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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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大殿は再会に喜び、これまでを伝える

利家達に案内された信長一行は、日が落ちる前に勝家達の元に到着して、本陣の上座に座る


「皆!久しぶりじゃな!北陸地方の征圧が進んでいる事、誠に嬉しいぞ!」


信長がそう発言すると、勝家が代表して


「殿、いえ大殿!此度の戦に参戦していただく事、感無量にございます!」


感謝を述べた後、信長は


「うむ。改めてじゃが、これから織田家の権限を少しずつ勘九郎に移譲していく!儂は少しばかり身軽になったからこそ、この様に戦場に立てておるのも、権六、お主の倅の六三郎が働いたからじゃ!」


「倅がどの様な働きをしたか、教えていただきたく!」


「うむ。先ずは三男で神戸家に養子に行った三七へ見事な補佐をした事じゃ!伊勢国の統治者を決める争いで、北伊勢と地理的不利な三七に六三郎を付けたのじゃが、


六三郎め、北伊勢の全ての家を三七に協力させる交渉を行なっただけでなく、伊賀国の一部まで巻き込んで、協力させよった!その結果、三七は伊勢国の統治者になったが、それだけではないぞ!


伊賀国も最初は一部だけだったのにも関わらず、今や、伊賀国の全土が三七に従っておる!これも偏に六三郎が三七を立てて、交渉した結果じゃ!」


「倅がその様な働きを」


「権六、それだけではないぞ!武田、いや、穴山討伐の際も六三郎は、四男の源三郎と、初陣の新三郎を立てつつ、武田家において重要人物である、四郎勝頼の嫁と娘を保護し、虎次郎の傅役に指名された弟と、


その居城も、無傷で降伏させた!更に申せは、甲斐国に四郎勝頼の兄が居るのじゃが、その者は盲目だった為に出家しておった。それも武田家の争いに巻き込まれる事に、強い嫌悪感を示していたが、


その嫌悪感も無くしておった!儂かその者の前に行った時も、「六三郎の主君」と言う事で信頼を寄せてくれた!これ程嬉しい事は、中々ない!


そして、そこから源三郎と四郎勝頼の娘が夫婦になったのじゃが、武田を臣従させた事で、更なる良い影響が出て来たぞ!四国統一まであと少しだった、長宗我部家から臣従の申し出があった!


条件付きではあるが、それでもじゃ!やらずとも良い戦は無いにこした事はないからのう!」


信長かそこまで話すと、光秀が


「大殿。その事で実は、安土城の殿から文が届いております。その内容で柴田殿は少しばかり」


と、信忠から届いた文の事を伝える。すると信長は、


「何じゃ?もしや勘九郎の奴、初と弥三郎の事を権六に伝えたのか?儂が伝えてやりたかったのに、先走りおって!」


と、軽く笑っていたが、勝家は


「大殿。失礼ながら、その弥三郎と言う若武者の為人はどの様なのか、教えていただきたく」


信長に信親の事を聞く。信長は


「そうじゃのう、弥三郎を一言で申すならば、「真っ直ぐな男」かのう!親父と共に、儂や勘九郎に臣従の申し出をした時、視線を逸らさずに土佐国と阿波国を領地として認めて欲しい!と言って来たからな」


