奪う者達と守る者達
遅くなりましたが新年あけましておめでとうございます。他の作家さんの作品を見て勉強していたら、新話の投稿が遅くなりまして申し訳ありません。
元亀三年(1572年)十月九日
美濃国 岩村城城門前にて
「皆、準備は良いな?」
「将兵全て出陣可能でございます。秋山伯耆守様」
「うむ。我等はこれより信濃国との国境にある織田の砦を攻撃する。砦の中にあるもの全て乱取り自由じゃ」
「「「うおお!!!」」」
「士気も上がった様じゃな。では全軍出陣」
こうして武田家家臣秋山伯耆守虎繁を大将とする二千五百の軍勢が美濃加茂村に向けて進軍を開始した。
ほぼ時を同じくして、柴田家屋敷の大広間から中庭に至る人が座れる場所に参戦する者達が集まった。その中の上座には吉六郎が座っていた。吉六郎は険しい顔をしていたが、内心はこう思っていた
(岩村城は美濃国の南部の端の方だけど、ここに来るなら、四時間もかからない。そして馬の数次第では早く来るだろう。なら、今しか細工をするチャンスはない。覚悟を決めろよ!俺!!)
吉六郎は気持ちも策も決まった。そして、そんな自分に更に喝を入れる為に顔を叩いた!パチン!!と乾いた音が辺りに響いた。
「若様。どうなさいましたか?」
「済まぬな利兵衛。森様も兄上も。驚かせて申し訳ない。さて、本来の話をしよう。この状況じゃ。領民の皆も分かっているであろうが、武田がここに向かって出陣したと知らせが入った。策は数日前に伝えたとおり、儂と共に武田を分断する重要な場所に配置する者達、覚悟は良いな?」
「「「「勿論です!若様」」」」
「兄上!我々は外にて待機しております。罠の鳴子が鳴りましたら、手筈どおり一当てして山へ。敵の半分程が我々の潜む前を通ったら分断する攻撃を行います。それを合図に反転し攻撃を。森様も屋敷から追撃をお願いします」
「「分かった」」
「吉六郎。儂の家臣で腕に覚えのある者を二百人配置しておく。その者達は領民を守る為に使え!良いな」
「お心遣い忝のうございます」
さあ、やる事はやった。あとは武田を追い返すだけだ。




