あの計画を始めましょう
天正八年(1580年)四月二十日
山城国 洛中
「皆!中間報告では北畠家に倍以上の差をつけておったぞ!これも皆の働きの賜物じゃ!誠に感謝する!」
皆さんおはようございます。朝から三七様より感謝の言葉をもらっております、柴田六三郎です
岐阜城から帰って来た三七様から両家の中間報告を聞いたのですが、北畠家が二百貫、円に直すとおよそ3億円の利益を出して、神戸家が五百貫、円に直すと7億5千万円の利益を出したと判明したのですが、
その場で三七様が利益を出したカラクリの1つ、
「周りの家に協力してもらう」を話したそうなので、
同じ事を北畠家が南伊勢でやらないとも限らないから、そろそろ三七様に話していた計画の「伊賀国の一部を巻き込む」を実行しようと思います
ただ、アホボンがこの結果にブチギレて、神戸家に攻撃を仕掛けて来る可能性もある。だからこそ、銀次郎達は俺の護衛につけられないから
仕方ない。また村井様経由で赤備えの誰かしらを寄越してもらおう
「三七様。おめでとうございます。ですが、手の内の1つを明かしたとならば、相手も同じ事をやる可能性も高いかと。そこで、以前話した計画を始めたいのですが」
「六三郎殿。その話は店を閉めてから話そう」
と三七様が言っているので、いつもどおりの営業をやりまして、終了してから
「六三郎殿。以前話した計画とは、伊賀国の一部を巻き込む事か?」
「はい。いくら北畠家が南伊勢で諸家の儲けを足しても、伊賀国の一部の家の儲けを神戸家に足すという悪知恵を出す者は恐らく居ないはずです
しかし、その場に三七様が居ては、三介様がいちゃもんを間違いなくつけてくるでしょう。最悪の場合、軍勢をぶつけてくるかもしれませぬ
なので、拙者が一部の護衛を連れて交渉に向かいますので、三七様は領地に戻るまで、店で働いていただきたく」
「六三郎殿に無理をさせてばかりで済まぬ」
「いえ。それでは、村井様へ文を渡して越前国の領地から家臣を寄越していただきたいと思います」
と、いうことで話は終わりまして、翌日に文を村井様に渡しまして
天正八年(1580年)五月五日
山城国 洛中
「若様!久方ぶりに若様の護衛という大役を務めさせていただく事、感無量にございます!」
「拙者も微力ながら、若様の護衛を務めさせていただきます」
護衛に寄越されたのは源太郎と喜三郎でした。まあ、領地には源次郎が居るからまとめ役は大丈夫と判断したんだろうな。
で、喜三郎も何だかんだで護衛は出来るから良いか。改めてだけど、三七様と銀次郎達には説明しておくか
その日の営業終了後、
「三七様を始めとした神戸家の皆様、そして銀次郎達、源太郎と喜三郎が神戸家に居る理由を話すので、
しっかりと聞いていただきたい。先ず、明日の早朝、拙者と源太郎と喜三郎は神戸家を出立する
行先は伊賀国の東端、神戸家の領地に近い所。と、だけ言っておく。そこに儂が神戸家の者としてある事を交渉してくる。源太郎と喜三郎は護衛じゃ」
この説明に銀次郎が
「お待ち下さい若様!護衛ならば拙者も同行します」
と言ったのをきっかけに
「「「「「拙者も同じく!」」」」」
と新左衛門達も護衛につくと言ってきたけど、
「ならぬ!!」
と、諫めたけど、
「な、何故ですか?」
と銀次郎は聞いてくるので、俺は表向きと裏向きの理由を話す
「銀次郎、それに皆。お主達がやる御案内は、今や神戸家の名物になっておる!それを目当てに来る客が居るのだから、お主達を店から外す事は出来ぬ!
表向きの理由としては、儲けを増やす為である。だが、裏向きの理由としては、お主達が店に居ないと最悪な事が起きる可能性が有るからじゃ」
「若様。最悪な事とは?」
「銀次郎、庄左衛門、三四郎。お主達3人は最初から話を聞いているから、今は新左衛門、新九郎、金之助。お主達3人に今までの流れを説明する」
と言う事で、3人にこれまでの事を説明しますと、新左衛門が
「若様。成り行きは分かりました。ですが、それならば我々全員が店に残らなくても良いのでは」
「新左衛門。三七様は、三介様との争いの中間報告で倍以上の差をつけておる。もしも三介様が神戸家の存在に気づいて、
狼藉者をぶつけて来た場合、お主達が居なかったら誰が対処出来る?茶屋という形を取っている以上、
武器は店の奥に有るが、お主達全員居なくなっては、神戸家の方々しか戦える者が居ない事になる。
最悪の場合、三七様が殺されてしまうかもしれぬ!その様な事をさせない為にも、お主達6人は店に残り、万が一に備えてくれ」
俺がそこまで言うと、
「分かりました」
「若様の護衛は諦めます」
「何卒、ご無事で」
「源太郎殿!若様を頼むぞ」
「喜三郎!若様の事、命に変えても守れ!」
「早い御帰還をお待ちしております」
うん。6人共、納得してくれた。じゃあ三七様にも
「三七様。先程家臣達に話していた事が起きた場合、雪達が逃げ込む場所は何処が良いでしょうか?」
「村井殿の奉行所が良いじゃろうな。あそこならば手勢も居るし、雪達の顔も知っておるから、もしも神戸家が攻撃されたなら、早く動いてくれる筈じゃ」
「三七様。失礼を承知で、神戸家が攻撃されたならば女子達を奉行所へ連れて行ってもらえませぬか?」
「それくらいやらないでどうする。だが、六三郎殿。儂としては、神戸家が壊されたとしても六三郎殿の家臣の誰かしらが、この様な戦でも無い、
織田家の兄弟間の勢力争いで死ぬなど、あってはならぬと思っておる。だからこそ、神戸家に攻撃する者達が数百人居た場合は、全員を避難させたい」
「三七様。分かりました。何も無い事が1番ですが、そうなった時は、お願いします」
「うむ。六三郎殿も、伊賀国の一部とは言え交渉の大役を担わせて済まぬな。だが、役目を果たせる様に祈っておく」
「ははっ。では、明日の出立の為に、先に眠らせていただきます」
「うむ。じっくり眠ってくれ」
こうして、銀次郎達6人を店に残す事になったけど、余計な事は起きないでくれよ?とりあえず、明日の為に寝よう!