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交渉には表と裏がある

「柴田殿。もしも、もしもじゃ。北畠家が太守になった場合、伊勢国はどうなると言うのじゃ?」


「遠藤殿。三介様は短慮で好戦的な人物です。北畠家に臣従しない家には間違いなく、戦を仕掛けるでしょう。


理由は単純明快に「伊勢守である自分に逆らうから」という子供じみた理由で、話し合いもせずに、


自らが有能である様に見せたいが為に、無意味で無駄な戦を行ない、一部の家は見せしめの為に全滅させられるでしょうな」


「そ、そんな」


うん。言葉が出て来ない様だけど、まだまだ続きますよ


「遠藤殿。三介様はその様な人物ですが、三七様は逆に、熟慮し、無用な戦はやらないのです。更に、北伊勢の民の事を優先して考える人物です


その三七様が、伊勢国の太守になった場合、北伊勢や南伊勢など関係なく、民に優しい伊勢国にしてくれるでしょう」


「柴田殿。その言葉、信じて良いのだな?儂達を騙したならば、斬り捨てるぞ!」


と、遠藤殿がまた、騒ぐ。で、こう言う場面では年長者の経験が光るんですよね。それは甚五郎さんなんですが


「遠藤殿。そんなに騒ぎ立てずとも良い。此方の柴田六三郎殿か、人を騙す様な若武者ならば、


「柴田の鬼若子」という畏怖ある二つ名が付く事など有り得ぬぞ?」


「はあ!?関殿、今、「柴田の鬼若子」と言いましたか?」


「ああ、言ったぞ。何じゃ、遠藤殿は知っておったのか?柴田の鬼若子と呼ばれる若武者の存在を」


「勿論です!美濃国で元服前に武田軍三千を、数でも質でも劣る軍勢で撃退した話も、三河国で自らの手勢だけで、倍以上の武田の足軽を全員討ち取り、


更には砦も壊滅させた話も、全て耳に入っておりますが、柴田殿!これ迄の話は誠に柴田殿の話なのか?柴田殿の兄君の話ではないのか?」


何だか遠藤殿が興奮してるけど、俺の戦の話で交渉が上手くいくなら、話して損はないか


「いいえ。遠藤殿。全て拙者の話です。細かい話までするならば、美濃国での戦は拙者を慕ってくれた領民達250人と、


織田家直臣の森様、佐久間玄蕃様の軍勢を足して2650人に対して、武田はおよそ3000人の戦だったのですよ」


「お味方の人数を分かっているのは、本人しか有り得ない事。では、誠に柴田殿が元服前は「柴田の神童」と呼ばれ、元服後は「柴田の鬼若子」と呼ばれている本人で間違いないのですか?」


「あまり喧伝はしたくないのですが、一応、その様に呼ばれております」


「数々の失礼な発言、申し訳ありませぬ!」


遠藤殿が平伏したけど、それよりも交渉を続けましょうよ


「遠藤殿。とりあえず頭を上げてくだされ。改めてですが、神戸家に来年いっぱいまでで構いませぬので、協力してくださいませぬか?」


「是非とも協力させてくだされ!拙者の領地は微々たる大きさですが、周りの方々も協力したならば、


間違いなく神戸家の助けになりまする!各々方も、その方針でいきませぬか?」


遠藤殿が周りの人達に話しをふると、しばらく悩んだ末に、


「良かろう!遠藤殿と同じく、儂も協力しよう!」


「儂もじゃ!」


「同じく儂もじゃ!


「同じく!」


「同じく!」


と、甚五郎さんの領地に近い人達全員が協力を申し出てくれた。どうやら、この地域は遠藤殿を中心に動いている様だな。


それなら、次からは遠藤殿を連れて交渉に行けば、北の方は交渉が早いだろう。よし、決めたぞ


「遠藤殿!」


「は、はい!何でしょうか?」


「遠藤殿はどうやら、ここ一帯の中心の様ですな。此処から更に北の方々と交渉する時は、共に交渉の場に参加してくださいませぬか?」


「え!?せ、拙者が、その様な重要な場に」


「甚五郎殿。よろしいでしょうか?」


「六三郎殿は、遠藤殿に何か光るものを感じたのですな。遠藤殿が良いならば、拙者も良いですぞ」


「と、いう事じゃが、遠藤殿?」


「是非とも、参加させていただきたく!」


遠藤殿はそう言いながら平伏した。そして、


「柴田殿。いえ、柴田様。この場でお願いする事はおかしいと分かっておりますが、神戸家と北畠家の争いで、神戸家が勝ちましたならば、拙者達家族を召し抱えてくださいませぬか?」


「それは何故でしょうか?北伊勢で過ごせば、小さいながらも領地は有るわけですし、拙者は父上から領地を分けてもらわないと、現状、領地が無いのですぞ?」


「柴田様ならば、これから領地を手に出来ると確信したからこそ、此度の争いで神戸家が勝ちましたら、召し抱えていただきたいのです!どうか!」


「分かった分かった。だが、先ずは来年いっぱいまで神戸家への協力をよろしくお願いいたす。


改めて説明するが、神戸家への協力の内容は、それぞれの家の儲けの帳簿を全て神戸家に加えるという内容じゃ。


これくらいやらないと、北畠家の儲けを超えられぬ。だからこそ、北伊勢の全ての家の協力が必要じゃ。改めて、よろしくお頼み申す」


「「「「「ははっ」」」」」


これで北伊勢の三分の一くらいの家の協力は取り付けたぞ!まだまだ先は長い!

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