話し合いの結果と両親のサプライズ
天正七年(1579年)二月十八日
美濃国 明智家屋敷にて
「では、明智様。お世話になりました」
「うむ。大変だと思うが、越前国に早く着いた方が良いからな。殿と柴田殿には、儂から文を出しておく。
久しぶりに十五郎の顔を見て欲しかったが、少しばかり体調が優れなくてな、済まぬ」
「体調に関しては、運の部分も有りますから」
「そう言ってもらえて、有り難い」
「では、そろそろ」
「うむ。道中、気をつけて」
皆さんおはようございます。明智様の屋敷から、親父の新たな領地の越前国を目指して進んでおります
柴田六三郎です。三日前に、明智様に挨拶してから出立するつもりだったのですが、山県兄妹と、確定ではないけど、武田の姫君の松さんを保護して、
その事で明智様と話し合った結果、松さんの事は越前国に着いてから色々聞こう。と決まりました。
岸さん夫婦の2人、山県兄妹の6人と松さんを含めて、行きは俺、源次郎、銀次郎、新左衛門、花の5人だったのが、帰りは9人追加の14人ですよ
まあ、明智様の事だから、殿と親父に事細かく書いた文を出しているでしょう。とりあえず俺達は、
さっさと越前国に到着する事を優先で動きましょう。しかし、俺より歳下の虎次郎は歩かせるのは申し訳ないから松さんと一緒に馬に乗せてるけど、
松さんの乗馬姿、格好いいな。だからかもしれないけど、虎次郎も静かに乗ってるし。やっぱり武田の姫様だから、慣れてるのかな?
六三郎がそんな事を考えながら、越前国を目指している頃、光秀は信長と勝家の両方に文を出していた
距離の問題で、当然だが信長に先に届く
天正七年(1579年)二月二十七日
美濃国 岐阜城にて
「殿!明智様からの文でございます」
「ほう。十兵衛からとな。まだ北陸方面へ出陣しておらぬから、軍事以外の事であろうな。どれ
「殿へ。緊急を要する可能性がある事が起きましたので、御報告します。二十日程前に、六三郎殿が三河国での財政改善を終えて、
拙者に挨拶に来る途中、信濃国との境で、武田に追われている一行を助けて保護したのですが、その一行が
六三郎殿の家臣の山県殿の弟妹は確定しておりますが、不確定ですが、勘九郎様と婚姻予定だった武田信玄の娘の松姫の可能性が高いのです。
拙者の屋敷で匿っていては、武田との最前線に置いてしまうので、越前国へ進ませました。
柴田殿へも同様の文を送っておりますが、距離の都合上、殿へ先に着くと思います。とりあえず御報告まで」
「全く、六三郎は訳ありの者をどれ程引き寄せるのじゃ?遂に武田の一族まで引き寄せよった。帰蝶、十兵衛からの文を読んで、感想を聞かせてくれ」
「また、大変な事の様ですね。では」
と、帰蝶は文を受け取って読み出す。そして、
「殿。私としては、勘九郎殿を動かせるなら、一行の保護に向かわせた方が良いと思います。殿としては、どうしたいのですか?」
「勘九郎が保護に向かうというならば、止めないが、行くならばそれなりの人数で行けと言おうと思う。
五郎左!勘九郎を呼んでくれ」
「ははっ」
こうして、信長は信忠に任せる事にした。一方、文が遅く着く勝家は
天正七年(1579年)三月十日
越前国 柴田家屋敷にて
「殿!美濃国の明智様からの文です」
「十兵衛から文とは珍しい。何か気になる事でも起きたか?どれ」
「柴田殿へ。殿と柴田殿へ絶対に伝えておかないといけない事が出来たので、伝えておきます。
岡崎松平家の財政改善の為、三河国へ行っていた六三郎殿が、拙者の屋敷へ挨拶に来る道中、信濃国から武田に追われている一行を助けて保護したのですが、
その一行は七人居て、そのうち六人は六三郎殿の家臣の山県殿の弟妹である事は確定しているのですが、
残りの一人が不確定ですが、武田信玄の娘で、織田家と武田家が同盟関係だった時、勘九郎様と婚姻予定だった松姫の可能性があります
拙者の領地で匿っていたら、武田との最前線に置いてしまうので、六三郎殿達と共に越前国へ向かわせました
岐阜城の殿へ文が先に届いていると思いますが、柴田殿へも伝えておこうと思い、文を書きました」
読み終えた勝家は、
「何故あ奴は、普通に帰って来られないのかのう」
勝家の呟きに
「権六様?如何なさいましたか?」
市が反応する。それに勝家は
「市、これを読んでくれ。明智十兵衛からの文なのじゃが」
「どの様な事が書いてあるのですか?」と言いながら文を受け取って読む。読み終えると、
「全く。あの子はどれ程、私達を驚かせてくれるのですか?源四郎の弟妹は分かりますが、武田の姫君かもしれぬ娘まで保護するとは」
「とりあえず、迎えに行かねばなるまい。一千人は連れて行こう。全く、これから更に妹か弟が増えると言うのに、いつになったら六三郎はしっかりするのかのう」
「ふふふ。権六様、口調は嫌々な感じですが、お顔は嬉しそうですよ」
「そこは言ってはならぬ。まあ、六人目の子がそろそろ産まれてくるのじゃ。顔も綻ぶものじゃ。
それに、六三郎にはいつも驚かされているのじゃ、たまには儂達が、六三郎を驚かせるのも良いではないか」
「ふふっ。六三郎がどの様な顔をするか、楽しみですね」
勝家と市は、文に続く子を授かっている事を、六三郎に知らせずに黙っていたが、越前国に到着したら教えるサプライズを準備していた。
再婚の時と同じく、知らないのは六三郎だけだった。
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