俺だけじゃないという事実
俺の護衛の3人と、高代さんの弟2人が家の外に出て、2人きりになった。家は中も外も質素な作りで、人が隠れる場所はない筈だから、それじゃあ
「さて、高代殿。2人きりで話し合いを希望して、その通りになったが、どの様な話し合いを?」
「はい。前置き無く話しますが柴田様。あなたは逆行転生者。ですよね?」
いやいやいや!何で、そんな事が分かるんだよ!これは誤魔化そう!
「何を言っておる?」
「誤魔化さなくもよろしいのですよ?何故なら私も、柴田様と同じ逆行転生者。ですから」
マジで?いや、まあ、俺と言う本来なら存在しない柴田勝家の嫡男が居て、本能寺の変が起きなくて、秀吉が実子が5人以上の子沢山なんて
史実と真逆の事が起きている以上、俺以外の逆行転生者が居てもおかしくはないか
「本当に、高代さんも俺と同じ逆行転生者なんですか?」
「そうなんですよ〜。産まれた時は、大勢の人の声がするから、いいところのお嬢様に転生して、人生楽勝モードだと思っていたら、まさかの越前国を治めていた
朝倉家ですから、史実どおりに進んでしまったら、10歳になる前に死ぬ事が確定だから、父親の朝倉義景に頑張ってもらう様に、口うるさく言い続けていたんですけどねえ」
高代さんがめっちゃ明るく話す。
「成程、俺と同じですね。俺も親父が柴田勝家だと分かった時から、史実どおりだと本能寺の変が起きた後に、秀吉の天下取りの生贄にされるから、何とか本能寺の変が起きない様に、動いてましたよ
それこそ、史実の出来事を、「夢に出て来た」と伝えるインチキをしてでも、本能寺の変を回避させてましたから」
「やっぱり、それくらいしないとダメでしたかー。まあ、私の父親の朝倉義景は、六三郎さんの父親の柴田勝家と違う点として、家をまとめる事が出来なかったんですから。しかも、さっきも話した様に、
自分がやらないといけない事を、全部人任せにしていたし、一乗谷を華やかな街にする為に、お金を大量投入していたら、家臣の皆さんが離れていきましたから」
「え〜と、高代さん。その話し方だと、朝倉家を追放されたのはもしかして、ワザとですか?」
「いやあ、それがそうでもないんです。全員揃っていた時に話していた沙夜と言う女、史実では「小少将」と呼ばれていた女だとすぐに分かる程の美女だったから、
父が入れ込まない様にしていたのに、結局、史実どおりに愛王丸が産まれて、半分くらい人生諦めていた所に、宗太郎と宗次郎が産まれたんです。
でも、六三郎さんも知っているでしょうけど、この時代は双子や三つ子は「畜生腹」と呼ばれて、良くない扱いをされるでしょ。
弟達には「父が僅かばかりの路銀を渡して、親心から殺さずに親子共々追放するだけにした」なんて、
誤魔化しているんですけど、実際は、父は沙夜に「愛王丸の家督相続の障害になるから殺せ!」と言われて弟達を殺そうとしていた所を、一部の家臣の皆さんが
命懸けで私達と母親達を逃してくれたんです。それが、14年前に織田信長が比叡山の一部を焼き討ちした頃でした」
「何とまあ。高代さんの親父の朝倉義景の話を聞くと、俺の親父の柴田勝家は、俺を産んだお袋が死んだ後に、信長からも、仲良しな前田利家達からも、
女の人を紹介されなかったから、それはある意味ラッキーだぅたお思いますね」
「え?六三郎さんは、柴田勝家が何歳の時に産まれたんですか?」
「親父が45歳の時に産まれました。ちなみに、俺を産んだお袋は、親父とは25歳下だったから、お袋が20歳、実際は19歳の時でしたね」
「ええ!柴田勝家って、ロリ好き」
「違いますからね?親父の名誉の為に言っておきますが、そう言う事ではないですから」
「分かりました。それで六三郎さん、本能寺の変が起きない様に動いた結果、どんな変化が起きたのですか?」
「先ず、徳川家康の正室の築山殿と嫡男の松平信康が今でも生きてます。それに、明智光秀が畿内じゃなく、親父が総大将の北陸方面軍に参加しているから、
本能寺の変の実行犯が居ないですし、何より、秀吉の実子が9人という子沢山ですし、そのうちの1人は正室の寧々さんが出産したから、史実の様な暴君にはならないかと」
「秀吉が9人の子持ち!前世では、種無しだから、秀頼は淀殿が別の男と作った。なんて言われていたのに!
え、じゃあじゃあ、史実だと本能寺の変が起きた年に勝家と再婚したお市の方は、今でも独身なの?」
「それが、10年前に親父と再婚しているんだよねえ」
「ええ!じゃあ、浅井三姉妹は六三郎さんの妹になったのよねえ?どうなの?やっぱり三姉妹全員美少女なの?」
「まあ、3人共美少女なのは間違いないですね。それに、次女の初、史実では京極家に嫁ぐ妹は、まさかの長宗我部信親に嫁ぐ事が半分決まってますし。その長宗我部信親は、俺が引率している軍勢に参加しているし」
「は?え?長宗我部信親って、長宗我部元親の嫡男でしょ?なんで、土佐国が本拠地の長宗我部家の嫡男が北陸地方の戦に参加してるの?」
「まあ、簡単に話しますと、去年の早くに武田を臣従させた情報を長宗我部家がキャッチして、それにビビった長宗我部家が臣従を申し出て、その時、信親を
俺の居る越前国に客将という名目の人質として行かせたところ、初に惚れられて、信親も満更じゃないから。という流れで、
それをお袋が「初を嫁にしたいなら武功をひとつくらい挙げて来い」と言われて、北陸地方の戦に参加している訳です」
「なんて素敵な展開!愛する姫君の為に出陣するなんて!それに、私の知っている歴史の知識が無意味な程、目まぐるしく動く面白さ!その中心が六三郎さんだとも分かりました!
六三郎さん!私決めました!六三郎さんの嫁になります!正室が居るなら、側室でも構いません!」
「いやいや!高代さん?何を言って」
「それに、私が六三郎さんの嫁になれば、同じ秘密を共有出来ますし、弟達も安全な場所に居る事が出来るのですから!いいですよね?秀吉の側室の数に比べたら大した事ないでしょ?」
圧が強い!!でも、俺が転生者である事を知っている人間か近くに居るのは、監視の意味もあるから良いか
「分かりました。高代さん。あなたを側室にする方向で考えます」
「やったあ!!」
「ですが、柴田家では老若男女問わず、何かしら働いていますので、高代さんにも何かしらの働きを求めます。そしてすぐに側室には出来ません。それでもよろしいですか?」
「勿論!畑仕事で鍛えた体力と弟達にご飯を作り続けて磨き上げた料理の腕を見せますよ!だから、来年か再来年には側室にしてね!」
「その方向で考えます」
こうして、まさかの俺と同じ逆行転生者に会うというミラクルが起きましたが、話もまとまったので、越後国へ行きますか!