出陣出来るかは息子達次第
天正十二年(1584年)一月六日
越前国 柴田家屋敷
「六三郎様!赤備えの皆様の訓練に参加したく!」
「弟と同じく、拙者も参加したく!」
皆さんおはようございます。朝から真田昌幸さんの長男信幸さんと、次男信繁くんに「赤備えの訓練に参加させてくれ!」と懇願されております
柴田六三郎です。やっぱり、この時代の普通の若者は戦場で武功を挙げてこそ!な考えだからこそ、赤備えの皆の屈強な身体つきを自分も手にしたい!と、思うんでしょうね
実際、赤備えの皆以外だと、山県兄弟の次男の佐兵衛、三男の三郎が訓練に参加してるし、俺が近江国に出張している間に元服した大野3兄弟の長男と次男で
史実だと治長と治房と名乗っていたけど、この世界線では親父が名前の一字を分け与えた様で、長男は勝治、次男は家治と名乗っております
その2人も赤備えの訓練の通常の回数をこなせる様になっていたので、今回の俺の出陣で初陣を経験してもらいましょう
話がそれましたね。2人の話に戻りましょうか
「源三郎殿も源二郎殿も、何故それ程に赤備えの皆と同じ訓練がしたいのじゃ?別に儂は今すぐの戦働きを求めておらぬが」
「飯富様から教えていただきました!今月の末には近江国から武田征伐へ出陣すると!その中に我々も入れていただきたいと同時に、赤備えの皆様に少しでも近づきたいのです!」
「源二郎に言いたい事の殆どを言われてしまいましたが、客将だからこそ、働ける所を六三郎様に見ていただき、一日も早く家臣として召し抱えていただきたいのです!」
「「赤備えの皆様と共に、戦場で戦いたいのです!」」
2人揃って同じ言葉で熱意をアピールしてきたけど、これは昌幸さんも入れて話し合いをするしかないかな
「利兵衛!喜兵衛殿を連れて来てくれ!二人の言葉だけでは判断しづらい!」
「ははっ!」
利兵衛が昌幸さんを連れてきまして、
「喜兵衛殿、2人が赤備えの皆と同じ訓練をやりたいと言っておるが、良いですかな?」
「六三郎様。そんな拙者に聞かずとも、己の現状を知りたいと申すのであれば、やらせてくだされ!」
「喜兵衛殿の了承も得たから、2人共。やってみなされ。同じ事を同じ回数出来るか、それで赤備えに入れるかどうかを見てみよう。直ぐに入れるとは思わない様に」
「「ははっ!」」
「では、源太郎!2人を連れて行って、共に訓練に参加させよ!水野家の方々、山県兄弟、大野兄弟も居るから、人数の多さ的に大変だと思うが、
先ずはどの様なものかを体験させてみよ!年齢的に皆と同じ回数をやらせても構わぬ!」
「それは中々に厳しいと思いますが、分かりました。源三郎殿、源二郎殿。最初は動くのも辛いですが、頑張ってくだされ」
(おいおい源太郎!笑顔で怖い事を言うな。2人がドン引きしてるじゃないか!父である昌幸さんは、笑ってるのは何故?)
「六三郎様。訓練の様子を見てもよろしいでしょうか?」
「構わぬが、参加はしない様、お願いしますぞ?」
「それは勿論」
「では、源太郎。皆で行くぞ。利兵衛、何かあったら呼んでくれ」
「「ははっ!」」
で、訓練用の坂道に来たら、
「こ、これが訓練用の」
「六三郎様、この坂道でいったい何を」
うん。やっぱり初見の人はビビるよね。でも、そんな感情も早めに無くなる。いや、考える余裕が無くなるから
「赤備えの皆や経験者達が手本を見せますから、皆の動きを先ずは見てくだされ」
で、皆をいつもどおりに全力ダッシュで登らせて、ジョギングで下らせてをやらせていたら、
「若様!」
利兵衛が来ました。何か良くない事でも起きたかと思ったら
「若様!茶々様と初様が居ないと奥方様がお怒りです。此方に居るかもしれないとの事なのですが」
「誠か?仕方ない。茶々!初!母上に儂も叱られてやるから、出て来なさい!」
「利兵衛爺、母上を誤魔化してくださいよ」
「久しぶりに大人数で走る事が出来て楽しかったのに」
このおてんば共!お気楽な事言いやがって!しかも、息があがってない!まさか、俺の妹までもが赤備えの一部みたいに体力バカの脳筋になってしまったのか?
このままだと、戦から遠い家への嫁入りが難しくなってしまう!今からでもどうにかお淑やかなお姫様になってもらわないと
俺がそう思っていたら、
「はっはっは!六三郎様!六三郎様の妹君達までもが、赤備えの方々と同じ様に坂道を走れるとは!
利兵衛殿が言っていたとおり、普通の武家ではありませぬな!普通の武家の姫君はこの様な事をせずに、
教養を深めて、嫁いでも恥ずかしくない様にするのですが、いやはや。珍しくも素晴らしい家だと実感しました」
ちょっと昌幸さん?それは褒めているんですか?イジっているんですか?下手に触れない方が良さそうだから仕方ない
「妹達は母上に言われないかぎりは、この様に過ごしておりますので」
「息子達にも良い刺激になります。改めてじゃが、源三郎と源二郎!姫様達も出来たのじゃ。お主達、出来ないなど無いよな?」
あ、昌幸さんもスパルタな人だったか。そんな昌幸さんの圧力を受けながら、真田兄弟は
「も、勿論です」
「今から走ります」
と、走り出しまして、結果が
「姫様達は息があがってなかったぞ?お主達は何故、息があがっておる?」
と、昌幸さんが静かに怒りを増す事になりまして、筋トレ各40回もやらせたのですが、
「う、うおお!腕が!」
「は、腹が!千切れる!」
「せ、せ、背中が!」
「こ、腰から下が!」
と、苦しみながら、吐きながら、何とかやり遂げましたが、大の字になって動けない状態です。それを見た昌幸さんは
「六三郎様。この様な情けない愚息達ですが、武田征伐に拙者と共に連れて行ってくださいませぬか?」
と、頼んで来たので、
「7日間で、2人が訓練終了後も普通に動ける様になれば、出陣していただきます」
「有り難き!源三郎!源二郎!お主達次第とお墨付きをいただいたぞ!しっかりと鍛えてもらえ!」
「「ははっ!」」
まあ、この訓練をやっても普通に動けるなら戦力になるだろう。それにチート武将一家がどんな戦を見せるか楽しみでもあるからな。頑張ってもらおうか。




