あの親子に来てもらうと
天正八年(1580年)一月十日
山城国 洛中にて
「それでは六三郎殿!領地に行ってくる!新しい嫁の菫の顔見せと、収支の確認をしてくる。父上への中間報告までに帳簿をまとめて、戻ってくるから、その間、神戸家の事は任せたぞ!」
「はい。三七様と菫姫もお気をつけて」
「六三郎様。姫だなんて恥ずかしいです」
「六三郎殿、菫もそう言っておるから、以前の様に接してやってくれ」
「では。菫、弓とお主が嫁入りした事は、儂から源四郎達に伝えておく。なので、神戸家の皆様に三七様の新しい嫁として挨拶して来い!」
「はい」
「では、そろそろ参るが、六三郎殿。領地に戻った儂に何かやって欲しい事はあるか?」
「そうですな。申し訳ないのですが、甚五郎殿の領地の北の方にある領地の1つの領主を務めておられる遠藤喜太郎殿と、その家族を神戸家に手伝いに来る様にしていただきたいのですが」
「分かった。やってみよう。それでは、しばらく頼むぞ」
皆さんおはようございます。三七様と菫の新婚夫婦を送り出しました、柴田六三郎です
前年に殿が関係者を連れて店に茶を飲みに来て、三七様が「とりあえず一回、領地に帰れ!」と言われて、
じゃあ、新しい嫁の菫も連れて行こう!となったのですが、菫は料理も出来るし、顔も美人なので、評判も良いから、店的に戦力ダウンだけど、
三七様にお願いした遠藤親子が来てくれたら、菫の穴も埋められるはず!お袋さんの吉乃さんは美女だった、見てないけど妹ちゃんも美少女の可能性が高い
喜太郎は、銀次郎達みたいな筋肉は無いから多くは期待出来ないけど、何か出来るはず。だよな?
とりあえず、今日も営業開始だ!儲けを出すぞー!
天正八年(1580年)二月十五日
山城国 洛中にて
「あの、六三郎様?我々家族はどの様な事をしたら良いのですか?」
皆さんおはようございます。三七様にお願いしていた遠藤親子が神戸家に働きに来てくれました
まず、母親の吉乃さんなんですが、年齢が30歳と大人だから当然と言えば当然なのですが、数え年で16の俺でも分かる程、色気がムンムンなんです
そのおかげと言ってはなんですが、周囲のオジサン達が店に来る様になりまして、吉乃さんにデレデレしながら、鼻の下を伸ばして酒を飲んでおります
そんな吉乃さんの娘、喜太郎の妹ちゃんなんですが、
名前は「藤乃」ちゃんと言うのですが、
小谷城の落城を経験しているから、喜太郎より年下でも十二、十三歳くらいだと思っていたら、まさかの九歳でした、つまり小谷城落城の1年前に産まれた子なのですから、
こんな子供を働かせるのもな〜、と思っていたら、
「私も働きます」と言って来たので、
簡単な料理運びをやってもらっておりましたら、その可愛らしさに雪を見に来た若者達にも気に入られて、
藤乃ちゃんが運びやすい品物の売上が増加しております。で、喜太郎ですが、銀次郎達目当てのお嬢さん方より、
少しお年を重ねた奥様方から何故か気に入られて、手を引きながら店に御案内しながら、店内で料理運びをしております
俺?俺は相変わらず、料理作りですよ。俺の事はいいじゃないですか。それよりもですよ、
実は、洛中の店から「銀次郎達を荷物運びに貸してくれないか?銭を多めに出すから!」と臨時バイトのお話がちょくちょく来ているのですが、
神戸家も人手が少ないので、貸し出す事は無理ですが、これはチャンスと思ったので、京に居て朝廷とのやり取りをしている村井様にお願いして、
越前国の親父に「赤備えのうちから、3名くらい送ってくれ!」と書いた文を送ってもらいましたら、
天正八年(1580年)三月一日
山城国 洛中にて
「「「若様!お待たせ致しました!我々は何をしたらよろしいでしょうか?」」」
と、送られて来たのは新左衛門と、横田新九郎勝成と、常田金之助勝正なのですが、
「新左衛門、新九郎、金之助。お主達は今から来る商人の店の荷物運びを手伝って来てくれ。それが終わったら、儂や銀次郎達が働いておる神戸家を手伝ってくれ」
「「「ははっ」」」
で、3件程の荷物運びのアルバイトを3人それぞれ終えまして、勿論バイト代はもらっておりますよ。
神戸家の元に戻って来たのですが、銀次郎達の御案内を見て、固まっていたのですが、その後すぐに新しい着物に着替えさせて、
「3人共、あれをやってもらうが、銀次郎達も最初は同じ様な感じであった。慣れじゃ慣れ。儂が女子達に声をかけから、その後は銀次郎達の様に、女子を姫君の様に抱き抱えて、店の中へ御案内して差し上げよ」
「「「は、はあ」」」
だいぶ強引に納得してもらうと、開店初日の様に、道行くお嬢さん方に声をかけて、お姫様抱っこのやり方を教えると、少しずつ慣れて来た様です
そうやって店の経営をしなから、三七様と菫も戻って来て、更にお客さんも増えて来て遂に、殿から
「弥生の末に、中間報告を行なう!期日に間に合う様に岐阜城へ来る様に、そして帳簿をまとめておけ!」
と、文が届きました。これは、前々月と前月の帳簿を三七様に見せまして
「六三郎殿!前々月は売上が十一貫で、支払いが三貫という事は、儲けが八貫か、素晴らしい!そして前月の売上が十五貫で、支払いが三貫と言う事は儲けが十二貫ではないか!見事な黒字を出してくれて、感謝する!」
「三七様。拙者ひとりでは、何も出来ませぬ。皆が頑張ってくれたからこそ、これだけの儲けが出たのです」
「自身ではなく、皆の働きであると。うむ、そうじゃな!皆、見事な働き感謝する!領地では幸田が甚五郎殿と協力して、帳簿をまとめておったが、見た事もない程の儲けであったぞ!
それに神戸家のこれまでの儲けを足したならば、きっと、いや北畠家に勝てる見込みも!うむ!これより岐阜城へ向かう!六三郎殿、引き続き神戸家の事を頼むぞ!」
と、気分良く岐阜城へ出立して行きました。アホボンの北畠家の領地は大きいから油断大敵だけど、ほんの少しの差で、勝っているんじゃかいかな?と期待しております




