家督継承の次にやる事
俺が親父から形式上ではあるけど、家督を譲ってもらうのを見ていた上杉さんから親父が呼ばれました
「柴田越前守様」
「何でしょうか?越後守様」
「越前守様の豪放磊落なれど、しっかり六三郎殿の事を見ていた子育ての結果が、此度の敗戦に繋がったのだと、今ならば分かった気がします」
「越後守様。こ奴は」
「越前守様。戦は基本的には結果が全てです。いつになるかは分かりませぬが、拙者が越後国に戻って、嫁を迎え、そこから嫡男が産まれた時には、越前守様の子育てを参考にしたいと思います」
景勝のこの言葉に反応したのが、信長だった
「何じゃ越後守。お主、嫁が居ないのか?」
「はい。と、言いましても、三年前迄は居たのです。甲斐武田家から信玄公の娘である菊姫を正室に迎えていたのですが、三年前に病で亡くなったので」
「そうか。まあ、おいおい探していけば良い」
信長はあまり口出ししない態度を取っていた。しかし、そんな信長を見た六三郎は
(あっ。大殿のあの感じ。絶対、婚姻での縁組をさせたいと考えてる感じだ!源三郎様と勝姫様の時も、俺と花江さんや、うめちゃんの時もあんな感じだったし
まあ、でも!これから俺は甲斐国で土地改善の為に引き篭もり状態になるし、上杉さんは越前国、加賀国、越中国にバラけるみたいだから、
俺がお見合いジジイみたいな事をするのは、距離的に無理だから、余計な仕事をしなくて済む!何なら隠居後の親父の初仕事になるかもしれないし!)
そんな事を考えていた。すると信長から
「そう言えば六三郎!そろそろ弥三郎を権六に会わせよ!此度、弥三郎が出陣した理由は、初を嫁に迎える為に武功を挙げる為であろう?
婿殿!典厩!確か、弥三郎はお主達と共に城の東側で待機しておったな?今は何処に居るのじゃ?」
「確か今は、六三郎殿の家臣の赤備え達と共に居りますな」
「あと、丹羽殿も同じく」
「そうか。ならば六三郎!権六を連れて、赤備えの元へ行ってまいれ!それこそ家督継承した事も伝えねばなるまい!そこで弥三郎とも会わせよ!」
「ははっ!では父上、参りましょう」
「うむ。どれ程の若武者か楽しみじゃ!では、大殿。初が惚れた男の顔を見て来ます」
そう言いながら、六三郎と勝家は赤備え達の詰所に向かった。歩いて間もなく、
「若様!お、大殿!!目覚められたのですか!」
周囲を見回っていた源次郎達が俺と親父に気づく
「若様!大殿はいつ、お目覚めになられたのですか?」
「大殿!お身体は大丈夫ですか?」
「上杉との戦は終わりましたが、まさか今から出陣ですか?」
親父が無事だった事に、銀次郎達は興奮しているけど、親父は
「皆。喜んでくれてありがたい。だが、今は全員に伝えたい事がある。だから、皆の詰所へ案内してくれ」
銀次郎達に詰所へ連れて行く様、伝える。銀次郎達も何かあるのだと分かった様で
「「「ははっ!」」」
何も聞かずに返事だけをした。そして、詰所へ案内された俺と親父は
「皆!久しぶりじゃな!」
詰所に居た赤備えの皆に挨拶をする。親父の姿を見た皆は
「大殿!目覚められたのですか!」
「お身体は大丈夫なのですか?」
「大殿!」
「大殿!」
銀次郎達と同じ反応をする。そして、皆が落ち着くと、親父は
「皆に心配をかけさせて、済まぬ。それとじゃが、初めて見る顔の者が三人居るな。自己紹介してくれぬか?」
真田親子に気づいた様で、自己紹介を促す。3人は前に出て来て、
「お初にお目にかかります!拙者、信濃国出身の真田喜兵衛昌幸と申します!」
「嫡男の源三郎信幸にございます!」
「二男の源二郎信繁にございます!」
自己紹介をしたら、親父は気づいた様で、
「信濃国の真田か、喜兵衛、もしやお主の父君か祖父は、武田家の重臣の一人の弾正幸隆殿ではないか?」
「拙者の父ですが、父の事を知っているのですか?」
「名前と戦における逸話を少しだけな。確か砥石城と言う名の城を見事な調略で落城させたとか」
「父上の武功を知っておられるとは。ありがたき幸せ!ですが大殿。此度の若様の城攻めは、父上の城攻めも霞む程、壮大で剛毅な規模の城攻めでした!
しかも、その武功を我々だけに与えるのではなく、織田家の皆様、そして徳川家と武田家にも行き渡る様に考える才覚もまた、若様の大将たる器の証かと」
「こ奴がか!?」
「若様の様に、二十代前半の若武者は、武功を独り占めしたがる者か殆どです。ですが、若様は拙者が仕え始めた頃どころか、
赤備え創設の二百名が仕えた頃から、変わらず武功は皆で分け合う物とのお考えだったと!それが拙者の倅達にも良い影響を与えております」
「儂には常識外れの若造にしか見えぬのだがなあ。そこまで言ってくれる程、六三郎を慕ってくれているのならは、これからも六三郎の事を頼むぞ?」
「ははっ!」
「それでは、元の位置に戻って良い」
親父に言われた真田親子が元の位置に戻ると、親父は
「さて!今日、儂がここに来たのは目覚めた姿を見せる為だけではない。二つ、やりたい事があるから来たのじゃ!
その内の一つとして、長宗我部弥三郎!前に出て来てもらおう!」
親父が信親を呼び出した。弥三郎は恐る恐る、前に出て来たけど、どんな事を話すのかなあ?