表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
397/614

警戒心マックスの話し合い

紹喜さんに案内されて、入明寺の中に入る。大広間まで行くと、そこには紹円さんと1人の僧が居る。あの人が竜芳さんで間違いないだろうな。


俺がそう思っていると、


「竜芳!紹円から聞いていると思うが、お主に客人じゃ!」


紹喜さんが話を始めてくれた


「紹喜様。聞いておりますし、足音や甲冑の音で分かります。それにしても紹喜様が武田家以外の武士を寺の中に入れるとは。余程、信頼のおける武士達なのですな」


「そうじゃ。儂が話すより、本人達と話した方が、竜芳も為人が分かるじゃろう。紹円、竜芳の介添は儂がやるから、戻って良いぞ」


「はい。それでは失礼します」


紹円さんが戻って行った事を確認すると、


「さて。織田家家臣である皆様が、盲目の僧にどの様な用があって来たのですか?実家の武田家に関する事であれば、出家しておりますので何も出来ませぬぞ?」


竜芳さんが挨拶と同時に牽制を入れてくる。まあ、正直に話すだけだから関係ないけども


「竜芳殿。先ずは自己紹介をさせていただきます。拙者、織田家家臣柴田越前守の嫡男、柴田六三郎長勝と申します」


「ほう。織田家随一の猛将で「鬼柴田」と呼ばれております柴田殿の嫡男と言えば、戦場では鬼神の如き軍略の才で、多くの敵を討取る「柴田の鬼若子」と呼ばれていながら、


内政では複数の国の税収を増やし、その国の民から仏の様に崇められているという、不思議な二面性をお持ちの若武者ではありませぬか。その若武者が家臣を率いて、拙僧にどの様な用があるのですか?」


「拙者の評判の事は置いておきまして、竜芳殿。武田家に関する事をお伝えすると同時に、恵林寺一帯をある者達に奪われない為に、我々は来たのです」


「武田家に関する事とは?」


「ええ。先ず、ここ数年、武田家中が緊張状態であった事はご存知でしょうか?」


「ええ。時折、孫六叔父上が護衛の方々と共に来て、拙僧に愚痴をこぼしておりました。最近は来ないのですが、、まさか孫六叔父上に何か起きたのですか?」


「その孫六殿が数ヶ月前に亡くなりました」


「それは誠ですか!!?」


この様子だと、知らなかったみたいだな。でも、話さないと先に進まないから


「誠です。そして、孫六殿が亡くなった結果、武田家に内紛が起きました。簡潔に言いますと、竜芳殿の弟で当主の四郎殿が、とある家臣に殺されたのです。


竜芳殿は孫六殿から聞いていると思いますが、その様な愚行をやる者を」


「穴山ですな」


俺が言い切る前に竜芳さんが割って入ってきた


「やはり直ぐに分かるのですな」


「孫六叔父上が言っておりましたからな。先代当主で父の信玄公に止める様に言っていた、穴山の母が自身の姉で、穴山の嫁は自身の娘を嫁がせては、穴山に権力が集中してしまう。


これでは穴山が増長して、実力行使で家督を奪う為に動く可能性が高く、それは自身が死んだ後に起きてしまう。


そして、そうなったら四郎に味方する者は少なく、間違いなく殺されてしまうだろうとも。しかし柴田殿。拙者は武田家を出た身です。孫六叔父上や四郎には申し訳ないのですが、


武田家中の内紛に口出し出来る立場ではありませぬし、こう言ってはなんですが、穴山も拙僧も、祖父が武田家の先々代当主の信虎公なので、


一応、血筋が続く様ですので。それに、四郎には家督を継ぐ男児が居ないので、こうなる事も仕方ない事かと」


虎次郎くんの事を知らないと、そう言う考えになるか。なら、考えを改めてもらおう!


「竜芳殿!その事について、四郎殿はとんでもない策を繰り出していたのです」


「どの様な策でしょうか?」


「四郎殿は5年前の時点で、自身が穴山達に殺される事を予見していて、側室との間に産まれた嫡男、名を虎次郎と付けた幼子を、妹の松姫様に託して、武田家から出て行く様に偽造したのです」


「柴田殿。確かに妹の松姫は、五年前に出て行ったきり、行方知れずです。例え松姫と四郎の嫡男の虎次郎が一緒に居たとしても、武田家の残党が態々探し出して、


穴山達から家督を奪い返すにしても、行方知れずの者をどの様に探すのですか?」


指摘はご尤もだ。でもね、竜芳さん


「竜芳殿。探す必要は不要ですぞ。何故なら、松姫様も、虎次郎殿も、織田家が保護しているのですから」


「誠ですか?いくら何でも信じられないのですが」


「拙者が最初に遭遇して一時的に保護した後、織田家で保護していただき、松姫様は織田家の後継者である左中将様に嫁ぎ、一児をもうけております。そして、虎次郎殿に関しては、主君である内府様が、


将来的に武田家当主に据える為に養育しております。内府様の想定では、四郎殿の派閥も穴山達の派閥も、全員討取り、虎次郎殿を神輿として、


甲斐国を平定するつもりだったのです。しかし、それを根底から覆す事が起きたのです」


「穴山達が謀反を起こした事ですな?」


「竜芳殿。四郎殿は、謀反が起こる事を想定して、正室の桜殿と、桜殿との間にもうけた勝姫様を家臣の方々に護衛させながら、信濃国まで逃がそうとしていた所を、


穴山の手の者に見つかったのですが、進軍していた拙者の軍勢が保護して、現在、信濃国の高遠城に居ます」


「高遠城は弟で仁科家に養子に行った五郎が城代を務めていた城ですが、話を聞くに五郎は既に」


「生きております!」


「え?い、いや、柴田殿?五郎達が守っていた高遠城を織田家が奪ったのならば、五郎を含めた全員が討死しているはずですぞ!」


「竜芳殿。これも四郎殿の命懸けの策と申しますか、最初は、拙者が桜殿と勝姫様達を連れて、仁科様と交渉しておりました。その時、仁科様が武田家の家宝である、


楯無を調べていたところ、四郎殿の遺言状とも取れる文を見つけたのです。その文の中には


「五郎を当主名代に指名する。だから、生きて虎次郎の傅役になってくれ。そして、織田家と共に穴山達を討つ為に、降伏してくれ」と


書いてありました。それを見た仁科様は内府様の元に行き、降伏する旨を伝えたのです。それを受けた内府様は自らと同盟関係にある徳川様を


穴山達を誘き寄せる餌の餌として、高遠城に入っております。そして、穴山達を討つ為に、典厩様も高遠城に入っております」


「典厩殿も生きているのですか?」


「はい。左中将様と弟の伊勢守様が降伏の交渉を行なった結果、降伏して穴山達を討つ為に参加してくださいました」


俺がここまで言うと竜芳さんは


「良かった。誠に、生きていて良かった」


しばらく泣いて、言葉が出ない状態になっております。まあ、死んだと思っていた身内が生きていたら泣くよな。でも、本題はこれからなんです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