完成を見られない上に近づく新たな訳あり
作品の中に現実では不可能な描写がありますが、フィクションなのでご了承ください。
天正十一年(1583年)十二月十日
近江国 長浜城
「六三郎殿!遂に!遂に!」
「紀之介殿!落ち着いてくだされ。と言っても、とうとう建物の基礎が完成したのですから、無理な事は分かります」
「六三郎殿。拙者も紀之介と同じく嬉しいかぎりです!これから北近江に人と銭と技術が入ってくるのですから、これは落ち着いていられませぬ!」
「六三郎殿!これ程に心躍る事、人生で初めて経験しました!誠に!誠にありがとう!」
皆さんおはようございます。温泉開発の区切りのひとつ、温泉宿の土台が完成した事を喜んでいる3人と同じく喜んでおります柴田家六三郎です
まあ、鉄筋が無いので近くの賤ヶ岳やその周辺から竹を伐採しまくって竹筋として大量に戦国時代版コンクリートに使いまして、万が一の天正大地震が起きても全壊部分か少なくなる様に、
土台部分を厚めにそして広い面積で作りましたら、大黒柱も大量の支柱も作りました。正直言って、鉄筋が無いこの時代だとこれが限界かもしれません
それでも出来るかぎりの知恵を絞って、皆さんと協力して、今から建物本体を作る作業に入るのですが、
殿から「小さめな城くらいの作りにして、天守にあたる部分は、儂達が来た時の寝泊まり用及び重要な話し合いをする時に使いたい!」とリクエストがありました。
もう未来で言うなら、依頼主は織田家で依頼を受けたのは羽柴家の形になってます。最初は羽柴家の自主的開発だったのに、いつの間にやら。な感じです
まあ、銭は織田家が殆ど出しているから、リクエストを聞くのは良いのですが、はっきり言って、殿が1番完成を楽しみにしております。絶景付露天風呂の効果がここまであるとは驚きです
そんな驚きもありながら、殿から源三郎様と紀之介殿と、何故か俺も呼ばれました。何事かと思ったら
「源三郎と紀之介、来年弥生に行なう武田征伐で初陣じゃ!六三郎は赤備えと共に戦経験者として二人の補佐にまわれ!」
といきなりの命令でした。いや、殿?温泉宿はまだまだ工事中ですが?
「殿。戦に出陣するのは構いませぬが、現在手掛けているこちらの作業についてですな、直ぐには終わらないのですか」
「それなら安心せい!小一郎と佐吉が見ると同時に、来年以内、いや、再来年でも完成は良いと判断した!
だから三人共、お主達が特に気にかけながら関わって来たから完成を見たいのも分かるが、先ずは武田を滅ぼす事を優先せよ!良いな?」
「「「ははっ!」」」
「それから六三郎!」
「はい!」
「出陣前に越前国に戻って、市に顔を見せてやれ。出陣は睦月の末からを予定しておる。源三郎を大将とした軍勢に紀之介と六三郎達は入り、
儂と共に近江国から出立し、岐阜城の勘九郎と合流する。そこから進軍して、信濃国そして甲斐国を征圧する」
「「「ははっ!」」」
「うむ。各自準備を怠るでないぞ?六三郎の正室の座を狙っておる姫やその付き添いの者達のうち、既に領地に戻っておる十兵衛の倅は美濃国で合流して、
源三郎の軍勢に入れる。あ奴も初陣らしいから、六三郎!お主と赤備え達は負担が少し多いかもしれぬが、補佐をしっかりと頼むぞ?」
「ははっ!」
「うむ。では、源三郎!一度、儂と共に安土城に帰るぞ!」
「ははっ!」
こうして、殿は源三郎様を連れて安土城に帰って行きました。じゃあ、俺も一時帰宅の準備をしますか。しかし、信濃国と甲斐国か。甲斐国は赤備えの皆の生まれ育った故郷だから、何となく知っているけど、
信濃国に関しては、何も分からないからなあ。ただ、何年か前に山県家の源四郎から何か重要な事を言われた様な気がしたんだけどなあ?
まあいいか。一時帰宅の時に源四郎本人から聞いてみよう!信濃国に知り合いの居ない俺が気にしても仕方ない
六三郎は源太郎の嫡男が産まれた時に、源四郎から言われていた信濃国に小さいながらも、領地を持っている真田家の事を、すっかり忘れていた
そして、その真田家はと言うと
天正十一年(1583年)十一月一日
信濃国 某所
「皆!出立の準備は良いな?」
「準備万端です!源二郎はどうじゃ?」
「兄上!拙者は勿論ですが、弟も妹も母上も祖母様も準備万端ですぞ!」
「父上。皆、準備万端だそうです」
「よし!それでは美濃国まで一気に行こうではないか!」
場面は変わって、六三郎が信長と武田征伐について話し合う1ヶ月前の信濃国で、出立について話し合いをしているのは、真田喜兵衛昌幸と息子達を含めた家族。これまで父の幸隆や兄の信綱、昌輝と共に武田家に仕えて、
信玄が生きている頃は武藤家の名跡を継いで、武藤喜兵衛昌幸と名乗っていたが、8年前の長篠・設楽原の戦いで兄2人が討死した為に真田に復姓して家督を継いでいたが、昨今の武田家を取り巻く状況の悪化と、
長兄の信綱の息子に家督を継がせたい一派との抗争に昌幸は家族全員で出奔する事を決めた。勿論、目的地は山県昌景から送られてきた文の中に書いてあった柴田家であるが、
「しかし父上。誠に大丈夫なのですか?父上が頼りになされている柴田家は織田家の重臣と聞いておりますが、その様な家が我々を召し抱えてくれるとは思えないのですが」
嫡男の源三郎、後の真田信之が常識的な質問をする。しかし昌幸は
「源三郎、そのまま行けば駄目であろう。じゃが、山県様の遺書とも取れる文の中には、山県様の甥の飯富兄弟を始めとした面々が召し抱えられているとある
この文を見せたら、召し抱えてもらえる可能性は有る!それに、儂達は柴田殿の嫡男の「柴田の鬼若子」と呼ばれる人に召し抱えてもらうつもりじゃ!
だが、先ずは信濃国を出る事を最優先に考えよ!もしかしたら、武田の追手が来るかもしれぬ!最低限の持てる物のみを荷物にして、美濃国の東端にある柴田家を目指すぞ!」
「「「ははっ!」」」
こうして真田家は全員で屋敷を出た。
昨日は投稿出来ず、申し訳ありません。