「それは、何とも」


「それだけではないぞ、六三郎が酒の肴を持って来た時も、土佐国と阿波国を発展させたいからと、六三郎に内政のやり方を乞うていた。親父の長宗我部土佐守もそうじゃが、


親子揃って、領地を発展させる事が最優先で、見栄や矜持などは二の次、三の次じゃ。その様に真っ直ぐな男だからこそ、初の婿に、儂は良いと思う!」


「大殿がそこまで言う程の若武者ですか。ならば、あとは六三郎が見た弥三郎の為人を聞いてから、色々と考えます。茶々と初は娘達の中でも、


市に似て行動力は凄まじいですから、こう言う事が起きる可能性は多少なりとも、考えてはいましたが。やはり現実に起きるとなると」


勝家か少し気落ちしていたので信長は、


「まあまあ権六よ!娘が嫁ぐ事は良い事のはずじゃ!なに、市に教えてもらったが、初は赤備え達の訓練用の坂を走ったり、屋内訓練場で長刀を毎日と言う程、


振っておるそうじゃ!その様な女子ならば、弥三郎が腑抜けた姿を見せたら、尻を叩くくらいは出来るじゃろう!」


「大殿」


「権六。初と弥三郎の話は、当人が来てからにしよう」


「ははっ!」


「それでは改めてじゃが、先ずは内蔵助!」


「はっ!」


「遅くなって済まなかった。改めて、嫡男の誕生、祝着じゃ!」


「ありがたきお言葉にございます」


「うむ。それにな、内蔵助の正室の弓の妹の菫が、三七の正室になったぞ!これで、内蔵助と三七は一応、親族と言う事になるかのう!三七に何か起きたら、助けてやってくれ!」


「ははっ!」


「次に十兵衛!」


「はっ!」


「此度、お主の娘が六三郎の側室になった。だが、娘の花江の顔は幸せそうであった。正室の座を掴めなかったが、此度の件で、倅も嫁も母親も責めないでくれぬか?」


「大殿。責めるなど、とんでもありませぬ!花江が嫁入りして、幸せに暮らせるのであれば、正室か側室かは関係ありませぬ」


「うむ!そう言ってくれて、儂も気が楽じゃ!」


「ははっ!」


「そして犬!」


「はっ!」


「お主の娘の摩阿じゃが、市がとても気合いを入れておるから、どの様に変わるかは楽しみに待っていてくれ!」


「お市様ならば、摩阿を何処に嫁入りさせても恥ずかしくない姫に鍛えてくださると信じます」


「うむ。楽しみにしていてくれ!最後に権六!」


「はっ!」


「倅の六三郎じゃが、出陣前と出陣中にとんでもない事をやりおった。特に出陣中の事は、儂は大笑いしたぞ!」


「ど、どの様な事を倅はしたのですが?」


「先ず、出陣前の事じゃか、その前に六三郎が北近江の開発をしていた事は知っておるな?」


「は、はい。確か、大殿が気に入っている露天風呂なる物を含めた物を作ったと」


「そうじゃ。その中で起きた、いや、引き寄せた。と言った方が正しいか。その開発中に六三郎の奴は、浅井家の遺児を見つけたぞ」


信長の言葉に、その場の面々は一瞬固まる。いち早く正気に戻った勝家か


「お、大殿!倅は、六三郎は、直ぐに大殿に、その遺児をお渡ししたのですよね?」


慌てて質問するが、信長はありのままを話す


「いや、六三郎、正確には市が隠す様、計画しておった。儂の機嫌が良い頃合に全てを話すつもりだったのじゃろう。六三郎と道乃の祝言の翌日に伝えて来たのじゃ」


信長の言葉を聞いた勝家は、平伏しながら


「市と六三郎が申し訳ありませぬ!此度の事は腹を切ってお詫びいたします」


と、言葉を言って、本当に切腹しようとしていたので、


「待て待て待て権六!」


「親父殿!お待ちください!」


「親父殿!大殿は知って何かしたとは言っておりませぬ!」


「柴田殿!切腹の命令も出てないのですから!」


全員が慌てて止める。何とか勝家に衣服を着させて、落ち着いた事を確認すると、信長は


「浅井家の遺児は男児で、名を虎夜叉丸と言っておった。虎夜叉丸も六三郎のこれまでの逸話を聞いて、憧れておるそうじゃ。六三郎は虎夜叉丸の両親に頼まれて、家臣として召し抱えて、保護しておった


奇しくも、道乃や新三郎達の時と同じ状況じゃな。まあ、小谷城の戦で浅井家を滅ぼした事は、儂も少なからず後悔しておる。義弟は、備前守は、戦も内政も素晴らしい男だったからな


そして、市は浅井家を守れなかった事で、心に傷を負った。儂はその事も含めて、虎夜叉丸を処断しない事を決めた。僅かながらの罪滅ぼしじゃ


だから権六、この事で市も六三郎も、それこそ利兵衛達も責めるでないぞ!勿論、お主も切腹などするな!良いな?」


「ははっ!」


「さて、次の事を話したいが、もう夜中になるから、続きは明日にするか。儂は寝るが、後の事は皆に任せたぞ!」


「「「「ははっ!」」」」


こうして、信長の北陸方面軍へ合流した1日目は過ぎていった。

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