人は切れてもフラグは折れず
源次郎達を前に出して、花とかえでは安全な身体を隠せる所に避難させる。で、助けを求めて来た人達が俺達の後ろに来たんだけど、戦えそうな男は2人、小さい男児が1人、年頃の娘さんが6人だった
これは、2人の男は強制参加だな。男児と娘さん達は花とかえでと一緒に隠れてもらおう
で、何とか隠れたら対峙した奴らが、
「その者達を、こちらに渡せ!渡せば、お主達は見逃してやる!」
と言ってきたが、源次郎か
「断る!我々は「柴田の鬼若子」と呼ばれる柴田六三郎様の家臣じゃ!その主君が助けると決めたのじゃ!
ならば、追われておる者達を助けるのみ!死にたくなければ消え失せよ!」
「ならば、お主達を殺して、その者達を奪うのみ!かかれー!」
「「「「参る!」」」」
「三郎右衛門!儂達も行くぞ!」
「勿論です!佐兵衛兄上!」
「とりゃああ!」
「遅い遅い!」
「がはっ」
「大殿と比べたら、何と弱い!」
「ぐうっ」
「我々を討ち取るつもりならば、百人は連れて来い!」
「うおおっ」
「まだまだ戦働きが出来る事を示さなければな」
「ぎゃああ」
と、殆ど4人で敵を切り捨ててました。三之丞は訓練未経験だから、赤備えの雰囲気を知らないはずだけど、
既に馴染んでいるのは、やっぱり武士歴が長いからかな
俺がそんな事を考えていたら、
「残りはお主一人じゃ!どうする?」
いつの間にやら、敵のうち19人が殺されておりました。残りの1人は
「くそ!覚えておれ!」
と、負けキャラの定番セリフを言って逃げて行きました。それを見た源次郎が
「若様!追いますか?」
と聞いてきたけど、余計な時間は使いたくないので、
「いや、そのままで良い!信濃国の事が分からないのだから深追いせずに捨ておけ」
「「「「ははっ!」」」」
「皆、よく働いた!三之丞!今年三十三歳で数年間、地侍として過ごしていたとは思えぬ程の動きと武勇であったな」
「有り難きお言葉にございます。いつか孫六を取り返した時、何も出来ない父親にはなりたくないので、
日々、刀を振っておりました。実戦も久しぶりではありますが、とても胸が高まっております」
「うむ。まだまだ老け込む歳ではないから期待しておるぞ」
「ははっ」
で、助けた団体さんのうち、2人を見ると
「あの人数を実質四人で倒した」
「何と見事な」
と、驚いてました。ほっとく訳にもいかないので、
「お怪我はありませぬか?」
と、声をかけると
「も、申し訳ありませぬ!」
「誠に、助かりました」
「何の。これも何かの縁ですからな。無事で何より。それより、何故追われていたのか、差し支えなければ教えてくださらぬか?」
「はい。今、身を隠している妹達が、嫁ぎ先から相次いで離縁されまして、その理由が「子を産めなかったから」なのですが、妹達から聞いたら、
子作りをするのも月に一、二回で、それでやや子を授かれなくて、離縁されたと。その話を聞いた拙者と弟は頭に来て、兄上と同じく武田を出奔しようと決めたのです」
ちょっと待ってください!今、武田を出奔と言いましたね。しかも兄上と同じく。とも!これって
「それは大変でしたな。それで、何かしらのあてはあるのですか?」
「確実なあてでは無いのですが、亡き父上からの文で、「武田に対しての信頼が無くなったり、揺らいだりしたら、出奔しても構わぬ」と言われており、
その文の中に、我々兄妹と父方の祖父母を同じとする飯富様という兄弟を召し抱えている織田家家臣の
柴田家の御嫡男様、「柴田の鬼若子」と呼ばれておりますお人ならば、もしかしたら召し抱えてくださるかもしれぬから、行くだけ行ってみろ。と有りまして、領地が美濃国の東端に位置していると聞いておりましたので、
妹達を連れて逃げて来たら、あの様に追われてしまい、万事休すの所を皆様に助けていただきました。
誠にありがとうございます」
「成程。ところでお名前を伺ってもよろしいですかな?」
「はい。拙者の名は山県佐兵衛昌久にございます。弟は」
「山県三郎右衛門昌重にございます」
やっぱり源四郎の弟と妹達じゃねーか!いや、まあさ、来る可能性は充分にある事は分かっていたよ?
だけどさ、越前国へ行くタイミングで会うとか、分からないじゃないか。とりあえず連れて行って、親父に話をしてから、殿に報告だな
と、思っていたら、銀次郎と新左衛門が
「何じゃお主達、源四郎の弟妹達なのか!」
「若様!この者達の父君は、若様ならば!と敵ながら可能性を感じていた様ですな」
と、能天気な発言をしたら
「兄上を知っておるのですか?」
「兄上は皆様と同じ武家に仕えておるのですか?」
「若様。これは若様が話さないと、場が収まりませぬぞ」
おい源次郎!いつからそんな利兵衛みたいな言葉を使う様になった。と、いうかお前の従兄弟の事なんだから、他人事の様に話すな!
「仕方ない。佐兵衛殿、三郎右衛門殿」
「「は、はい」」
「何とも奇妙な縁じゃが、自己紹介しよう。儂は柴田六三郎長勝。貴殿達の兄である山県源四郎の主君であり、貴殿達が探しておる「柴田の鬼若子」と呼ばれておる本人じゃ。
そして、隣にいる身の丈が六尺程有る、この者は貴殿達の父君の文の中に書いてあった飯富兄弟の弟の、
飯富源次郎じゃ。貴殿達とは従兄弟になるのかのう。なあ源次郎よ」
「そうですな。源四郎の名が出た時に確信しましたが、まさかの一言です」
俺達の会話を聞いた2人は
「あ、あなた様が「柴田の鬼若子」様ですか」
「てっきり、鬼若子様の御嫡男様と思っておりました」
「まあ、見た目的にはそう思われても仕方ないからな。それよりもじゃ!儂に召し抱えてもらいたいと言っていたが」
「はい。源四郎兄上の様に、大きな領地は任されておりませんが、ある程度ならば、理財も内政も出来ます」
「戦に出る事も源四郎兄上より多かったので、どうか」
「佐兵衛、三郎右衛門よ。源四郎も最初は客将の形を取りながら、召し抱えるかどうかを見た。お主達も同じ形を取る。だが、お主達の妹たちはどうじゃ?
儂の屋敷で女中の様に働けるか?それこそ、儂の妹達に何かを教える事は出来るのか?儂の屋敷では、
働かない幼子は、源四郎の指導の元、理財を学ばせておる。何もしてない人間が居ないぞ!ちゃんと働けないのであれば」
「働けます!働かせますので、どうか!」
と、兄貴2人が頭を下げて来た。まあ、とりあえずは、越前国に行ってからだな。




