お祝いムードの中の準備
天正十二年(1584年)七月九日
近江国 安土城
「六三郎!何やら申し出があるそうじゃな?申してみよ!」
皆さんおはようございます。朝から大広間で殿に平伏しております支配六三郎です。殿も言っておりましたが、お願い事がありまして、この状況です
「はい。源三郎様と勝姫様の祝言にお出しする甘味を豪華絢爛な物にしたいので、今日の夜から作る許可をいただきたく」
「ほお。当日の朝からでは間に合わない物を作ると申すか」
「はい。数日前に殿や徳川様にお出しした物を始めとした甘味は、冬なら1日ないし2日なら保存も出来るでしょうが、今は夏ですので、その日のうちに食べていただきたく」
「そこまで考えたうえで、夜から作りたいと。良かろう!夜から作る事を許可する!皆が驚く甘味を期待しておるぞ」
「ははっ!それから、安土城内で1番大きい皿を使っても宜しいでしょうか?」
「ほう。大きい甘味か。また面白そうな事をやるのじゃな。良かろう!大きい皿を使え」
こうして、殿の了承をもらって、ウエディングケーキ製作に時間をかける事が出来ます。
そうこうしているうちに、陽も落ちて夜になりました。推定で夜8時くらいです。最初にやる事として卵の消毒です。お湯に入れてしっかり洗って。しかし、殿が鶏の卵に可能性を見出したのか、今回100個も準備しております
これを全部使うかは分からないですが、半分くらいは使うでしょう。それと同時進行で、餡子様の小豆と枝豆、きな粉クリームの大豆も水に浸しておきましょう
先ずはお皿を確認したのですが、おおよそ60センチと予想以上の大きさです。まあ、パンケーキを積み重ねる土台としては充分です。
それでは、牛乳を温める事からスタートです。
で、10分くらいで沸騰しましたら、しばらく冷ましまして、適温になりましたら、小麦粉と卵と牛乳と砂糖を混ぜまして、もったりして来たので、焼きの開始です
直径40センチ縦3センチくらいのパンケーキをしっかり両面焼いて、回収して、また焼いてを繰り返して、
5枚焼いたので、一旦重ねましたら、次は少し小さい直径30センチ縦3センチくらいのパンケーキを5枚焼いて、
次は直径20センチ縦3センチくらいのパンケーキを5枚焼いて、最期に直径10センチ縦3センチくらいのパンケーキを5枚焼いて、最期に直径5センチのパンケーキを5枚焼いたら、土台のパンケーキは準備完了です
焼き終えましたので、一時休憩していたら、いつの間にか日付けを超えていた様で、犬の遠吠えも聞こえています
それでは今から餡子とクリーム作りです。カスタードクリーム用に、牛乳を再び温めて、その間に
鍋を4個準備しましたら、2個使って粒餡と漉餡用で分けて茹でて、固さ確認したら程よい固さなので、
漉餡は篩の網で裏漉しして、砂糖と少しの塩を入れたら出来上がりです。粒餡も同じ様に砂糖と少しの塩を入れて完成しましたので、
次は大豆と枝豆をすり潰してクリームにするのですが、その前に温まった牛乳を竈門から外して
冷めるのを待ちながら、大豆をすり潰して、きな粉になりましたら牛乳も冷めたので、少し入れて、もったりしたら砂糖を入れて、味を確認したら大丈夫なので完成しました
次の枝豆も同じくすり潰したら、ずんだ餡にして味付けして完成しました。1番簡単な木苺のジャムは早めに作れるので、ささっと作りました。外を見たら朝日が昇り始めています
これは、カスタードクリーム作りを早く終えないと、餡やクリームを塗る時間がギリギリになってしまうので、急ぎましょう
卵の黄身と白身を分けて、黄身と砂糖を混ぜて、牛乳を注いで、小麦粉を篩にかけて、そこから鍋にかけたら、混ぜ続けて、どうにか完成しました
外は鶏が鳴いているし、近くの台所では料理人の皆さんもバタバタしております。あとは、パンケーキに順序よく餡やクリームを塗っていくだけですが、
今の俺の腕はプルプルしていて、動かないので、赤備えの皆の力を借りよう
「源太郎、新左衛門、金之助!来てくれ!」
「「「若様!お呼びですか!」」」
「ああ!儂が今からやる手順を皆に手伝って欲しい。3人を呼んだのは、手先が器用だからじゃ」
「そう言う事ですか。かしこまりました」
「どの様な感じですか?」
「お任せくだされ」
で、手本として直径40センチのパンケーキ5枚は皿に1枚置いて、カスタードクリームを塗って、その次のパンケーキにもカスタードクリームを塗ってを繰り返して、
30センチのパンケーキは5枚置いたら、きな粉クリームを塗って、20センチのパンケーキにはうぐいす餅を、10センチのパンケーキには粒餡を、5センチのパンケーキには木苺のジャムを、と教えたら
「若様。その順序で作るのですな」
「若様、休んでくだされ」
「それでは、始めます」
と、3人はあっという間に覚えて、教えた順序と大きさ順にパンケーキを重ね終えた。
これで終わりました。時間にして、朝10時頃です。眠いけど、あと少しの我慢!
あとは持っていくタイミングですが、早いうちに持っていきたいところです。俺の願いが通じたのか、
「六三郎殿!」
蘭丸君に呼ばれました。これは期待して良いよな?
「森殿。何か起きましたか?」
「そろそろ甘味を持ってまいれとの事です」
よっしゃキター!
「森殿!持っていきますので、甘味をのせた大皿をのせる事が可能な大きめの膳を準備願えますか?」
「直ぐに準備しましょう!」
おお、蘭丸君がいつも以上に格好いい。で、あっと言う間に
「六三郎殿!準備出来ましたぞ!大広間に準備しております!」
「忝い!それでは源太郎、新左衛門、金之助!慎重に運ぶぞ!」
「「「ははっ!」」」
さあて、戦国時代版ウエディングケーキを見た反応はどうなるかな?




