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その矢文は信頼されるのか

六三郎と源三郎は信長から了承されて、桜と勝姫、更に惣右衛門と新之助も連れて高遠城へ向かっていた


信長達が本陣を構えていた場所は、美濃国よりの場所だったので穴山こ手の者から見つからない為の道で高遠城へ出立したら、通常の進軍速度でも2日かかる距離だった。


源三郎と六三郎は桜と勝姫が居るので、3日はかけるつもりだったが


「一刻も早く五郎殿にお会いして、この事を伝えたいのです!私達も馬に乗って移動します。乗り慣れておりまふから、気になさらずに」


と言って来たので、2人を馬に乗せると、難なく乗りこなしていた。それを見た源三郎と六三郎は2人を馬に乗せて先を進んだ


天正十二年(1584年)二月十八日

信濃国 某所


「源三郎殿、六三郎殿。ここから一里程、東に進んだ所に高遠城があり、そこに仁科五郎様達が居ます」


「先ずは矢文で声掛けをしてからが良いと思います」


皆さんおはようございます。現在、信濃国の高遠城近くに来ております柴田六三郎です。武田家中の内乱に伴う、武田勝頼派閥の家臣及び勝頼の家族を保護したと思ったら、


武田勝頼本人から、「武田の家臣だった人達を多く召し抱えているんだから、俺の家族や家臣たちを保護してくれ!」と文で指名されて、そこから更に、


勝頼の家族から「勝頼の弟を殺さないでください!勝頼の数少ない味方なんです!」と殿が懇願されたら、


俺がその弟である仁科五郎さんに「降伏してください!それが無理なら、穴山達を攻撃している間は俺達を攻撃しないでね」と取り決めを交わして来い!


と、殿からかなりの無茶振りをされたのですが、無茶振りを形式上、源三郎様と俺にしたのですが、実質的に俺が交渉役をしないといけないハメになりました


そんな状況の交渉役なんて、殺される事確定ですから、無事に交渉から生きて帰る為に、勝頼の家族も巻き込めば、どうにかなるだろう!と考えて、現在に至ります


銀次郎の兄の惣右衛門さんと、新左衛門の弟の新之助さんから「矢文で声掛けしてみよう」と言われましたので、


高遠城に近づいてから、源三郎様の家臣で弓の上手い人に矢文を射ってもらいました。出来るだけ、早くに気づいてくれるといいなあ、こっちは攻撃する意思は無い事を分かってくれるだけでもありがたいし


とりあえず、火縄銃の射程距離の外くらいに布陣しておくか。文にも書いたけど、大手門の東から一里くらいが目安だな


六三郎達は、矢文を射った後、待つしかなかった。その頃、高遠城内部では


「織田の軍勢が近くに陣取っていると報告があったぞ!直ぐにでも攻撃してくるかもしれぬ!油断するでないぞ!」


「「「「ははっ!」」」」


大声で兵達の士気を高めているのは、仁科五郎盛信にしなごろうもりのぶ。六三郎と源三郎からしたら、是が非でも交渉したい人物であり、桜と勝姫からしたら生きてもらい、何とか勝頼を助ける為に動いて欲しい人物である


その盛信だが、兄の勝頼の周囲の情勢不安もあり、叔父の信廉の死も知らされていない。織田徳川軍が甲斐国に近づく事を阻止する為、


自身が城代を務める高遠城が防波堤の役割を求められている事を理解しているが、多勢に無勢である為に勝頼へ援軍を要請しているものの、援軍が来ない事に不安を覚えていた


そんな盛信が、城内をせわしなく動いて兵達を叱咤していると


「殿!矢文でございます!」


「何処からの矢文じゃ?」


「分かりませぬ!」


「仕方ない、見て確認するとしよう。よこせ!」


六三郎達からの矢文を家臣が見つけて、盛信の元へ持って来た。中身を確認する為に盛信は文に目を通すと


「はあっ!ま、誠、に?」


驚愕し、言葉を失った。その様子に家臣は


「殿?文の内容は、どの様な内容なのですか?」


質問をするが、盛信は


「大広間へ主だった者達を集めてから話す。済まぬが、皆を集めてくれ」


「は、ははっ!」


命令を受けた家臣は訳が分からないながらも、主だった者達を集める為に、その場を後にした。そして、盛信も大広間へ移動して、しばらく待っていると全員揃ったので、


「皆!織田と徳川がいつ攻め込んでくるか分からない時に、呼び出して済まぬ!だが、皆に伝えておきたいと同時に、意見を聞きたい事がこの矢文の中に書いてあった


今から文の内容を読むから、読み終えた後、皆の考えを言ってくれ。では、「高遠城城主の仁科五郎殿へ。この文を送りました拙者は織田家家臣柴田越前守の嫡男の柴田六三郎と申します


急な矢文、しかもこれから戦をするかもしれぬ織田家の者からの矢文が来た事に、驚いた事でしょう。その点は申し訳ありませぬ


ですが、これから読んでいただく内容は、仁科殿と武田家、ひいては甲斐国のこれからを決める事にございます


一言半句、逃さずにお読みいただきたい!改めて本題に入りますが、これから我々は甲斐国に入り、武田家当主である武田四郎殿の命懸けの願いである


穴山達を討伐する為に甲斐国へ入りたいのですが、背後に高遠城及び仁科殿率いる強者達が居ると、穴山達を討伐したくとも、背後から攻撃される恐れがある為、


集中出来ませぬ!つきましては、織田徳川軍に降伏していただくか、最低でも我々を攻撃しない取り決めを交わしていただきたく!


勿論、この様な矢文では信頼出来ぬでしょう!なので、高遠城の大手門より一里程の所に布陣しております


そこに、武田家の赤備えを真似た軍勢と、織田木瓜の黄色の旗印、更に武田四郎殿にとても詳しい方々が居ます。家臣の何方かを確認の為に、派遣していただいても構いませぬ!皆様が攻撃して来ないかぎり、こちらも攻撃しませぬ!


我々以上に、武田四郎殿の数少ない味方である仁科殿に生きて欲しいと、武田四郎殿にとても詳しい方々が希望しております!簡単に決められないと思いますので、


仁科殿ならびに家臣の方々がよろしければ、我々は話し合いの為に、「少人数で」高遠城内に入りましょう!


武田四郎殿の命懸けの願いを叶える為に、我々は仁科五郎という男と話し合いを希望します!」と、書いてあるが、皆の意見はどうじゃ?」


「信じられませぬ!殿を討ち取る為の罠かと」


「しかし、武田家中の不和の原因の穴山を討伐すると言っておるのが」


「そもそも、織田と徳川が何故に穴山の存在を知っておる?」


「これは、織田と徳川に見せかけた、穴山達の罠なのでは?」


「いや、もしや穴山達が、保身の為に織田と徳川に我々を売った可能性も」


家臣達から色々な意見が出るが、盛信は決断に踏み切れない。なので、


「仕方ない。誰ぞ、この矢文の主である柴田六三郎とやらが率いる軍勢が布陣する場所を見てまいれ!」


「その大役、拙者がお受けしたく!」


「山田よ。済まぬが、よろしく頼む!誠に相手が攻撃しないのであれば、直ぐに戻って来い!」


「ははっ!」


盛信は、家臣の山田を派遣させる事に決めた。

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