行きたくないから強く言う
天正十二年(1584年)十一月五日
飛騨国 某所
「若様。美濃国を抜けて飛騨国へ入りましたが、美濃国や近江国と比べて静かな場所ですな」
「源太郎。まだ飛騨国の入口みたいな場所じゃ。静かなのも仕方あるまい。もしかしたら城下町はとても賑やかな状況かもしれぬぞ?
まあ、此度は出来るかぎり早く通り抜けるから、行かないが」
皆さんおはようございます。越前国を先月の初頭に出立して、美濃国を抜けて、飛騨国へ入りました柴田六三郎です
四千と少し、大体四千三百くらいの軍勢を一応、総大将として引率しているのですが、俺の家臣だけならさっさと進めるのですが、
俺達と同じペースで長宗我部家と丹羽家の皆さんを動かしたら無理が祟るので、年末に甲斐国に入れたら良い方針に変更しました。
なので、今月は信濃国へさっさと入っておきたいところなのですが
「六三郎殿!飛騨国は織田家の領国だと聞いておりますが、統治しているお人は、内政に手をつけてないのですか?」
「弥三郎殿。拙者の父が言っておりましたが、飛騨国は今年になってから領国としたそうで、大殿も誰に飛騨国を統治させるか決まってないそうです」
「五郎左衛門殿、誠ですか!?内府様の一門や家臣の皆様の誰かしらを配置していると思っておりましたが、飛騨国はそれ程重要な国ではないと見ておるのでしょうか」
「その可能性もありますが」
と、弥三郎と長重くんが何故か意気投合して、色々な話で盛り上がっているのです。ここまで仲良くなれるなら、長重くんを江の婿殿に推薦しても良いかもな
まあ、今はそれよりも
「弥三郎殿、五郎左衛門殿!そろそろ動きますぞ!」
「「申し訳ない!」」
ここでもタイミングが合えば、もう合わせに行ってるとしか思えないけど、面倒だから突っ込まないぞ。
で、こんな感じで進みながら、やっと飛騨国の中央から北寄りくらいの場所に到着したのですが
天正十二年(1584年)十一月二十日
飛騨国 某所
「若様。何やら立派な山城が見えておりますが、あの城は上杉の家臣のものでしょうか?だとしたら攻撃した方が良いと思いますが」
皆さんおはようございます。朝から銀次郎が山城を見つけて、「攻撃しよう!」と言っておりますが、無駄な戦はスルーしたい柴田六三郎です
ただ、「飛騨国の山城」と言うと、埋蔵金伝説のある内ヶ島氏の帰雲城が頭の中に出てくるんだよなあ
確か伝説だと、秀吉に本領安堵された事の宴会をしていた日に大地震が起きて、その地震による山崩れで
城自体が埋められた。だったよな。未来で言うと岐阜県の白川郷付近に帰雲城があったらしいけど、未来ですら、帰雲城の場所は確定してないらしいから、
あの山城が帰雲城だとしたら、歴史的大発見になるんだけどな。まあ、戦になったら戦うけど、ならない事を祈ろう
俺はそんな事を考えながら銀次郎に、
「まだ分からぬ。だから上杉との戦に備えて、余計な戦は極力避けるぞ!」
と言って、進軍を続けておりましたら、
「若様!前方から集団が」
昌幸さんが教えてくれました。ここで戦は地の利が無さすぎだから勘弁して欲しいんだがなあ。仕方ない
「皆!戦になるかもしれぬ!準備しておけ!」
「「「「ははっ!」」」」
全員に命令すると、一気に緊張感が出てくる。運良く前方の集団が来る前に準備を終えて待ち構えていると、
「御免!皆様は織田家の方々で間違いないでしょうか?」
質問してくる声が聞こえて来た。集団が近づいてくると、源太郎が
「貴殿達は、何処ぞの家の者か!?」
対応してくれたら、集団の代表らしき人が
「拙者は、皆様から見える山城、帰雲城の周辺を領地としております内ヶ島兵三郎氏理の嫡男で、此度、皆様へお声かけする者達の代表を務めております、内ヶ島兵太郎氏行と申します。
進軍の最中でしたでしょうか?足止めして申し訳ありませぬ。どうしても、お話を聞いていただきたく、二十名程で伺った次第でございます!」
挨拶と自己紹介をして来ましたが、予想通り、内ヶ島家の関係者でした。しかも、嫡男含めた集団とか、絶対重要案件じゃないか!
これはスルーしよう!進軍のスケジュール的に、今月中には信濃国に入っておかないとダメなんだから!
と、思っていたら
「六三郎殿!これは、何やら領地争いの予感がします!状況次第では戦確定ですから、納める為に話を聞くべきかと!」
「六三郎様!飛騨国は織田家の領国です!話を聞くだけでも、大殿や殿が政治的判断を下すきっかけになると思いますので、内ヶ島殿の話を聞きましょう!」
武功を挙げたい2人がキラキラした目で「話を聞こう!」とアピールして来ます。いやいやいや、進軍スケジュール的な問題もあるけど、
史実の地震で城と家族と家臣が全滅した帰雲城に入るなんて冗談じゃねーぞ!そんな危険な城に入るとか拒否する!
ん?城に入るのを拒否?そうだよ!別に城に入らなくても話を聞く事は出来るんだから、理由もはっきりと話して、
本陣を作ってから呼び出して、話し合いを拒否するなら進軍して、話し合いに応じるなら、本陣に来てもらおうじゃないか!そうと決まれば!
「内ヶ島兵太郎殿。拙者が一応、この軍勢の総大将を務めさせてもらっている柴田六三郎じゃ。話を聞く事は構わぬが、1つ条件がありますぞ?」
「ど、どの様な条件でしょうか?」
「貴殿達の居城の帰雲城と、城がある山が、崩れそうじゃ。だから、話を聞いて欲しいのであれば、これから作る本陣に主君である父君を連れて来なされ!」
「柴田殿。その様な事は起きませぬ。帰雲城は、曽祖父の時代から今まで、一度も崩れた事はありませぬ。なので、気にせずに城に来ていただきたく」
「今まで起きてない事でも、今から起きると考えられませぬか?」
「そ、それは」
「兵太郎殿。我々は十日程、貴殿達の話を聞く為に本陣を作る。なので、その事を父君に伝えて、しっかりと方針をまとめてくだされ」
「分かり、申した」
「では、我々はここから三里ほど東の場所に本陣に居ますので、城に戻りなされ」
俺の言葉を聞いて、兵太郎さん達は帰って行った。とりあえず不意の山崩れ巻き込まれる事をは無くなったから、良しとするか。