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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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閑話 若武者達の歓喜

天正九年(1581年)七月三十日

大和国 某所


場面は秀吉の子が産まれる5ヶ月前の大和国。信雄が引き起こした無駄な戦の事後処理を施工責任者として信忠が、その補佐として信孝が現場のひとつを見ている所から始まる


「三七、少しずつではあるが、確実に復興が進んでおるな」


「兄上。やはり人数が多いと出来る事が多いですな」


「まったくじゃ!特に、六三郎の家臣の赤備えの皆の働きたるや、屈強な身体だけでなく、頭も賢い。


身体の屈強さなら、虎之助や市兵衛も負けておらぬし、賢さなら佐吉と紀之介も同等じゃ。


孫六はどちらも良い塩梅の屈強さと賢さであるが、やはり、どちらも高水準で出来る赤備えの皆は凄いのう」


「はっはっは。兄上、赤備えの皆の中でも、六三郎と共に筑前の元に行ったうちの一人の、銀次郎は屈強な身体と整った顔のおかげで、


神戸家では特に人気がありましたぞ、やはり、この様な戦乱の世では屈強な身体の男は女子に人気があるのでしょうな」


「おいおい三七。お主目当ての女子もかなり多かったと聞くぞ?」


「兄上。拙者は店の中で、銀次郎達が連れて来た客を席に案内したり六三郎殿の料理を運ぶくらいしかしてないのですから、特に何もしてないですぞ?」


「はっはっは。まあ、そういう事にしておこう。さて、与太話もこれくらいにして、虎之助達を見に行くぞ」


「そうですな」


会話に一区切りつけた2人は、現場の進捗状況を見る為、作業場に降りる。作業場は3つに分けられて信忠の家臣達の作業場、信孝の家臣達の作業場、


そして六三郎の家臣の赤備えに清まる達5人湯を合わせた作業場となっていた。その中で2人は赤備え達が働いている作業場に来た


「「源太郎殿!」」


六三郎の作業場で、六三郎の代わりに作業場の監督をしていた源太郎に2人が声をかける


「勘九郎様!三七様!こちらの作業場に来るとは、何かこちらで不手際でも?」


「いや、進捗状況が気になってな」


「それと、筑前の家臣達が少しは明るくなっておるかもな」


「五人の事なら、そうですな。市兵衛殿、虎之助殿、孫六殿はしっかり馴染んでおります。佐吉殿は一日でも早く終われば羽柴様の元へ帰る事か出来るからと、


鬼気迫る働きを見せております。紀之介殿は四人のやり残しを補佐する形で働いております。若様を見て来たからそう思うのですが。比較的常識の範囲内の若武者に見えます」


「はっはっは。あの個性豊かな五人も六三郎と比較したら常識の範囲内か。どれだけ六三郎は常識外れなのじゃろうな!」


「兄上。六三郎殿の常識外れな行動は、皆に利益と幸福をもたらすのですから、どんどんやってもらいましょう」


「それもそうじゃな!そうでなければ、権六の嫡男という、それなりの立場なのに、彼方此方に働きに行くなどありえぬからな」


「三七。六三郎を更に働かせようと思っておるのが顔に出ておるぞ」


「おっと。これは失礼」


「はっはっは。まあ、筑前が五人に見せていた明るい人柄が、本来の筑前であると儂も信じたい。むしろ、儂以上に父上が信じたいはずじゃ。だからこそ父上は


本人が指導をしたわけではないが、内蔵助が再び嫡男を抱く事が出来た事はある意味、六三郎の指導とも取れる。だからこそ父上は六三郎に可能性を見出した筑前の元に


六三郎本人を行かせたのじゃろう。六三郎の事じゃ。筑前が正室や側室を妊娠させる前の段階の事から説明しておるじゃろうな」


「それは有り得ますな。六三郎殿は、一気呵成に成果を求めず、じわじわと布石をするので、気づいた時には既に相手はどうしようも出来ない状況になっておりますからな」


「三七が内政で三介に勝った様にか?」


「はっはっは。兄上、その件もありますが、やはり分かりやすい話で言うならば、三河国での武田との戦でしょう。聞いた話では源太郎殿率いる赤備え達に


砦を徹底的に攻撃させて、武田を炙り出したら、鎧袖一触の如く、武田の兵達を全滅させて、その後更に砦を攻撃して壊滅させたそうですからな」


「源太郎!その話は儂も聞いたが、見事な働きであったな」


「勘九郎様、三七様。あの戦は若様が拙者に対し「一々自分に命令を聞きに来ては好機を逃すかもしれぬから、采を託す!源太郎の采で皆と共に暴れて来い!」と言われたのです。


