起こりうる未来を話す
「先ずは、田畑に撒く為の土を用意します。その土に、肥や枯葉や料理で余った野菜の切れ端等を入れて混ぜまして、天道に二十日程あてましたら、
田畑の土に撒いて、しっかりと混ぜ合わせてくだされ!そこから苗木を植えて、苗木が一尺半くらいの高さに成長したら、
余分な葉を摘み、滋養を行かせたい葉だけにするのです。そして、そのうちの一部の苗木は日の光を浴びせない様に上の部分に何かしらを被せてくだされ
そうすれば、回収した後、美味い茶が出来て、京、堺、熱田で高値で売れるでしょう」
「ほう。土作りから始めるにしても、直ぐには植えないだけでなく、植えた後も細かい気配りが必要とは、難儀な茶であるが、
そのおかげで美味い茶になり、京、堺、熱田で売れておるわけなのだからな」
「はい。三河国の米作りも、土作りから始めて、生産量が上がったのですから、結果は出ております」
「うむ。皆、聞いたとおりじゃ!今から、全ての田畑に滋養豊富な土を作る事から始めよ!」
「「「ははっ!」」」
俺達の周りにいつの間にか家臣の皆さんが居た様で、城戸殿の命令を聞くと、返事の声と草が揺れる音が一瞬聞こえたけど、まったく存在が分からなかったよ。やっぱり忍者って凄いですね
で、教える事を教えたので本題に入りますか
「城戸殿。先程話しておりました事を、お話したいので」
「うむ。儂と倅と娘、柴田殿と家臣二人だけの方が良さそうじゃな。大広間で聞こうではないか」
と言う事で大広間に移動しまして、
「さて、柴田殿。重要な話なのだろう?どの様な話じゃ?」
「はい。その前に、源太郎!喜三郎!」
「「は、はい」」
「今から話す内容は他言無用じゃ!父上にも母上にも伝えてはならぬ!赤備えの皆にも、源太郎に至っては嫁や子にも伝えてはならぬ!守れるか?」
「勿論でございます!」
「墓場まで持っていきます!」
「うむ!お主達の言葉を信じるぞ!城戸殿、それでは改めてお話させていただきますが、前日も話しましたとおり、織田家は天下統一に向かっております
現状、畿内は完全に制圧し手中に収めております。これからは、東海の徳川家と共に武田を殲滅に動きます
それと同時進行で、中国地方と北陸地方を制圧する為の軍勢を派遣しております。中国地方が終われば、四国と九州を、北陸地方が終われば奥州を、
武田の後には関東の北条を制圧する為の軍勢を派遣するでしょう。ですが、ここで危険な要因が1つ出て来ます。城戸殿ならば分かりますな?」
「各地方へ軍勢を派遣した結果、畿内を抑える軍勢が足りぬな。更に言うならば、織田殿の身辺が薄くなる」
「流石でございます。拙者はその事で、考えられる最悪な状況は、織田家当主の右近衛大将様と後継者の勘九郎様が両者共討死してしまう事にございます
それを防ぐ為に、拙者は織田家へ謀反を考えている者を見つける、もしくはその者の行動を抑える為に情報網を作りたいのです!そこで城戸殿にお願いがあります」
「どの様な内容じゃ?」
「城戸殿の家臣の方のうち、情報収集が得意な者と早く動ける者を拙者に5年限定で仕えさせていただきたく」
「いやいや、柴田殿?その様な話は俄かには信じられないのだが、誠に謀反が起こると予測しておるのか?」
「あくまで可能性の話です。織田家中において、働けど働けど、褒美や領地に不満がある者はどうしても出て来ます。その者が右近衛大将様と勘九郎様を
亡き者にする機会を、ひいては織田家が治めつつある天下を我が物にしようと考える者が居ないとは思わずに、情報収集が出来る者が内部に潜り混んだ方が
謀反の芽を摘む事が出来るのですから、戦乱の世が終わる迄は、戦の芽を摘むに越した事はないのです
それに、城戸家を召し抱えたいとかではなく、5年限定で、一部の方を貸していただきたいだけなのです」
と、俺は平伏して頼み込む。源太郎と喜三郎も同じ形で頼み込む
それを見た城戸殿は
「気持ちは分からんでもないが」
と悩んでいる。そこに
「父上。私が一部の者を連れて行きたいと思います」
雷花姫が名乗り出ると、
「いやいや、雷花よ。お主は」
「父上。鷹三郎は元服しており、父上の補佐が有るとはいえ、領地の差配も出来ております。私が居たら、
要らぬ対立が生まれます。なので、柴田殿の求める役目をする為に、柴田殿の領地に行きたいのです」
「まったく。こうと決めたら一直線なのは、昔から変わらぬな。良かろう!来年からと言わず、今日から柴田殿の期間限定の家臣として、働いて来い!」
あれ。予想してた形と違う形で、話がまとまっていますが良いの、かな?ま、まあとりあえずは
「城戸殿、そして雷花姫。拙者の無理難題を聞いていただき、忝い」
「柴田殿、いえ、六三郎様!これからは期間限定と言えど。家臣として仕えるのですから、姫など付けずに「雷花」とお呼びください」
「分かった。では、雷花。これから頼むぞ」
「はい」
「そう言う事になったが、源太郎と喜三郎!領地に戻ったら、儂が母上に誤魔化しながら話す。二人は何も言わないでくれ」
「「ははっ」」
「さて、それでは明日の朝に出立しますので、城戸殿。今日一日休ませていただいてもよろしいですかな?」
「そうじゃな。じっくり休んで、これからの大仕事に励んでくれ」
「ありがたき」
これで、本能寺の変が起きない様に動く事も、起きた後の素早い情報収集もどうにか出来そうだな。とりあえず、休ませてもらおう!




