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親父が帰って来たら

天正七年(1579年)五月一日

越前国 柴田家屋敷にて


「父上!お帰りなさいませ」


「「「お帰りなさいませ」」」


皆さんおはようございます。松姫様と虎次郎の件が一件落着して、お袋の出産の為に一時帰宅した親父に挨拶している柴田六三郎です


やっと落ち着いた形で親父と顔合わせしたんだけど、何やら疲れた顔をしていた。それでも親父は


「利兵衛!儂が六三郎達を探しに行っていた間、皆と相談して領地の差配を行った事、誠に大義である」


「大殿。戦に出ない拙者は内政で働かないと、若様が仰っていた「ただ飯喰らい」になってしまいます。なので、働く事は当然にございます」


「六三郎は厳しい事を言っておるな。まあ、利兵衛にはまだまだ働いてもらわねば困る。身体に気をつけながら、働いてくれ」


「ははっ」


「源太郎。六三郎が居ない間だけでなく、儂が六三郎達を探しに行っていた間も、領地の警護の大役を、問題なくこなしてくれた」


「大殿。我々赤備えは、若様や柴田家の為に働いてこそ、その立場を示す事が出来ますので、警護くらいは当然です」


「うむ。これからもよろしく頼む」


「ははっ」


「そして六三郎!三河国の財産改善を一年半で達成した事、見事であった。越前国へ直ぐ来られない程の、大役を望んでもないのに請け負って、


更に無傷で勘九郎様に引き渡した事、良くやった。と、勘九郎様がお褒めであった。まあ、勘九郎様も仰っていたから、煩く言わぬ。とりあえず、早く越前国の暮らしに慣れよ」


「ははっ」


「さて、六三郎がやった「望んでもない大役」を知らない者も居るであろうから、簡潔に伝えておくが、


六三郎は三河国での務めを終えて、以前柴田家が治めていた美濃国の土地の現在の領主を務める明智家に


挨拶をしに行く道中、信濃国から逃げて来た一行が、武田の者達に追われていた所を、助けて保護したのだが、


その一行は、六三郎の家臣として内政で働いておる源四郎の弟妹達、そして、その弟妹達が命懸けで守っていた武田信玄公の娘の松姫様と、


現在の武田家当主の四郎勝頼の側室が産んだ男児であった。六三郎達は一行を保護しながら越前国を目指していたが、


途中で路銀と食糧が尽きた為、身分を隠して美濃屋という旅籠で一ヶ月程働いて銭を稼いでおった


そこに勘九郎様と儂の手勢が現れて、保護した。という訳じゃ。そんな六三郎の無理矢理な行動に源次郎、銀次郎、新左衛門、花。


そして、三河国で六三郎に召し抱えられた三之丞、かえで。改めて感謝する」


「「「大殿、勿体なきお言葉にございます」」」


「うむ。先に名を出した三之丞とかえで以外に、源四郎の弟の佐兵衛と三郎右衛門も、六三郎にこれから仕える事になった。既に顔を見ているだろうが、


じっくりと馴染んでいけば良い。儂からの皆への言葉は以上じゃが、儂は市の出産までは屋敷に留まる。だが、気にせずにいつも通りに働いてくれ


以上じゃ。解散して、役目に励んでくれ」


「「「ははっ」」」


で、皆さん仕事に戻ったんですが、


「六三郎。お主は儂の部屋に来い」


と呼び出されました。何か重要な事の予感がします。


で、親父の部屋に行きまして


「父上。お話とはなんでしょうか?」


「うむ。先ずは、市には聞かせられない話じゃ。良く聞いて、お主の考えを聞かせよ」


「はい。お聞かせください」


「うむ。実はな、北近江を治める藤吉郎がな、文を養子にしている甥の嫁に欲しいと言ってきたのだがな。


市に言えば絶対に反対するから、六三郎、お主が嫁に出しても良いと言えば市も納得するかもしれぬと思ったのだが、


それでも一応、お主の考えを聞いてから判断したい」


親父!そんなの答えは一択だろ!


