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女子が大量に集まると騒がしい

天正十二年(1584年)八月五日

越前国 柴田家屋敷


「ほほほ!道乃、六三郎はまだまだ近江国で殿と一緒なのですから、そんなに緊張しなくても良いのですよ?」


「は、はい」


「ほほほ。まあ、緊張するなと言う方が無理ですね。しかし市。六三郎は権六と違い、側室を三人も迎えているなんて、森家のうめと、明智家の花江が側室になる事は知っていましたが、


まさか、与力だった伊賀国の城戸家の雷花という娘が側室に決まっているとは。六三郎もその事を伝えてくれないとは」


「あの、義姉上。六三郎は、兄上からのお役目に注力していたので、伝える事を忘れていただけですから!間違っても、隠していたわけではないのです!」


「ほっほっほ!市、その様な事は勿論、分かっておりますよ?道乃の緊張を解そうと、少しばかり、ね」


「もう、義姉上」


六三郎が信長と共に、長浜城を出立している頃、先に出立していた帰蝶、うめ、花江が柴田家屋敷に到着していた。うめと花江の2人は、到着した当初、


市と娘達の美貌に驚いていたが、そこに帰蝶も到着して、美貌以上に、会話の内容にドン引きしていた。


そんな2人に帰蝶が、


「ほっほっほ。うめと花江。その様に固くならなくとも良いのですよ?まあ、最初は市や茶々達の柴田家の女子達、更には、


柴田家の女中の美しさや、細さに驚くかもしれませぬが、じきに慣れるでしょう。なにせ、とても頑なだった市が、これ程馴染んでいるのですから」


昔の市の事を話すと、


「「それは誠ですか?」」


驚いて、思わず声がシンクロする


「ええ。権六との再婚話の時も、六三郎という面白、ではなく常識外れな息子の話を聞いて、最初は長女の茶々を、六三郎の正室にしようとしていましたし」


「義姉上。それは昔の話です。それに、茶々も初も江も、六三郎にその様な感情を抱く事が一度も無かったからこそ、道乃が六三郎の正室になってくれた方が、


私達も気が楽だと言うものです。まあ、側室があっという間に三人になった事は驚きましたが」


「ほっほっほ。まあ、そう言う事にしておきましょう。話は変わりますが、うめ。あなたと共に越前国に来た仙六郎は、随分と体力が有り余っている様ですね?」


「恐らく、弟は気分が高揚しているのだと。兄上が惚れ込む程の軍勢である、柴田の赤備えを作り出した秘密を見て、自らも身体を鍛えたいと思ったのでしょう」


「ほっほっほ。男子は、戦が無い時は、だらけてしまいがちですが、仙六郎は、勝蔵が言っていた「最悪の事態」が起きた場合も、少なからず考えているのでしょう」


「それならばありがたいのですが」


うめがそう言いながら、視線を動かすと、そこには


「利兵衛殿!理財や内政よりも、身体を動かしたいです!」


「仙六郎殿。拙者は若様から、「身体と頭の両方を鍛える事を拒否する者が居た場合、その者が拒否する事を徹底的に教えよ!」と言われております


それに、仙六郎殿の隣で静かに帳簿確認をしている光三郎は仙六郎殿より、歳下で、拙者から理財や内政を教えられた時は、まだ五歳でしたぞ?しかも、


赤備え達の訓練用の坂を走って、四種の動きをしてから、理財や内政を学んでおりました。若様がそうさせた理由は「忍耐力を付ける為」です


若様曰く、忍耐力の無い者が軍勢に居た場合、その者の行動次第では、勝ち戦が負け戦に変わってしまうと言っております


これは、拙者も経験しているからこそ納得出来るお言葉です。いきなり全てを覚えよとは若様も言いませぬ。ですが、一つの事に集中する事も出来ないのであれば、理財や内政だけの日々が続きますぞ?」


「ううっ。分かり申した」


「では、続きを頑張りましょう」


利兵衛に鍛えられている仙六郎が居た。帰蝶も市も、これ以上見るのは可哀想だと思ったのか、部屋の襖を侍女に閉めさせた


襖を閉め終えると、


「そう言えば、殿が提案して権六へ渡す文に書いていましたが、花江。あなたの弟である十兵衛と内蔵助の前の嫁との間の娘である輝子は、良き夫婦になると


言っておりましたが、十兵衛には良き相手や気になる相手は居ないのですか?」


「今のところは、居ません。ご存知のとおり、弟も最近、初陣を終えたばかりなので、その様な事を考える余裕は無いかと」


「あらあら。それでは六三郎の様に、彼方此方へ行かされている間に、見合い話が大量に来て、親を困らせる事になりますよ?ねえ、市」


「義姉上のいう通りです。花江、十兵衛の正室は、早めに決めていた方がよろしいですよ?」


「は、はあ」


「ほっほっほ。今すぐでなくとも良いですが、頭の中には入れておきなさい。それに、いざとなれば、


茶々達四人の誰かを、嫁に迎えても良いと思いますよ?市、茶々達はそろそろ嫁入りを考える時期だと思いますが、以前の様に「この様な殿方が良い」みたいな希望があるのですか?」


「それか、以前と変わらず、いえ、それ以上に、「身体を動かせる広い場所」と「美味しい物を食べさせてくれる人」は変わらないのです。六三郎やつる殿達が作る、美味しい物に慣れすぎて」


「それは大変な事になりましたねえ。「身体を動かせる広い場所」はどうにかなるでしょうが、「美味しい物を食べさせてくれる人」となると、六三郎の様な物好きはそうそう居ないですからねえ」


「これでは、嫁ぎ先が京の公家に限られてしまうので、娘達には少しだけ、考えを改めて欲しいのですが」


「二十歳を超えても、変わらない場合は、公家に嫁入りさせる事にしても良いじゃないですか。無理に家臣の倅に嫁いでも、六三郎が比較の対象になるのですから、かなり厳しいと思いますよ?」


「分かっているのですが」


「二十歳を超えても嫁入りした花江の様な例もあるのですから、あまり気にしても仕方ありません。こんな時は、美味しい物でも食べましょう」


「そう、ですね。分かりました。それでは夕食にしましょう」


市の一声で、話は終わりになった。ちなみにだが、市の悩みは、後々、六三郎の仕事を増やす事になる。

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― 新着の感想 ―
市の悩みが六三郎の仕事 うん、どう考えても妹たちの婿探しだよな そっち方面の面倒ぐらいきっちり見たってくれや権六のおいちゃん
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