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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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殿の政治的判断で俺は最前線へ

「源三郎様!お伝えしなければならない事がありました!」


「どの様な事でしょうか?」


源三郎様に勝頼からの文を見せて、出来るかぎりの説明をすると


「六三郎殿。武田四郎殿は、奥方殿と姫君以外では、此方の土屋惣右衛門殿と原新之助殿以外に心を開く事の出来る家臣や身内が居なかったから、この様な事になったのでしょうか?」


泣きながら俺に質問して来た。質問の意味は分かるけど、俺は明確に答えられる程の人生経験は無いから


「源三郎様、拙者からは何とも言えませぬ。ですが、殿にこの事を伝えるべきかと」


「そうですな!六三郎殿、父上の元へ行く前に奥方殿と姫君に一度お会いしたいのですが、よろしいでしょうか?」


「はい。此方です」


源三郎様のリクエストで2人の居る場所に行きましたら、


「あなた達が武田四郎殿の奥方殿と姫君ですな?拙者、織田内府の四男の織田源三郎にございます。土屋惣右衛門殿と原新之助殿から、四郎殿からの文を読ませていただきました


拙者の様な甘い環境で育った者が言うのも何ですが、あなた達に生きて欲しいという願い、虎次郎殿に家督を継いで欲しいという願い、微力ながら、後押しさせてくだされ」


「よろしいのですか?敵の総大将なのですよ?」


「父上の事です。きっと、これを虎次郎殿が家督相続する為の大義名分と判断して、穴山達を討ち滅ぼすでしょう」


「ま、誠ですか?誠に、四郎様の願いを」


「先ずは父上に伝えます!六三郎殿、協力をお願いしますぞ!」


トントン拍子に話が進んで決まったけど、やっぱり源三郎様も殿の子供だよ。やると決めたら行動が早いし、周り、というか俺を巻き込む。


まあ、殿に伝えるだけだろうし、殿の事だから馬廻りの人達を連れて甲斐国へ1番乗りしそうだよな。まあ、俺や源三郎様に「言ったからには最前線で暴れて来い」なんて言わないだろ!言わないよね?


※六三郎は無意識でフラグを建てています


源三郎主導で全員が信長達の居る本陣に到着した。


「源三郎と六三郎!征圧した場所を放り出して戻ってくるとは何事か!?事と次第によっては!」


信長が2人に怒りを見せるが、源三郎は


「父上!叱責はご尤もですが、此方の文を読んでからにしてくだされ!拙者と六三郎殿は、父上ならば、政治的判断を下すと確信したからこそ戻って来たのです!」


信長に対して一歩も引かずに、勝頼からの文を見せた。信長は苛立ちながらも、読み始めた


「くだらない文であったなら、相応の処分を覚悟しておけ!どれ。「この文を読んでいる方へ。この文を書いた拙者の名は武田四郎勝頼と申します。


この文を読んでいる方は、文を持っていた土屋惣右衛門と原新之助達を庇護していただいていると信じて、


甲斐武田家の内情を話します。甲斐武田家は先代の当主であった、拙者の父の信玄が死去して以降、


家督を継げる男子が拙者しか居ない状況だったので、一門の諏訪家を継いでいた拙者が武田家の家督を継いだのですが、拙者の母が武田家に滅ぼされた諏訪家の姫であった事から


殆どの家臣から、家督相続を反対されておりました。更に、祖父信虎の娘を母に持ち、父信玄の娘を嫁にした穴山という者が、家督相続に異議を唱えるだけでなく、拙者の名を騙り、領地の城代へ銭を不当に要求するなどの行為を行ない、


領地の情勢不安を煽る様になっており、家中を乱しておりました。ですが、父信玄の弟で、拙者の叔父の孫六が生きていた時は行動を嗜めておりましたが、


先頃、叔父が亡くなって、最早穴山達を抑える事は不可能になってしまいました。全ては拙者が当主として不甲斐ない、情けないから起きた事です


ですが、穴山達が甲斐国を統治したら、領民達は苦しい暮らしに追われ、拙者を支えてくれた家臣達、更に拙者の家族までもが、穴山達に殺されてしまうでしょう


情けない、不甲斐ない当主ですが、せめてもの意地として、妹の松姫に託した嫡男の虎次郎に家督を継がせたい、穴山達の自由にさせたくないと思い、


土屋と原に、武田家の家督相続に必要な、家宝の御旗と楯無を持たせて、拙者の正室や娘と共に甲斐国から脱出させました


もしも、文と全員を保護していただいたならば、願わくば織田家家臣で、「柴田の鬼若子」と呼ばれるお方に文と全員をお渡しくだされ!鬼若子殿は、旧武田家臣を多く召し抱えている事を分かっております


