表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
291/617

メリットとデメリットを伝えてこそ交渉

「では、城戸殿。前置き無しに話をさせていただくが、此度、城戸殿の領地に来た理由は今年年内だけでも構わぬので、


北伊勢の一部を治めております、神戸家に協力していただきたいのです」


「柴田殿。その協力とは、南伊勢の殆どを領地としている北畠家との争いに勝利する為の協力の事じゃな?」


「話が早くて助かります。城戸殿も知っていると思われますが、神戸家も北畠家も現在の当主は、織田右近衛大将の実子でございます。本来ならば手と手を合わせ、


互いに協力しながら伊勢国を発展させるべき所を、いがみ合っており、それを危惧した右近衛大将より


「協力出来ないのならば、来年の霜月までに内政で儲けを多く出した者に伊勢国を丸々一国与える!これからの世の為に、戦ではなく内政で争え!」


と命令されまして、拙者は神戸家に与力として協力しております。現在のところ、前年の長月から今年の弥生までの儲けとして、北畠家が二百貫、神戸家が五百貫の儲けを出しており、


神戸家が勝っているのですが、神戸家の領地は北畠家の領地と比べて、圧倒的に小さいのです


このままでは、最終的に負けてしまう可能性もあるからこそ、城戸殿の領地の儲けを年内限定で神戸家の儲けとして足していただきたいのです」


俺がそこまで説明すると、


「はっはっは!柴田殿は何とも無茶苦茶な事を言うものじゃな。何故、伊勢国の統治者を決める争いに、


儂達伊賀国の者が協力しないといけないのじゃ?その様な事は、伊勢国の者同士だけで決めたら良かろう!」


うん。確かに城戸さんの言うとおりだよ。伊勢国の事は伊勢国の人間が決める事か正解なんだけどさ、


このまま時が進んだら、史実で起きた天正伊賀の乱が起きて、俺も巻き込まれる可能性が高い!


その天正伊賀の乱を起こしたのは、アホボンなんだから、何とか戦が起きない様に回避したいんだよ!


「城戸殿。仰る事はごもっともですが、城戸殿の領地、いえ!伊賀国全土で起きる可能性の高い、


最悪な戦を避ける為に、拙者は城戸殿へ話を持って来たのです。その話を聞かずに判断を決めてしまうのは、早計ではありませぬか?」


「貴様!殿を愚弄するか」


俺の言葉に霧丸が刀を抜こうとするけど、城戸殿が止める


「待て!柴田殿。貴殿が言う最悪な戦とは何じゃ?」


圧をかけて来ましたね。もっとも、殿や親父に比べたら大した事ないけど


「今からお話します。先程、話しました伊勢国の統治者を決める争いですが、万が一、北畠家が勝ちましたら、その「最悪な戦」が起きると見てよいでしょう


何故なら、北畠家の当主である北畠三介は短慮であり、自分で自分の事を有能だと思っている暗愚です


それなのにも関わらず、自分より立場が下だと決めた者が居たら服従させる為に、戦も辞さない男です


その北畠三介が伊勢国の統治者になったならば、最初にやる事は、自分に従わない者達を見せしめの為に


言いがかりをつけた後に、皆殺しにするでしょう。間違いなく。そして、自分で自分の事を有能だと思っているからこそ、


「次は伊賀国を平定する」と勝手に思って、戦を仕掛けてくるでしょう」


「はっ!何を言うかと思えば。北畠の軍勢なんぞ、伊賀国の者達ならば、一蹴出来る!それが最悪な戦だと申すのならば」


「戦が一回で終わるとお思いですか?」


俺の言葉に城戸さんの目つきが変わる


「どういう意味じゃ?まさか、北畠三介とやらは暗愚だから、何度も戦を仕掛けて来ると申すのか?それならば、何度も撃退すれば良いではないか!」


「城戸殿。拙者は先程言いましたぞ?神戸家も北畠家も当主は織田右近衛大将の実子であると、


我が子の不甲斐なさに怒りを覚えても、これ幸いと見て、伊賀国平定の大義名分として、動かせる軍勢の全てを伊賀国へぶつけますぞ


それこそ、一万や二万では収まらぬ軍勢が、伊賀国へ攻め込むのです。その中には、同盟相手である徳川家も含まれるでしょう


織田家と徳川家、両方の軍勢を合わせたら十万は居ると見て良いでしょう。拙者は伊賀国の戦に出陣する方々がどれだけ居るのか、分かりませぬが、


もしも、伊賀国が戦場になった時、何処の家の誰が伊賀国の者達をまとめるのですか?そもそも、織田家と徳川家の軍勢に勝てる見込みはあるのですか?」


「この!黙っていたら」


霧丸が俺に刀を振り下ろそうとするけど、


「やめんか!!」


「と、殿。しかし」


「刀を納めよ。柴田殿。家臣が済まぬ。だが、そこまで言うのであれば、神戸家の当主はどうなのじゃ?


北畠三介とやらと同じ織田右近衛大将の実子なのだろう?ならば、同じ様な性格ではないのか?」


「城戸殿。神戸三七様は、北畠三介とは真逆の性格ですぞ。その証拠に自らの領地の小ささを自覚しており、


戦でも内政でも普通に戦ったら、北畠家に負ける事を分かっておりますし、拙者の様な自身より8歳も下の者の意見を聞く事が出来る上に、出来るかぎり熟慮し、


無駄な戦を仕掛けない人物です。此度、城戸殿との交渉も、「出来るかぎり穏便に、無理強いをしてはならぬ」と仰っておりました


更に申すならば、自らも家臣の方々と共に働くお人ですぞ。城戸殿が拙者からもらって飲んだ茶ですが、


京の洛中で神戸家が営んでおります茶屋で出しており、その茶屋で神戸三七様は自らも働いておるのですから


偉そうに上から「あれをやれ」や「これをやれ」とは基本的に言いませぬ。その様な性格のお人が、伊勢国の太守になれば、


伊賀国も安全であると同時に、やがて来る織田家による天下統一の際に上手く取りなしてくれるはずです」


「うーむ」


俺のプレゼンに城戸殿は悩みに悩む。さあて、多少の条件を付けても良いと三七様は言ってたけど、城戸陸奥守、どんな答えを出す?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