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弟への遺言状

五郎さんが楯無の中の文を見つけて、神妙な顔で開き、読みだす


「どれ。「五郎へ。土屋と原が桜と勝姫を無事に柴田家へ引き渡している事、そして、五郎を味方に引き入れる事を誰かしらが提案していると信じて、


この文を隠しておいた。五郎の事じゃ、御旗と楯無を確認する時は、中までじっくり確認して見つけてくれると信じているぞ


前置きが長くなったが、ここからが本題じゃ。五郎、この文を読んでいる時点で、儂は間違いなく死んでいると思ってくれ


孫六叔父上が亡くなった事で、穴山達を抑え込む事が出来なくなり、叔父上の葬儀の夜か次の日にでも、穴山達は儂や周囲の者達を襲撃するはずじゃ


それを見越して、儂は土屋と原に桜と勝姫と共に脱出し、御旗と楯無を虎次郎へ渡す様に命令した。これが儂が穴山達へ出来る最期の抵抗じゃ


儂の当主としての器量不足と、出自の差で穴山や穴山の倅を当主に据える動きがあったのに、それを抑えられなかった儂が全て悪い!


そして、穴山達が儂の名を騙り、領民に重税を課した事も儂が悪い!全ての責は儂の命で受けるしかない


だが、桜と勝姫は巻き込みたくない。それに、虎次郎を織田家が保護して養育している以上、武田家は滅びぬ!きっと織田家が穴山達を討滅ぼして、虎次郎を新たな当主に据えるじゃろう


そして、五郎!此処からお主達へ最期の命令となるが、しっかりと聞いてくれ!織田家が桜達と共に五郎達の守る高遠城へ来たならば、降伏して織田家に協力してくれ!


儂の様な不甲斐ない、情けない当主ではあるが、穴山の様に自らの事しか考えない者達が甲斐国を統治するよりは、織田家の元で鍛えられた虎次郎に統治して欲しい


人によっては織田家の傀儡や、ただの神輿と言うであろうが、それでも儂は穴山が甲斐国を統治するよりはましになると思う


そして、五郎!お主は織田家に降伏して、虎次郎の傅役になってくれ!現在は、妹の松が傅役の形になっているが、松には普通の女子の幸せとして、夫である織田勘九郎殿との子を産み、育てる事を優先させてやりたい


五郎より歳下の弟達では、娘の勝姫より歳下じゃから、虎次郎に甘く接してしまうかもしれぬ。儂の兄弟や親族では、五郎しか頼りになる者が居らぬ!


だからこそ五郎!織田家に降伏してくれ!当主として兄として、情けない、不甲斐ない、そんな男からの最期の頼みじゃ!この文は遺言状と思って構わぬ


だから五郎、高遠城へ来た織田家を攻撃してはならぬぞ。儂の名代として、虎次郎が甲斐国に来るまでは、武田家をまとめてくれ」と書い、て、あ、あ、兄、上。そんな、そんな」


うん。五郎さんは勿論だけど、家臣の皆さん、惣右衛門さん、新之助さんも、桜殿と勝姫様も泣いております


うっすらとですが、源三郎様も泣いておりますね。まあ、こんな内容を身内や主君からされたら泣くか


仕方ない、皆さんが落ち着くまで待ちますか。


で、10分くらい経ちましたら、皆さん落ち着いた様ですが


「源三郎殿と六三郎殿。お見苦しい姿を見せて、申し訳ない。四郎兄上の遺言状を受けて、儂は、儂はどうしたら良い」


五郎さんの表情は悩みに悩んでいる事が、ありありと出ています。俺としては、勝頼の遺言状でのリクエストを聞いて降伏して欲しいけど、それをそのまま言うのは流石に、ねえ


俺がそんな感じで考えていると、源三郎様が


「仁科殿。織田家の者が言う事はおかしいですが、兄である四郎殿の願いを叶えてくだされ。我々織田家も、武家の中でも高名で歴史ある甲斐源氏武田家が、


苦しむなど、あってはならないと思っております。それが、自らを武田家当主などと思い上がっている者のせいで起きるなど、だからこそ、虎次郎殿の為、


武田家の為、何より、甲斐国の民の為に、織田家に降伏してくだされ!」


頭を下げて五郎さんを説得している。源三郎様の言葉を聞いて


「分かりもうした。我々、仁科家一同、いえ、武田家当主名代として、織田家に降伏いたす」


降伏の決断をくだした。五郎さんが頭を下げると、家臣の皆さん、更には桜殿と勝姫様、惣右衛門さんと新之助さんも頭を下げた


これは、名目的には武田家を降伏させたという事で良いのかな?まあ、やらなくてもいい戦がひとつ減ったと考えよう


それじゃあ、これからの事を話し合って、と思ったら五郎さんが


「源三郎殿、いえ、源三郎様!降伏するにあたり、お頼みしたき事が」


何かお願いをして来ました。叶えても問題の無いリクエストなら良いのですが


「仁科殿。内容にもよりますが、言ってみてくだされ」


「ははっ!では、我々仁科家も穴山討伐に加えていただきたく存じます!穴山の暴挙の為に、お館様が、兄上が」


まさかの穴山討伐に参加させてくれのリクエストでした。でも、勝頼の仇を取らせてくれっていうのは理解出来るけど


「仁科殿。その気持ちは理解出来ますが、仁科殿本人の参加は許可出来ませぬ!」


「な、何故ですか?拙者に兄上の仇を」


「仁科殿。四郎殿からの文に「虎次郎の傅役に」と指名されている仁科殿が万が一にも討死したら、武田家中をまとめる人間が居なくなります!


幼い虎次郎殿に、武田家中をまとめられるとお思いですか?それに何より、四郎殿の遺言状を無視するおつもりですか!?」


源三郎様が、五郎さんに参加してはいけない理由を並べている。理由を聞いた五郎さんは泣きながら


「そんな、拙者は。兄上の仇を取らせてもらえぬのですか!」


源三郎様に詰め寄る。これは、堂々巡りになるから、助け船を出すか


「源三郎様、仁科殿のお気持ちも汲みまして、この様な折衷案はどうでしょうか?仁科殿の軍勢を我々の軍勢に編成して、仁科殿本人は源三郎様と共に本陣で待機してもらい、穴山達を捕縛した時にでも斬首させるというのは?」


「それならば、まあ良いか。仁科殿、六三郎殿の提案に納得してくだされ」


「拙者は、それだけの事しか出来ぬのですか。それでは」


「仁科殿。源三郎様も仁科殿のお気持ちは理解しているはずです。ですが、仁科殿には次世代の武田家当主を補佐するお役目があります。なので、穴山達を討伐する事を家臣の方々に託していただけませぬか?」


「儂は、武田家の敵を討つ事も」


五郎さんが悔しい気持ちを言おうとしていると、


「殿!」


山田さんが発言してきました


「殿!口惜しいお気持ち、我々に託していただきたく!我々が殿の代わりに穴山達を柴田殿と共に討伐して来ます!なので、我々を信頼していただけませぬか?」


「殿!我々に託してくだされ!」


「殿!」


「殿!」


「殿!!」


「「「「「殿!」」」」」


山田さんの言葉をきっかけに家臣の皆さんが五郎さんに呼びかける。それに五郎さんは


「分かった。儂の無念、皆に託す」


「「「「「殿!ありがたき!」」」」」


折れてくれました。これで解決かな?


「仁科殿。忝い」


源三郎様も五郎さんも納得してくれたみたいだから、これから甲斐国へ進めるかな?

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