話を聞いた主君は何を思う
バレンタインの時に200話到達だったのに、書きまくったら300話になりました。
天正八年(1580年)八月二十八日
山城国 洛中
「六三郎殿!父上から新しい文が届いたぞ!」
皆さんおはようございます。今日も伊勢茶屋神戸家で働いております柴田六三郎です。近いうちに、殿がウナギ料理を食べに来るのですが、
もしかしたら予定が確定したかもしれない文が届いたので、戦々恐々としております。で、店か営業終了しまして、
「それでは六三郎殿。文を読むぞ。「三七へ。店の方は順調か?まあ、悪知恵の働く六三郎が一緒なのだから、しっかりと儲けておると思うが、油断するでないぞ
改めて本題じゃが、店には来月の一日に行く!そして、前もって伝えておくが、儂以外に近衛殿と顕如殿も店に行く事になった。だから済まぬが、その日は貸切にしてくれ!勿論、銭は支払う。済まぬが、よろしく頼む!」との事なのだが、六三郎殿?
これは、朝から全員で働かないと駄目であろうな。それに貸切の日の事は、今日から貼紙で知らせておかぬとならぬな」
「はい。食材も多めに準備しておかないといけませぬから、いつもより早めに準備に取りかかりたいと思います」
天正八年(1580年)九月一日
山城国 洛中
「三七!六三郎!今日は美味い物を頼むぞ!」
「「ははっ」」
皆さんおはようございます。遂に殿を始めとしたお偉方が神戸家にやって来まして、緊張感倍増の柴田六三郎です
数年前に料理で戦った時の件もあったので、顕如殿に獣肉を出さない方が良いか確認したら、「此度の様なお誘いの場で食べる獣肉は頂戴しないと失礼にあたるので、出してください」との事なので、
遠慮なく腹一杯になってもらおうと、ウナギは勿論、猪カツとかの腹に溜まるものを出していこう!デザートも色々出そうじゃないか!
先ずはウナギの白焼きを出したら
「これが、あの宇治丸とは思えぬ!何とも柔らかく、しかし歯応えも残しておる。塩を少し付けたら、更に美味い!」
「四十年生きていても、まだまだ知らない美味いものがありますなあ」
「魚を焼く前に蒸すとは、一手間かけるだけで美味くなるのですから、美味い料理は簡単には作れないのですなあ」
と、殿、近衛様、顕如殿と色々な感想が出ております。そこから蒲焼き、う巻き、お吸物、猪カツ、エビフライ、鳥の唐揚げを出して、
近衛様リクエストの枝豆の塩茹でを、殿のリクエストのハンバーグを出しまして、デザートを最期に出したのですが、
「何と分厚い」
「これは豪勢な」
「味の変化も素晴らしい」
と、喜んでもらえているメニューは、パンケーキです。戦国時代版なので、以前作ったお好み焼きと作り方は一緒ですが、
味の変化として、粒あんと漉しあん、大豆を胡麻スリで擦りまくったきな粉クリーム、最期の一押しで枝豆を茹でて擦って作ったうぐいす餡をそれぞれ小皿にのせた状態で出しまして、
殿は
「やはり粒を残したものは美味い!」
と、粒あんがお気に入りで、近衛様は
「漉したものと大豆から作った甘い汁、どちらも甲乙つけ難し」
と、漉し餡ときな粉クリームが気に入った様で、顕如殿は
「誠にうぐいすの様な鮮やかさと優しい甘み。これぞ、僧侶が食べても許される数少ない甘味!」
と、うぐいす餡が気に入った様です。3人共、満足した様でお開きになる空気のところ、殿が
「そうじゃ。前の文で言っておった新たな官位じゃが、儂が正三位内大臣、勘九郎が従四位上左近衛中将、三十郎が正五位下右近衛少将、
それから本願寺との戦を平和的に終わらせた佐久間が従五位下摂津守、他にも複数人居るが最期に六三郎!親父の権六は従五位下越前守に叙任されたぞ!
これから越前国で何かやる時は、儂に聞かずに国司の権六の了承を得てやれば良い。もっとも、お主の事だから権六に聞かずに色々やってそうじゃがな」
「その時は父上に一応、聞いてみます」
「はっはっは!そうじゃな、一応聞いてみよ。さて、それでは儂達は帰るぞ!銭は」
と、殿が支払いの準備をしている時に、
「父上。父上に相談したい事が」
三七様が殿に話した。三七様の雰囲気に殿も只事ではない事を感じた様で
「三七。近衛殿と顕如殿を送ってから、話は聞く。しばし待っておれ。銭は一貫半置いておく」
と、2人を屋敷に送って、早めに戻って来て
「さて三七よ。どの様な内容じゃ?」
と、前置き無しに聞いて来たので、三七様も
「実は、この者達を二ヶ月前に保護したのですが」
と、市兵衛達を紹介して、虎之助の説明と秀長さんからの書状を見せると、
「確かにこれは、三七や六三郎では対処出来ぬ!だが、具体的に織田家に被害を及ぼす行為を起こしておらぬ筑前を処分出来ぬ!
市兵衛、虎之助、孫六、紀之介!お主達は主君である筑前にどうなって欲しい?忌憚なく意見を申せ!」
と、4人に聞いて来た。4人の答えは一致していた様で
「我々としては、以前の様に、好色であっても執着しない、周りを明るくしてくれる殿に戻って欲しいのです。お子が簡単に出来ない事は、我々がどうこう言えませぬ!
ですが、だからと言って、他家の親と子を権力を使って離れ離れにするなど、武士ではなく野盗のやる事です!殿が己の欲望の為だけに動くお人になったのならば、我々が憧れ、お支えしたいと心の底から思った殿ではなくなったと諦めます」
「虎之助の言葉が総意と見てよいのじゃな?今すぐに何か出来るわけではないが、この事は儂が預かる
四人は引き続き、この店で働いておけ。それから、ひな。赤子を二人も連れていてはまともに働けぬであろう、更には安全面も怪しい
儂が勘九郎に譲った岐阜城に連れて行くから、そこで赤子の世話をしながら女中として働け。その方が安全であろう。紀之介!母上と離れても大丈夫か?」
「はい!拙者も元服したのですから、母上と常に一緒に居ては情けない武士になってしまいますので、
大殿と勘九郎様に母上の安全をお願いしたいと思います」
「うむ。六三郎という特殊な若武者ばかり見ていたが、紀之介の様な若武者が普通じゃ。だが、気に入った!母のひなと小一郎から託された双子の事は織田家に任せよ」
「ははっ」
なんだかんだで、殿預かりになって一安心です。でも、勘九郎様に岐阜城を譲ったとなると、殿の居城は何処に有るんだ?
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