「父上!拙者は絶対反対です!」


「何故じゃ?儂が納得出来る理由があるのか?」


「父上。養子という事は、実子が産まれた場合、お家争いで殺される可能性が高いのですよ?そんな立場の者に、大事な妹を嫁入りさせるなど!


言語道断です!それならば、まだ前田様の次男に嫁入りさせた方が、拙者も母上も安心出来るというものです!


それに、羽柴様の家は、譜代の家臣も一族も親類血縁者も少なく、羽柴様への忠義も怪しいのです


その様な家に嫁いで、文が末長く幸せになれると思いますか?更に最悪の可能性を上げるならば、


文が年頃になって、母上の様な美女に育った場合、羽柴様が養子を亡き者にして、文を慰み者にする可能性も有り得ます!


だからこそ、拙者は文だけでなく、柴田家に関わる全ての女子が羽柴様の元に行く事は反対です!」


「そ、そこまでの事は」


「父上。無いと言い切れるのですか?」


「ああもう分かった!藤吉郎には断りの文を送っておく!それで良かろう?」


「はい。それでお願いします」


「話は変わるが六三郎よ、お主は勘九郎様の弟君達を知っておるか?」


「茶筅様という方が居る事は、美濃屋で聞きましたが」


「うむ。その茶筅様。今は元服して三介様で、更にその弟の三七様なのだがな、


三介様は伊勢国の南部を治めている北畠家に養子に行って、三七様は同じ伊勢国の北部を治めている神戸家に養子に行ったのだがな


殿曰く、そろそろ伊勢国を統一させたいと。だが、戦での統一ではなく、どれだけの銭を生み出せるか。


つまり内政で競い、その結果を持って、勝った者を伊勢国の太守に任じ、伊勢守の官位を朝廷を通じて授ける。との事じゃが」


ちょっと待ってくれ親父!その展開だと


「六三郎。お主を三七様の元に行かせて、湊と領地が小さく不利な三七様を、湊があって有利な三介様と対等にすると、殿は仰っている」


やっぱりまた出張じゃねーか!そんな織田家の兄弟での争いに俺を巻き込むなよ!


「あの父上。何故、拙者なのですか?織田家には内政の腕が素晴らしい人は多数居ると思うのですが?」


「六三郎。殿も勘九郎様も、表向きは競わせて文句の無い形を取りたいと仰っているが、


裏向きでは。その実、三介様の気性の荒さと戦下手を憂いておる。三七様は、三介様とは逆に穏やかで時勢を読めて、無駄な戦をしない。その様なお人なのだ


殿も勘九郎様も、勘九郎様が家督を継いだ時に、三七様に側に居て欲しいと願っておる。だが、


三七様の生母の立場が、殿の側室の中で低い事で、現状三七様の発言力も低い。だからと言って、


殿は贔屓などしたくないとのお考えじゃ。だからこそ、殿は「銭を多く生み出す」という、戦以外で分かりやすい争いで競わせるとの事じゃ


六三郎。ここまで言えば分かるな。お主はその悪知恵を使い、三七様を勝たせて来い!」


そんな重い出張は嫌なんですが?あ、でも、これはもしかしたら史実どおりに進んだ場合の早死にフラグを壊せる人達をゲット出来るかもしれない


そう考えれば、この出張も悪くないかも!これも将来の為の投資と思って、出張行きますか!

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― 新着の感想 ―
タイトル通り社畜はいいのですがこれだけ働かされてあちこちで織田家に大きく貢献してるのに社畜的に言えばボーナスがないなと。中身や影響力はともかく市さんがきて領地も越前でと史実と変わらんやんと。
本当に長期出張が多いですな。 社畜のタイトル回収しまくってるw
何時も楽しみに読ませていただいてます。 少し気になる事があります。前にも書かせていただきましたが、やる気を削ぐような&重箱の隅を突くような感想は,無視して流していただいて、本当に楽しみに待っている読者…
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