商売という戦の始まりと重要な戦の終わり
かなりのオリジナル展開を入れております。ご了承ください。
天正七年(1579年)九月十五日
伊勢国 神戸家屋敷にて
「殿!そして、六三郎殿。関殿と協力し、北伊勢の全ての家に協力していただける事になりました!」
「うむ!皆、よくぞ、この短期間で成し遂げてくれた!感謝する!」
皆さんおはようございます。朝から神戸家にて嬉しい報告を受けている柴田六三郎です。
今月の頭に遠藤殿が中心の、北伊勢の北東エリアの協力を締結させたと思ったら、神戸家家臣の皆さんが、
甚五郎さん達の協力もあったとはいえ、北伊勢の全ての家の協力を締結させたとの事です。
で、何故か
「六三郎殿。甚五郎殿から聞いたが、家臣が増えたそうじゃな?」
「あの、三七様。まだ、家臣ではありませぬ、関殿の領地の北東にある領主の遠藤殿に、此度の争いで神戸家に協力するから、
勝利のあかつきには召し抱えてくれと頼まれて了承しただけですので、まだ遠藤殿は立場上、拙者の家臣ではありませぬ」
「だが、召し抱えるつもりなのだろう?」
「それは、はい」
「ならば、遅かれ早かれじゃな。だが、現在の立場で接する事を優先するならば、それで良いと思う。
さて、話を戻すが、北伊勢の全ての家から協力を得る事を締結させた。ならば次は、六三郎殿。
伊賀国へ向かうか?それとも、来年の収穫量を増やす為の準備をするか?どちらが良いと考える?」
「三七様。拙者の考えとしては、各領地の百姓の方々は勿論、領主にも滋養が豊富な土作りを推奨すべきかと。
拙者はその土をこれまで住んでいた尾張国、美濃国は勿論ですが、財政改善で向かった三河国でも実施した結果、米も麦も野菜も、前年と比べて
収穫量が倍増しましたので、先ずは土作りから始めて、来年の準備をしてもらうべきかと」
「その土は、どの様に作るのじゃ?」
三七様に質問されたので、堆肥の作り方を説明したら、
「ほう。肥をすぐ田畑に撒かずに、別で取っておいた土に混ぜ、その土に落ち葉や、家から出た食べ残しを更に混ぜて、天道に当てながら、二十日ほど放置して
田畑に撒いて馴染ませると、収穫量が倍増したのか!幸田、書き残しておるか?」
「既に、こちらに」
幸田殿が、いつの間にか記録していました。やっぱり仕事が早いな
「幸田よ。それを北伊勢の全ての百姓に渡してくれ!来年の田植えの前に、百姓達がその土を作りあげたなら、北畠家に勝てる可能性が高まる!
そして、その間はこれまでに増やして来た茶の葉を売って、少しでも儲けを出す!丁度、今月末に
岐阜城へ行く事になっておるから、現在回収出来ておる茶の葉も持っていく!まだまだやる事は多いが、皆、気を引き締めて役目に励んでくれ!」
「「「ははっ!」」」
さて、俺は三七様と岐阜城へ行く事確定だから、準備しておきますか
天正七年(1579年)九月二十八日
美濃国 岐阜城にて
「父上!何とか北伊勢の全ての者達から、協力する旨をいただきました!そして、茶の葉も十分な量を持って来ました」
「三七よ、よくぞ成し遂げた!そして、約束の店の権利書じゃ!確認するが、最初の店は何処に出す?」
殿が質問してきたけど、三七様は考えているのかな?京か堺が良いと思うんだけどな
「父上。拙者は京で最初の店を開きたいと思います」
「何か理由があるのか?」
「六三郎殿が作る新しい茶は、日頃から茶の湯を嗜んでいる公家にも好まれるであろうと同時に、
京で流行れば、堺の商人達が茶の葉を買いに来ると思ったからです。そうじゃな六三郎殿」
そんな話聞いてないんですが!?でも、此処で「そんなの初耳です」なんて言ったら白けるから、
「そうですな。これは商売という戦ですから、重要な場所である京で流行らせてこそでございます」
「はっはっは!商売までもが六三郎にとっては戦か!まったく、柴田の鬼若子は訳ありな者を引き寄せるだけで飽き足らず、自ら戦に飛び込むか!」
いや、殿?あなたの息子の無茶振りでそうなっただけで、俺は別に戦バカでもないし、戦闘狂でもないんですよ?
