をを儂の領地である越前国で鍛えてしんぜよう。そして、高代殿も武家の姫として、儂の嫁の市に鍛えてもらおう」
「「「えっ!?」」」
まさかの親父からの越前国へ連れて行って、色々と教える宣言が出ました。これに大殿は
「はっはっは。権六よ、思い切ったのう。まあ、越前国は勿論、周辺の国にも、朝倉家の遺臣は居ないから、弟達を神輿として、朝倉家再興を企む愚か者は居ないから、大丈夫じゃろうな」
大笑いしてます。高代さんは、
「弟達は六三郎様の元で鍛えてもらうつもりなのですが」
そう言って断ろうとするけど、親父は
「高代殿。六三郎は、これから甲斐国の全土を東奔西走しながら、土地改善に挑む。それはつまり、弟達に何かを教える余裕は無いと言う事じゃ
じゃが、六三郎に家督を譲って、今のところ、特にやる事の無い儂や、屋敷に居る者達ならば、弟達に理財や武芸を教えてやれるぞ!
何より、甲斐国は、関東の北条家の動き次第では、最前線の戦場になる可能性が高い。じゃが、越前国がある北陸、そして比較的近い畿内は安全じゃ!
武士としては、まだまだな弟達は勿論、自身の安全の為に、越前国に来てみぬか?無理強いはしないが」
そう言って、高代さんを説得する。すると高代さんは
「分かりました。それでは、柴田様の越前国で、弟達と共に。お世話になります」
「「よろしくお願いします」」
親父に平伏して、宗太郎と宗次郎も平伏する。まあ、とりあえず、3人の安全を考えたら、これで良いか。よっしゃ、それじゃあ、甲斐国での土地改善、頑張りますか!