当主としての初仕事
弥三郎と初の結婚の了承と、俺の家督継承の発表を終えたので、親父と一緒に大殿達の元へ戻りますと、
「大殿!それは誠ですか!?」
「誠も誠じゃ!露天風呂とは、それ程までに心地よいのじゃ!露天風呂に入りながら酒を呑もうものなら、間違いなく、
心地よさから眠って、そのまま死んでしまう可能性もあるのじゃ!それ程の良いものなのじゃ露天風呂は」
「話を聞いていると、領地でも作れるか探してみたいですな!」
「拙者は下戸なので、露天風呂を嗜むだけでも充分ですが、入ってみたいですなあ」
(大殿が前田様、佐々様、明智様に露天風呂の素晴らしさをアピールしてました。あの熱量だと、天然温泉がある国は全て織田家の領地にするかもしれないな
そうなったら未来の歴史資料に、「家督を嫡男の信忠に譲ってから信長が出陣した戦は全て、天然温泉の出る国だった事が分かった
つまり信長は戦国時代を終わらせた覇王であり、天下人であると同時に、温泉大好き親父だった」なんて書かれたら、威厳が大分減るし、温泉のある観光地のゆるキャラにされそうだな
でも、待てよ?俺が監督する甲斐国の住血吸虫対策の土地改善が終わったら、関東に出陣する可能性がとても高いよな?そうなったら、甲斐国は最前線じゃねーか!
マズイマズイ!家督を継いだんだから、俺が出陣しないと柴田家は出陣しないと見なされるし、親父を楽隠居させるつもりで家督を継いだから、親父の出陣なんて、絶対にやらせてはダメだ!
しかも、柴田家の親族の男って、俺と親父以外は京六郎しか居ないじゃねーか!まだ元服どころか10歳にもなってない弟に、出陣なんてさせるわけにはいかん!)
※六三郎は自分の初陣の事を忘れています
(一旦、落ち着こうか。俺が家督を継いだ事で、形式上、越前国のおよそ五十万石、柴田家の軍勢二万人と少し、これを俺の采配で動かす事になる訳だが、正直、
そのうちの半分くらいの一万人を甲斐国に一時的に移動させても、寝泊まりする場所が無いから、無理だな。しかも、俺や赤備えの皆、徳川家からの参加者、上杉家からの五百人が参加決定しているし、
うん、ここ数年における穴山の行動のせいで、国力疲弊中の武田家に、一万人が寝泊まりする為の建物を作ってくれ!なんて言えない!
それを考えると、親父に軍勢を越前国に連れて行ってもらって、俺達は甲斐国へ直行して、ん?甲斐国へ行く前に確か、、、
ああ!信濃国に朝倉姉弟を迎えに行かないといけないんだった!朝倉姉弟の件、今までは親父に伝えてから、大殿へ伝わる流れだったけど、これからは俺が殿や大殿に直接伝えないとダメなんだよな)
(ああ、もう!考えるだけで胃が痛い!)
六三郎が1人でこれから来るであろう未来を予想していると
「権六!弥三郎を見て来たか!どの様な印象だったか、じっくり聞かせよ!」
信長が2人に気づいて、本陣に座る様に促し、勝家が座ると
「権六!お主から見て、弥三郎はどの様な若武者に見えた?」
信長からの質問に勝家は
「はっ!六三郎と比べると、とてもまともな若武者でした!己の嫁取りの為とは言え、武功の為に己も仲間も家臣も危険な目に合わせない思慮深さを感じました」
「そうか。ならば、初か嫁入りする事に了承するのじゃな?」
「はい。弥三郎なら、初に苦労をさせないでしょう」
「うむ。これで、初の嫁ぎ先も決まったのじゃ!誠にめでたい!それでは、これからの戦後処理を含めた事の軍議と行こう!」
信長が真剣な顔に戻る。そして、軍議の進行を始める
「さて!先程、話しておったが、権六、犬、内蔵助の領地に上杉家の者達を五百人ずつ預ける事と、六三郎に五百人を預けて甲斐国へ連れて行く事は決まっておる!
源三郎の元へ行かせる千人は、儂が越後守と話し合い選別すると決めた!この流れで行くと、手持ち無沙汰になるのが十兵衛となるが」
信長の指摘に光秀は
「大殿。それならば、拙者達はしばらく越後国に居て、上杉家の者達と共に、領内の復興に尽力した方が越後国の民達が織田家へ反発しないと思うのですが」
信長にそう提案する。それを聞いた信長は
「ふむ。確かに十兵衛の提案はかなり良いな。よし、決めたぞ!十兵衛、お主の提案を採用する!そうじゃな、
十兵衛の提案は、他の家臣達の倅の二男以降の者達に、領地復興と内政を学ばせる機会として、良いな!
うむ!二郎三郎にも文を出してみよう!この件に参加させたい息子や孫が居るなら、どうじゃ?と」
そう決断した。流石に甲斐国で働く六三郎は呼ばない様で、安心した六三郎は
(良かった!!流石に俺に参加しろとはならなかったぞ!でも、織田家の家臣の嫡男じゃない人達は分かるけど、徳川家でそんな人は、於義伊くんが居るか
確か、今年で12歳だから、元服しても問題は無いけども、まあ、そこは俺が口出しする事じゃないから、あまり考えないでおこう!
よし!それじゃあ、朝倉姉弟の事を伝えよう!親父もそうだけど、立場的に隠し事をしたら、俺以外も巻き添えになるから、しっかり伝えて、最悪の結果にならない様に動こう!)
そう決断した。そして、
「大殿、父上、そして皆様。どうしても伝えておかなければならない事が、起きました」
そう言い出した。信長から
「ほう。また、何やら面白い事になりそうじゃな。話してみよ」
と、促される。六三郎は
(それじゃあ、気合いを入れて3人を守ってやりますか)
覚悟が決まった様だ。