きっと鬼若子殿は、他者の出自など気にしない器の大きな傑物なのでしょう。難しい事を承知で、鬼若子殿にこの文が届き、全員が保護されている事を願っております


そして、鬼若子殿に文が届いておりましたら、織田内府殿へ文をお渡しいただきたい!織田殿には天下を狙う為に戦でぶつかる事になりましたが、恨みや憎しみなどありませぬ


拙者の嫡男の虎次郎を保護した織田殿は、政治的判断が下せる為政者であると信じております。だからこそ、穴山ではなく虎次郎を甲斐武田家の当主に据えていただきたい!


例え神輿であっても、穴山が治めるより、甲斐国を良い国にしてくれるはずです。何卒、お願いします


最期に、虎次郎へ。共に過ごした日々は少なくとも、父は虎次郎を大事な存在だと思っておる!情けない父で済まぬ!この文が鬼若子殿か織田殿に読まれている頃には、父は間違いなく死んでいるであろう


間違っても、父の後を追うな!織田家の方々に色々と教えてもらい、立派な主君になれ!父の様な家中をまとめられない情けない主君になるな!」とあるか、


六三郎!これを持っていた土屋惣右衛門と原新之助、そして四郎勝頼の正室と娘を連れて参れ!」


「ははっ!」


信長に命令された六三郎は、4人を連れて来て


「貴殿達が武田四郎殿の文にあった面々か」


信長は威圧感を見せながら、4人に近づくと


「よくぞ無事であった!」


と、声をかけた。4人は呆気に取られているが、信長は続ける


「武田四郎殿からの文を読んで、自らの命と引き換えに、貴殿達を生かして、虎次郎に家督を継いでもらいたいという願い!これを受けずして、何が武士じゃ!四人共、武田四郎殿の願い、絶対に叶えてみせよう!


そして、武田家中に、いや、甲斐国に巣食う穴山という悪鬼達を織田家が討ち滅ぼしてくれようぞ!」


「「「「誠でございますか?」」」」


「うむ!一日、いや、一刻も早く甲斐国へ入り、穴山達を攻撃する。だが甲斐国の土地勘が無い事には」


信長がそう言うと、


「「我々に案内させていただきたい!」」


昌恒と貞胤が信長に直訴して来た。しかし信長は


「良いのか?お主達は甲斐国から信濃国まで休みなく、奥方達を守りながら進んで疲労困憊であろう?」


2人を気遣うが、2人は


「柴田殿に会って、織田様に全てを話せました。その時点で、我々はお館様の命令を達成出来たはずです。なので」


「拙者も、お館様の命令を達成出来たと思っております。それに死んだと思っていた兄上に会えて、最早思い残す事はありませぬ!」


と、穴山達を討つ戦に参戦したいと直訴して来た。それに信長は


「二人共!お主達が居ないと、誰が元服した虎次郎を支えるのじゃ?」


「「それは」」


二人を宥める質問を投げかける。二人が落ち着いた事を分かった信長は


「六三郎!赤備え達を含めたお主の家臣達は元は武田家臣だったのならば、甲斐国の土地勘もあるはずじゃろう!源三郎を総大将として、お主達は穴山討伐の為の軍勢として出陣せよ!


彦右衛門、勝蔵、藤四郎!お主達も共に進軍して、甲斐国の征圧の先陣を切るのじゃ!勘九郎!三七!三人の軍勢と共に進軍じゃ!」


「「「「「「ははっ!」」」」」」


こうして、信長の早い判断で六三郎の最前線への出陣が決まった。当の六三郎は


(やっぱりこうなったか。まあ、源三郎様が気合い入っているし、殿は甲斐国平定の大義名分を得た顔をしているし。いつも以上に気合い入れて頑張らないとな)


諦めの境地だけど、気合いも入っていた。

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