表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
442/609

兄は全てを受け入れて

琴音さんが暴れる事も無くなった様なので、


「新之助殿!入りますぞ!」と声をかけて、家の中に入る。全員は無理だから俺と一部の者だけが入って、


新左衛門の元へ行くと、運ばれてから15分くらい経過したからなのか、目覚めた様だけど、


「痛たたた、皆、儂はどうなった?若様は?妹の琴音が儂を打ち据えた事までは覚えているが、もしや!琴音は若様に無礼な行ないをしておらぬか?


琴音がその様な事をしていたら、儂は、腹を切るだけでは」


軽い錯乱状態になっていた。なので、


「新左衛門!儂は此処に居るぞ!」


と、大声でアピールする。俺に気づいた新左衛門は、


「若様!情けない姿を見せて、申し訳ありませぬ!妹は、琴音は、若様に無礼を働いておりませぬか?」


慌てて、俺の所に来て、早口で色々と聞いてくる。落ち着かせる為、


「新左衛門。儂は大丈夫じゃ。他の者達も怪我はない。だから今は、横になって身体を休めよ」


「申し訳ありませぬ。お言葉に甘えます」


そう言い聞かせて、新左衛門を寝ていた場所に戻す。そこで改めて、


「新左衛門。お主の実家が、とても歴史ある家にも関わらず、儂に仕えてくれた事、誠に嬉しいが、そのせいで琴音殿があの様に暴れた事は、儂の責じゃ、済まぬ」


「そ、そんな事はありませぬ!若様が責を負う事など、何もありませぬ!」


「新左衛門、興奮したら傷にさわる。先程、源太郎が琴音殿に伝えていたが、十二年前の戦は、本来ならやらずともよい戦だぅたのに、秋山が武功欲しさに、


父上の領地に攻め込んで、その結果、赤備えの皆を捨てて逃走した事がきっかけであったと


それを聞いた琴音殿は、一応、理解してくれた。納得しているかどうかは分からぬがな」


「改めて、琴音が申し訳ありませぬ」


「良い。ただ、新左衛門よ。此度、お主は気を失う程、頭を打ち据えられた。いつもの新左衛門ならば、容易く避ける事が出来たはずなのに、何故、避けなかった?」


俺が質問すると、新左衛門は真剣な顔で答える


「それは、、琴音の怒りが、琴音だけでなく、父上と母上と祖父母、更には先祖からの怒りだと思ったのです。


これまで、原家の男は必ず、武田家に仕えていたのに、その慣例を破ってしまった事への怒りだと思ったので、避けなかったのです」


「新左衛門」


「勿論、その様な怒りを受けても、拙者は若様に仕え続けます。それだけは変わりませぬ!」


「その言葉、とても嬉しく思うぞ」


「勿体なきお言葉です。ところで、琴音は何処に?新之助、分かるか?」


「兄上にあの様な事をしたので、家に入り辛いのでしょう。外で立ったままです」


「そうか。新之助、済まぬが琴音を連れて来てくれ」


「えっ?は、はい」


新之助さんは、新左衛門に言われると、琴音さんを新左衛門の前に連れて来た。バツの悪そうな顔の琴音さんを見た新左衛門は


「琴音。近くに来なさい」


琴音さんを近くに呼ぶと、頭を撫でながら、


「琴音。儂が居なくなっても、剣術の稽古を欠かさなかったのじゃな。先程の一撃はとても効いたぞ?」


「申し訳ありませぬ兄上」


「怒ってなどおらぬ。儂が長兄として、嫡男として、原家を顧みなかった結果じゃ。だからこそ琴音、


儂は、琴音の怒り受け入れる。だから、二度とこの様な事はやらないでくれ。良いな?」


新左衛門がそこまで言うと、


「うわああああ!申し訳ありませぬ兄上!!」


と、大泣きした。まあ、これで解決したと判断していいかな?それじゃあ、


「新左衛門、新之助殿、琴音殿。それでは、ご両親に手を合わせたいのじゃが、よろしいかな?」


「「「はい」」」


3人の両親の位牌に手を合わせて、しばらく経ってから、


「さて、新左衛門よ。此度、お主は気を失う程の大怪我をして、更に出血までしておる。その様な体調では、雪深い越後国へ連れて行けぬ」


「そ、そんな若様!これくらいの怪我、大した事ありませぬ!なので、拙者も上杉との戦へ!」


「ならぬ!」


「そんな、若様」


「よいか新左衛門。身体の外側の怪我ならば、殆どの人間は寝ていたら治ると儂は思っておる。だがな、内側に関しては、簡単に治るとは思えぬ。だからこそ、


此度は大事を取って、身体を休めてくれ!それにな新左衛門、戦は上杉との戦だけではない。状況次第では、毛利は勿論、関東の北条、


更には九州へも出陣する。だからこそ、来たるべき時の為に、此度は身体を休めてくれ」


「分かりました」


「済まない。だが、万全の体調で戦場で暴れて欲しいからこそじゃ」


「ははっ!」


「それでは新之助殿、琴音殿。新左衛門の事を宜しく頼みますぞ」


「「はい」」


これで、新左衛門の事は大丈夫だな。それじゃあ、源太郎と源次郎の両親の墓参りに行きますか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
頭はどんだけ鍛えてても危ないからねぇ…。 避けれるなら無理せず万全の時に戦って欲しいのは分かる。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