あの人達は付き添い多数
明智光秀の子供達の順番や名前は明智系図を参考にしております。
天正十一月(1583年)六月十五日
近江屋 長浜城近く
「六三郎殿!お久しぶりです」
「明智様の嫡男の」
「元服して十兵衛光慶と名乗っております」
皆さんおはようございます。明智光秀の嫡男の十兵衛殿と、13年ぶりに再会しました柴田六三郎です
まあ、流れ的に近江国に来た理由は分かるんです。だって、十兵衛殿の後ろに歳頃の娘さんが居るんですから、俺の正室の座を狙っているんでしょう
ですが、今までと少しばかり違うんです。これは十兵衛殿に聞かないと
「え〜と、十兵衛殿?此度は近江国にどの様な所用で?」
「六三郎殿。前田様と佐々様の姫君達が此方に到着している事は知っております。距離の問題で少しばかり遅くなりましたが、拙者の姉で三女の花江姉上を、
六三郎殿の正室に推挙する様、父上から文が届けられました。そして、より本気である事を示す為に、母上と祖母様も連れて来ました。お父上の柴田様より、
北陸地方の征圧が終わってから正室の事は考えると言われているので、先ずは妹の為人を知っていただきたいと思い、自己紹介に参りました。花江姉上、六三郎殿に挨拶を」
「初めまして!明智日向守の三女の花江と申します!此度は到着が遅くなりまして、申し訳ありませぬ!
父上からの文を見てもらえと言われておりますので、こちらを」
「分かりました。では。(六三郎殿!娘達が遅くなって申し訳ない!殿から柴田殿へ書いて送って来た文の中に徳川様の姫君と破談になったと書いていたので、
前田殿も佐々殿も拙者も、六三郎殿の正室の座を娘が手に入れられる可能性があると考えたら、居ても立っても居られない気持ちになった!
お役目で忙しいと思うが、少しだけ花江と会話をする時間があれば話をしてくれ!ちなみにじゃが、
倅の十兵衛と共に花江の付き添いとして、嫁の凞子と、拙者の母上も一緒に居ると思うが、
それだけ本気だと分かっていただきたい!花江は凞子に似て、見目は悪くないと思うぞ?)」
明智光秀は先の2人以上の本気度で俺の正室の座を狙いに来たのか。これは重い!重過ぎる!しかも、三女と言ってたけど、つまり花江さんは史実だと、殿の若い頃に家督争いで敗れた弟の織田信勝の息子の、
津田信澄の嫁になってた女性か!茶々や初より歳上だから、そこは輝子さんと同じく安心だけど、俺は少しも働かない女の人は嫌なんだよなあ
むしろ、俺以上にお袋が嫌がると思うんだよねえ。それこそ、茶々や初が嫁入りするまでの間、短期間でも同居したら、うん。間違いなく、「兄上の正室なら、兄上の内政の手伝いをしろ!」とか、
「長刀を半刻も振る事が出来ないのでは、兄上の正室に相応しくありません!」みたいな嫁イビリするとしか思えない。
それこそお袋は「あなたは三十歳を超えても子を産むのですよ!私が三十三歳で、羽柴筑前の正室が三十六歳で産めたのですから、出来ないわけありませんよね!?」と言って来そうだし
どうしようかな〜と考えていたら、付き添いの大物2人のうちの1人の凞子さんが
「柴田六三郎殿。文の中にも書いてあると思いますが、自己紹介します。明智日向守の嫁の凞子です
此度、いきなり押しかけて申し訳ありません。ですが、花江の妹で四女の珠も細川家に嫁いで幸せに暮らしておりますので、
花江にも同じく良き殿方に嫁いで幸せに暮らして欲しいのです。先ずは、花江の為人を知る事から始めていただけたらと存じます」
凞子さんがそう言った後に、
「柴田六三郎殿。私は明智日向守の母です。つまり十兵衛と花江の祖母にあたります深芳と申します。
息子はお父上の柴田殿とお役目で一緒になる事が多く、それで織田家に早い段階で馴染む事が出来たと言っておりました
そこで六三郎殿の話を柴田殿とよく話していて、常々、十兵衛と歳も同じくらいで、柴田殿に幼い頃に鍛えられた、言わば同士であると言っておりました
花江の事を少しずつ知っていって、最終的に私に曾孫を抱かせていただけたらと思います」
重い重い!重過ぎますよ!何で皆さん、俺みたいな家臣の倅の正室の座を狙うの?親父の立場的な話か?
だとしたら、親父より織田家中の序列が高い、親戚じゃない佐久間殿の嫡男の方が良いと思うのですが?
しかも、この状況を前田家、佐々家の皆さんがガン見してる!明智家の後ろで、俺に見える位置に居るから余計に怖いです!
これは問題を先延ばしする形になるが、三家で先ず仲良くしてもらおう!俺は基本的に仕事がある!だから、1日をそれぞれの家の姫君とデートに使ったら、
3日も仕事をしない事になる!それだと、俺が仕事から開放される日が遠くなる!それはごめんだ!
よし決めたぞ!少しくらい働いてもらおう!
「明智家の後ろに控えている前田家、佐々家の方々!此方に来ていただけませぬか!」
俺の言葉に明智家は驚き、前田家と佐々家は嬉しそうな顔になる。全員集まった所で
「さて、三家の皆様に言っておきたい事があります!」
全員が期待の目で見ている。けど、心を鬼にして
「拙者は少しも働かない女子を嫁にする気はありませぬ!なので、たとえ微々たる事、それこそ今暮らしている場所を他の人と協力して掃除したり、
内政の帳簿を順序よく並べたり等、年齢が若い女子でも出来る事もやらない、やりたくない女子は、実家に帰っていただいて構いませぬ!」
俺の言葉にいち早く反応したのが前田五郎兵衛さんで、
「ろ、六三郎殿!それはあまりにも摩阿に不利な条件では」
「五郎兵衛殿。拙者は、「他の人と協力して掃除したり」と、複数人でやっても構わないと言っております
それに、皆様も知っていると思われますが、拙者の今の母、つまり父上の再婚相手は殿の妹君です
その母や、羽柴筑前様の正室の寧々様も少しくらいは自ら掃除を行なっております。佐々様の正室の弓殿!
信濃国から武田に追われているところを拙者達に助けられた時、弓殿の兄達に弓殿姉妹の事を聞いた時に言った言葉は覚えておりますか?」
「はい。確か「儂の屋敷で女中の様に働けるか?儂の妹達に何かを教える事は出来るのか?儂の屋敷では
働かない幼子は、源四郎兄上の指導の元、理財を学ばせておる。何もしてない人間がいないぞ?ちゃんと働けないのであれば」でした」
「そのとおりじゃ!弓殿は妹の菫殿と雪殿と共に、儂と中山道にある美濃屋という旅籠で少しばかり働いた後、松姫様の側で働いていたから、この言葉の意味は
分かっているでしょう!柴田家では「働かざる者、学ばざる者食うべからず」と考えております
拙者の正室の座を狙うならば、その考えを理解していただきたい!」
「分かりました!私が、ただの世間知らずのおてんばではない事をお見せします」
「私も!得意ではありませんが、少しずつ六三郎様に気に入っていただけるなら」
「六三郎様も過ごした美濃国の屋敷で毎日、何かしらやっておりましたので自信あります!是非とも私を気に入っていただきましょう」
あ、これは「そんな事出来るか!」と帰ってもらうつもりだったのに、逆効果だった様だ。皆さんの気合が更に入ってしまった