で、俺がそんな事を考えていると三七様が、
「父上。京に店を出す事でお願いしたい事が」
「何じゃ?」
「はい。六三郎殿と歳の近い、料理の腕が確かな女子を五名ほど、二ヶ月程お借りしたいのです」
「ほう。何故じゃ?」
「理由として、いくら六三郎殿が美味い茶や料理を出しても、武骨な男しか居ない店では、客が少なくなると思うので、その点を解消する為に、お借りしたいのです」
「ふむ。確かに納得出来る理由じゃな。六三郎、それはお主も同じ考えか?」
「はい!美濃国の旅籠の、美濃屋で身分を隠して働いていた時も、店の女将から
「山県家の三姉妹を見る為に、飯を食べに来る若者が増えた」と言われましたので、三七様のお考えは商売を行なう上で、必要な事です」
「そうか。ならば、その三姉妹に加えて女中の何人かを貸してやろう。見目麗しい三人が居たなら儲けが増えると申すならば、実践してみせよ」
「「有り難き!」」
殿が雪達に加えて何人か女性を派遣してくれるそうだ。良かった、これで京都の町娘をバイトで雇って人件費がかかるなんて事は無くなった
でも、それも二ヶ月限定で、そこから先はやっぱりバイトを雇わないとダメかもしれない。でも、初期費用を抑えられるのはデカい!
俺がこれからの事を考えていると、
「商売に関する事は終わりの様じゃな。ならば、儂から二人に伝えなければならない事がある。良く聞け」
「「はい!どの様な事でしょうか?」」
「うむ。先ず一つ目じゃが、遂に本願寺が織田家に膝を折った。今の摂津国から本拠地を移動する事、
そして、今後一揆を扇動しない事等を含めて、細かい話し合いを行なうが、武装解除を遂にさせた!
誠に長かった!だが、これからは戦う範囲が広がって行く!六三郎、お主の父の権六が総大将の北陸方面軍、
此度、本願寺を武装解除させた佐久間半介を総大将とする中国方面軍を派遣する」
は?いやいや待て待て!確か史実だと、中国方面軍は秀吉が総大将だっただろ?それを何で佐久間さんが?
親戚じゃない佐久間さんは確か、折檻状を渡されて織田家から追放が史実の流れだったはず。これは教えてもらおう
「殿。よろしいでしょうか?」
「何じゃ?」
「佐久間様は、どの様に本願寺に武装解除をさせたのでしょうか?今後の戦の参考に聞きたいのですが」
「やはり戦に関しては貪欲じゃな。良かろう。佐久間が本願寺を武装解除させた内容じゃが、まさかの茶の湯じゃ」
「それは一体?」
「実は、猿と半介が本願寺にあたっていたが、猿の軍勢は苛烈に攻めるも、半介の軍勢は攻撃を全くしなくてな、
それに猿が怒り狂って、領地に帰ったのじゃ。そのせいで本願寺は攻撃が無くなって安堵していたが、
その時に半介が本願寺に矢文を送り、その内容が「茶でも飲みませぬか?」じゃ。本願寺の代表である顕如が護衛数名を連れて
半介の元に行ったら誠に茶を飲んでいたから、顕如も茶の席に入って、一緒に茶を楽しむ間柄になり、
最終的に戦が無くなった。というわけじゃが、六三郎よ、お主も信じられぬ。という顔をしておるな」
いや、そりゃそうだろ!石山合戦なんて言われてた、織田信長の覇道の最大の障害が、お茶で終戦なんて、誰が信じられますか?