水が綺麗だと飲み物の材料が美味い
天正七年(1579年)七月二十九日
伊勢国 関一党領地にて
「さあ。幸田殿、六三郎殿!我が領地を見て、何か良い物があるか見つけてくだされ。説明役として、
家臣の大沼五郎三郎を付けますぞ。儂達も三七殿の領地で何かしらを見つけてみようと思うので!」
皆さんおはようございます。昨日の話し合いという名の会議において、関一党の領地を自由に行き来出来る様になりました、柴田六三郎です
これで、見られる範囲が増えたけど、もしも関一党の領地で何も見つからなかったら、アホボンの領地と最も近い、伊勢長野家にも話し合いをしに行かないと
ダメな事になるんだけど、それは最悪の場合、アホボンが戦を仕掛けてくる事も考えられるし、伊勢長野家を調略して、自らの味方にする事も考えられる
出来れば、関一党の領地で何かしらを見つけて、神戸家の領地も含めた両方で作れる物になれば良いんだけどな
で、俺がそんな事を考えていると説明役の大沼さんが、
「柴田殿、主君の甚五郎様より説明役を担いましたが、何か気になる物は、見つかりましたでしょうか?」
と、聞いてくるんだけど、はっきり言って神戸家の領地の西側と関一党の東側は、同じなんだよね。丸被りとでも言えばいいかな?
育っている米も野菜も麦も、全く同じ!まあ、歩いて行ける距離なんて、そんなもんなんだろうけどさ
関一党の東側は無理だ!じゃあ、大沼さんに北と南と西を聞いてみるか
「大沼殿。関一党の領地で、一部の百姓の方々が育てている物は何があるでしょうか?」
「そうですなあ。確か、北の方で百姓達が茶の葉を育てていたはずですが」
茶葉か。お茶に関しては、既に京や堺で茶道をやってる人も居るから、何か目立つキャッチコピーが有れば、売れるかもしれないけど、田畑の面積次第では
少し高い値段にしないといけないかもしれないし、かと言って、味が微妙だと売れる訳がない
とりあえず行ってみよう!
「大沼殿!是非とも、その茶の葉の田畑に行きたいのですが!」
「は、はあ。かしこまりました。では、こちらの道から」
という事で、大沼殿に案内してもらって、小規模の茶畑に来ました。滅多に関一党の人達は此処に来ないんでしょうね、
村の人達が、ビクビクしてます。で、村の長老っぽい人が来まして、
「おや、関一党の方。何かお探しでしょうか?」
と、聞いて来たので大沼殿が対応してくれたのですが、
「うむ。此方の柴田六三郎殿と申す若武者が、北伊勢に大量の銭が入る様にする為に、各地を見て回っておるのだが、
この地の茶の葉がもしかしたら、多くの銭を産むかもしれぬ!との事で、見てみたいとの事じゃ!済まぬが、茶の畑を見せてくれ」
「はあ、まあそう言う事ならば」
と、いう事で茶畑を見せてもらうのですが、大沼殿?あまりハードルを上げないで欲しいのですが
俺も、この茶葉が売れるか分からないんですよ?
それに、見るだけじゃ分からないから、飲ませて欲しいのですが
先ずは見ながらだな。とは言え、香りは普通の植物なんだよな。
ん?でも待てよ。確か、抹茶は茶葉を石臼で挽いて粉にした奴の事を言ってたよな。で、茶葉のブランドみたいなものが有って、値段が上下してるイメージだったな
それに、茶葉を手揉みしてから玉露のお茶、細かく刻んだ茶葉を乾煎りする焙じ茶、色々有るじゃないか!
よし!これは、茶葉を貰うか、それとも買うか、大沼殿と幸田殿に相談だ!
「大沼殿!幸田殿!こちらの茶の葉、大量の銭になる可能性が有りますぞ!」
「「誠ですか!」」
声と言葉が被ったのはスルーするけど、とりあえず色々確認だ
「大沼殿、幸田殿。こちらの茶の葉を買っていただけませぬか?あと、石臼は甚五郎殿の屋敷か、三七様の屋敷に有りますでしょうか?
これから、茶の可能性が出て来ますぞ!先ずは、茶の味の確認をしたいのです」
「お、お待ちを!六三郎殿。先ずは茶の葉を手に入れたいのですな。百姓達と話をして来ますので、少々お待ちを」
大沼殿が百姓の皆さんと話し合いをして、しばらく待つと
「六三郎殿。百姓達は、茶の葉は二束三文で買ってくれても構わないから、自分達も飲ませてくれと言っていますが」
「それならば、飲んでもらいましょう!その方が話が早いです!
という事で、近くに家がある百姓さんの台所で、茶葉を乾煎りして、先ずは焙じ茶を出しましょう
俺の料理風景を見て、
「へ〜。お侍様が、料理するなんてねえ」
「うちの倅にも見習わせたいわ」
「うちの娘より料理上手じゃないか」
などの声が聞こえてきますが、茶葉がカラッカラになったので、お湯に茶葉を入れて完成です。この時代的に、これが出来る限界かもしれないから仕方ない
「さあ、皆々様。飲んでみてくだされ」
「香りがいつものお茶と違うね」
「色も違うよ!茶の葉を乾煎りするとこうなるんだね」
「では、飲んでみましょう」
大沼殿の合図で、皆が一斉に飲む。すると、
「美味しい!」
「夏の暑い時に、熱いお茶が美味しいなんて」
「これなら、うちらでも作れるね」
「六三郎殿!この茶は、とても美味いですな!」
「これは、京や堺だけでなく熱田でも売れるでしょうな」
「皆々様、これで終わりではありませぬ。まだ、新しい茶を出しますので」
まだまだ、この時代では無いであろう茶を出してプレゼンしないとね。