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あの人達が来た!

この作品はフィクションです。史実とは違いますので、その点、ご理解ご了承ください。

天正七年(1579年)十一月三十日

山城国 洛中


「ささ、あや姫様。店へ御案内しましょう」


「銀次郎様。今日のお勧めは何ですか?」


「若様の作る料理は何もかも美味いのですが、拙者のお勧めは、焙じた茶と粒を残した小豆を挟んだパオンですな」


「今日は銀次郎様のお勧めをいただきます」


「それは有り難き。ですが、無理に食べ過ぎてはいけませぬぞ」


「食べられなかったら、銀次郎様が食べてください」


「その時はいただきましょう」


皆さんおはようございます。朝から洛中で伊勢茶屋神戸家の台所で働いております柴田六三郎です


営業開始してから二十五日経過したのですが、開店当初、客引きの為にやりました「お姫様抱っこによる御案内」が、京の洛中は勿論、周辺のお嬢様方にも広まっていったようで、


銀次郎、庄左衛門、三四郎の3人共に、1日平均で50人位はお姫様抱っこをやっております。それでも疲れないので、


戦と土木工事以外で赤備え達の筋肉が役立つ事に嬉し涙が止まりません。ですが、やっぱり女性の好みは千差万別でして、銀次郎達がお姫様抱っこで御案内しても、


店内で接客してる、三七様の顔や所作に見惚れるお嬢さんも居るわけですよ。本来なら三七様は、領地経営の為に北伊勢に戻った方が良いのですが、


本人が「せめて今年中は皆と働かせてくれ」と言っているので、とりあえず家老ポジションの幸田殿に文を送って、代理として働いてもらっている様です


まあ、俺が言うのも何ですが、堺と熱田にも同じ様な店を出すんだから、そろそろ他の人に任せた方が良い気がするのですが?


「若様!御注文でございます!」


「はい!ただいま!」


俺はこれから料理作りです!この感じだと、今年は洛中の店で手一杯かもしれないけど、次の店に関しては三七様と相談だな


天正七年(1579年)十二月十日

山城国 某所


六三郎達があくせく働きながら、茶屋を営業している頃、洛中近くでは、この時代の中心人物と、歴史的偉業を成し遂げた1人の武将が集まっていた


「年の瀬は何事も無く過ぎていきそうですな織田殿」


「そうですな近衛殿。洛中は勿論、畿内でも比較的情勢は落ち着いているので、織田家としては来年の春から日の本の統一を目指して、攻勢を強める予定ですぞ」


「はっはっは。いよいよ織田家が、それぞれの地方の制圧に動くわけですか。まあ、本願寺が戦を終える決断をした事により、動きやすくなったのですから当然と言えば当然ですか。のう、顕如殿」


「近衛殿も織田殿も、あまり攻めないでくだされ。信者を止められなかった拙僧の不徳の致すところではございますが、それでも此方の佐久間殿と茶を飲み交わしていくうちに、


拙僧は信者達に戦う事を進めるのではなく、心穏やかに過ごせる日々を進める事を思い出したのです


だからこそ、拙僧は本願寺の武装解除を宣言して、山城国へ本拠地を移転する事を決めたのです」


「だ、そうじゃ半介」


「拙者の茶好きが、顕如殿の心を温めたのか溶かしたのかは分かりませぬが、それでも戦が終わり、少なからず織田家の役に立てた事に安堵しております」


「はっはっは!半介よ!安堵するのはまだ早いぞ?先程も話していたが、来年の春から地方へ攻勢をかける上で、お主は中国の毛利相手の軍勢の総大将じゃ!


此度の様な幸運は、簡単には起きぬと思え。状況次第では、茶も飲めない程の忙しさになるぞ?」


「そうならない様に気を引き締めたいと思います」


「はっはっは!今のうちに鋭気を養っておけ。だが、儂も此度、近衛殿、顕如殿、そして半介が居るのだから、


紹介しておきたい茶屋があるので、そこで茶でも飲みながら、今後の話でもどうでしょうか?」


「何やら面白そうですな」


「織田殿が茶屋とは珍しい」


「殿が外で茶を嗜むとは」


「そこは儂の倅が、領地経営の一環として営んでおる店でな。近くにあるから一度は行こうと思っていたのだが、この様な機会に」


と、信長が言ったので、神戸家に本人達とそれぞれの護衛が大勢居る、ちょっとした行列で向かっていた


店が見える距離まで来ると、


「庄左衛門様!今日のお勧めは何ですか?」


「みよ姫様。今日は、若様が作る、伊勢国で採れた茶を使った甘味がお勧めですぞ」


「じゃあ、それをいただきます」


「かしこまりました。それでは、店へ御案内しましょう」


「雪ちゃん!塩味の雉肉を!」


「はーい!ただいま!」


「六三郎様!塩味の雉肉をお願いします!」


「若様!茶を使った甘味をお願いします!」


とても忙しく働いている面々が居た。店内では三七も当然働いているので、信長達には気づいていない


しかし、台所で働いている六三郎からは、織田木瓜の旗が見えたので、


(おい!待て待て待て!何で織田家の旗があるんだ?嫌な予感しかしないけど、三七様に伝えておこう!

この場合、怒られるなら三七様だろ?そうだよな?


俺が怒られるなんて、無いよな?うん、きっと無い!そんな予感がする!)


※六三郎の予感はフラグです


「三七様!外に、外に」


「六三郎殿。外と、は」


一気に三七の顔が硬直する。そして、カタコトで


「チチウエ、キョウ二イルノニ、セッシャノミセデチャヲノミニキテクダサルトハアリガタキ」


三七の挨拶を受けた後で信長は、


「三七よ。とりあえず、店が終わったら、儂と近衛殿と顕如殿と佐久間で茶を飲みながら、話をしようではないか」


冷静に低い声で話しながら、三七の肩に手を置いた

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