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隠す事は悪手だから正直に

「では。殿、拙者が三七様に提案しました事は、伊賀国の一部を巻き込む事です」


俺の言葉に数秒、大広間が静かになる。そこから殿が


「六三郎。それはどう言う意味じゃ?まさか、戦を起こして、伊賀国の一部を神戸家の領地及び北伊勢とするつもりか?」


「いえ!伊賀国の中で、北伊勢に近い者達を戦以外で一年限定でも臣従させて、その者達にも此方の茶の育成と販売を手伝わせた上で、その者達の儲けも神戸家の儲けに加えたいつもりだからです」


「ほう。そこまでして、三介の北畠家に勝てぬと申すか」


「はい。むしろ、そこまでしないと北畠家に勝てないと三七様が判断したからこそ、この提案を殿の前でお話したのです」


「そうか。三七よ、三介の北畠家は、それ程までに強大か?」


「はい。神戸家と北伊勢の諸家が纏まって、やっと北畠家単体と争えますが、南伊勢の諸家が北畠家に協力したならば、その時点で勝ち目がなくなります!


六三郎殿と話し合いを行ない、強大な北畠家から勝ちを掴む為には、恥も外聞も捨てて、伊勢国以外の者達の協力も得てまでも勝ちたいのです。なので、どうかご了承を」


そう言いながら三七様が平伏したので、俺も平伏すると


「はっはっは。三七よ!よくぞ、その考えに辿り着いた!そうじゃ!戦ではないといえど、争いに勝つと決めたならば、どれだけ相手が強大といえど、あがけ!


数で負けておるならば、頭を使い、相手を出し抜け!戦も政も、綺麗事だけでは出来ぬ!


三七!お主の覚悟、しかと受け取った!伊賀国の者達との交渉に儂は手出しせんが、交渉する事は了承しよう。やるだけやってみよ」


「「有り難き!」」


三七様と俺は平伏して、お礼を言う。そして、殿は


「長月の末頃に、もう一度来い!京と堺と熱田での商売用の店を利用する書状を作っておく!それまでに、


最低でも北伊勢の全ての者達との交渉を締結と、茶の葉の大量生産を完成させよ」


「「ははっ」」


「うむ。話が終いならば、領地に戻り準備しておけ」


「ははっ。それでは失礼いたします」


こうして三七様と俺は、大広間を後にした。


両者の足音が聞こえなくなった事を確認した信長は信忠と長秀に


「勘九郎!三七は、六三郎と出会ってから一皮も二皮も剥けた様じゃな!以前までは、お主や三介の影に隠れて自らの考えを言わなかったが、


今ではしっかりと言える様になった!嬉しい限りである!五郎左よ、以前話していた、「もしも四国の長宗我部が織田家に臣従しなかった場合」の


討伐軍の総大将には、三介ではなく三七を就けた方が良いな。五郎左と六三郎を参謀につけてやれば、被害少なく戦を勝利出来るはすじゃ」


「三介様より、三七様の方が話し合いに応じてくださるので、それは妙案ですな。それに、もしも伊賀国の者達を一年だけの協力関係ではなく臣従させたならば


四国の戦でも働いてくれそうですし、期待してしまいますな」


「ふっふっふ。五郎左よ、儂もじゃ!だが、これで三介が何もせずに広大な領地と家名に胡座をかいているだけの阿呆ならば、間違いなく三七に負けるであろうが、


誰か、三介の家臣に六三郎の様な知恵を出す者が居るか?いや、その様な者が居ても、そもそも三介か提案を聞くのか?色々と楽しみではあるが、それはこれからの展開次第じゃな」


そう言いながら、笑顔になっていた。


その事を知らないまま、帰路についていた三七と六三郎は


「六三郎殿!六三郎殿の妙案を、父上が了承してくれた!あとは、協力の交渉と同時進行で、茶畑を増やしていけば」


「三七様。油断は禁物です。拙者の様な普通の、何処にでも居る凡庸な者が思い浮かぶ策は、三介様の家臣の誰かしらも思い浮かんでいるかもしれませぬ


だからこそ、出来るだけ早く、殿の了承を得た上で伊賀国の東部の者達と交渉を行なうのです


それこそ、最悪の場合。来年の弥生の中間報告で、三七様の儲けが、自身の儲けを超えていた事を知った三介様は、今の我々と同じ事をするかもしれませぬが、


その時には、伊賀国の者達は我々と協力する約定を交わしておりますから、三介様の陣営の話は、


我々以上の利益を見せないと聞きもしないでしょう。その時に、三介様が服従させる為に戦を起こしてしまえば、殿はお怒りになるでしょう。


それこそ「やらずとも良い戦を起こすなど言語道断」と、思うかもしれませぬ。その時に三七様が、


伊賀国の者達を保護出来る様な力が有れば、殿も考えるでしょう。「伊勢国と伊賀国は神戸家に任せた方が良いかもしれぬ」と


あくまでこれは、良い方向と悪い方向が混在した想定ですので、過剰な期待は厳禁です」


「まったく、六三郎殿は誠に儂より七歳も下の若武者か疑う程、賢い上に、人の心を動かす術を使うのう」


「父上からは「悪知恵」と言われておりますが、悪知恵も人の為になり、無駄な戦が無くなるのであれば、使うべきかと思いませぬか?」


「それもそうじゃな!先ずは、領地に帰り、家臣達と甚五郎殿にこの事を話して、茶畑を増やしながら、交渉に動こう」


「ははっ」


さあ、三七様のやる気が更に増したぞ!これは、俺も交渉含めて仕事が多くなるだろうな。

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