しかも若様は、自身の武功とは言わずに、赤備え全員の武功であると、我々に最大限のお褒めの言葉をかけてくださいました。その様なお人だからこそ、我々赤備え全員、若様に着いていきたいと思うのです」


「誠に出来た主君じゃな六三郎は。三介に爪先程度でも、六三郎くらいの思慮があればと思うのう」


「まあまあ兄上。父上が三介兄上を切腹させないのは、この事で少しは変わる事を期待しての事だと思いますし」


「少しは変わって欲しいのじゃが、三介だからのう」


源太郎の元で5人の事を聞いたりしていた信忠と信孝の元に、文を持った家臣が現れ、信忠に文を渡す


「父上からの文とは珍しい。復興の進捗状況は五日に一度の間隔で伝えておるのじゃが、どれ」


少し疑問を持ちながら信忠は文を開いて読む。すると、


「あっはっはっは!な、な、何と!」


と、父の信長と同じ様に大笑いした。不思議に思っている信孝に、


「いやあ、済まんな三七。文の内容が見事過ぎて、思わず笑ってしまった。お主も読んでみよ。笑うか驚くぞ!」


「では」


信孝はそう言いながら、文を受け取り読みだす。すると、


「はっはっは!兄上!確かに、これは笑いますな!」


「そうじゃろうそうじゃろう!だが、この文は当人達に知らせるのは、今日の作業が終わってからじゃ!


源太郎。今日の作業が終わった後、五人を儂の元へ連れて来てくれ」


「は、はあ」


源太郎はわけが分からないながらも了承した。そして、作業が終わって


「源太郎殿。これからどちらへ?」


「うむ。五人に是非とも見せたい物があると勘九郎様がな」


「勘九郎様の元へ行くのですか?我々は、何かやらかしましたでしょうか?」


「いや、何かやらかしたわけではない。そこは安心してくだされ」


質問攻めにあいながら、源太郎は五人を信忠の元へ連れて来た。そして、中に案内されると、


「さて!五人に伝えるべき文が、父上から届いた!読むから、しっかり聞いてくれ」


「「「「「は、はあ」」」」」


「では。「勘九郎へ。この文の内容を筑前の家臣五人に絶対に伝えよ!現在、大和国東部の復興作業にあたっている皆なら分かるであろうが、弥生に入ってから


六三郎を筑前や女房達が子を授かる可能性を高める為の指導役として長浜城へ派遣したが、六三郎め!


見事に大役を成し遂げた!なんと、筑前の正室の寧々がやや子を授かった!この文が届いている頃には、


三ヶ月か四ヶ月になるであろう。予定通りに育てば来年の陸月か如月に産まれるはずじゃ!


だが、寧々の歳は市と同じで今年で三十六歳じゃ。筑前曰く、医者から「歳若い女子の何倍も気をつけないといけない」と言われておるそうじゃ


そこで筑前から産婆を始めとした、出産を助ける者達の派遣要請があったので、派遣したが、五人には


更に役目に励んでもらおうと思って文を書いた!必ず

五人に伝えよ!そして、遠い大和国から寧々の安産祈願をやる事を忘れるな!と伝えておく様に」との事じゃ。他に聞きた、嬉し過ぎて言葉も出ぬか」


信忠の言葉も聞こえない程、5人は


「お袋様が!誠に、誠に!」


「六三郎殿!ありがとう!どれ程、感謝をしても足りませぬ!」


「これで!これで!殿が、元の殿に変わるはず!」


「ううう!殿!お袋様!」


「きっと!お袋様は無事に若君を産んでくださるはずじゃ!」


それぞれ思いの丈と共に泣いていた。その様子に信忠は


「昼にも三七と話していたが、やはり六三郎は常識外れな事をやって、皆に幸福をもたらすのう。改めて、六三郎は不思議な若武者じゃ!のう、源太郎?」


「確かに不思議なお方です。それでも、胸を張って立派な主君であると思っております」


「確かに、立派な主君じゃ」


嬉し泣きをしている5人を他所に、信忠に六三郎を褒められた源太郎の顔は誇らしげだった。

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