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梅雨が終わって、実りの秋が来て

天正六年(1578年)七月二十日

三河国 某所


「さて百姓の方々。これから田植えを行なうわけですが、今から指導するのは、尾張国と美濃国で大量の米が実った植え方です。最初は不思議に思うかもしれませんが、


有り得ない程の天候不順が無ければ、驚く程の米が取れます。なので、よろしくおねがいします」


「はあ」


「まあ、やってみっか」


「不作だったら今年の年貢を納めなくていいと言ってたしな」


皆さんおはようございます。松平家の財政改善の為に出張で働いております柴田六三郎です


梅雨が明けた7月から田植え開始という事で、乙川上流の村から、正条植えを指導しております。


去年、各家で堆肥を作ってもらって、堆肥を田畑に撒いて、しっかり耕して混ぜた後に、等間隔で稲を植えていけば、災害レベルの天候不順が起きないかぎり、


豊作になるでしょう!そうでないと、俺の出張が延びてしまう。そんなのは嫌なので、百姓の皆さんに頑張ってもらわないと


そう思いながら、植え方の手本を実演して、百姓の皆さんに実践してもらって、今日は終わりです


で、それを下流の村までの指導しながら進みながら月日は過ぎていって


天正六年(1578年)十月三十日

三河国 岡崎城にて


「六三郎殿が、財政改善の為に来て、治水工事と土地改良をしてから最初の米の収穫じゃな。何故か儂も緊張しておる」


「三郎様。今年は1歩目として、来年に繋がる実りであれば良いのですから。それに米と麦と野菜だけでなく、木綿を使った布団が畿内を中心に売れていますし、今年は過度な期待はせずに待ちましょう」


「それも、そうじゃな」


「そうですぞ三郎様。前月時点での銭の収支も、幾分減ったとはいえ、残り約三分の借銭分がありますので、過度な期待はしない方が良いですぞ」


「うむ。それでは、米蔵を見に行こうではないか」


三郎様の一声で、年貢米を見に行こうと立ち上がると、


「三郎様!石川殿!」


若い家臣が走って来た。その様子に石川殿は


「何事じゃ!?敵襲か?それとも百姓達か一揆を起こしたか?」


「どちらも違います!米が!」


「米がどうしたのじゃ?」


三郎様が聞くと、


「米俵が蔵に収まりませぬ!百姓達も、まだまだ荷車で米俵を持って来ておりまして、中庭に山積みしておりますが、その為の空き場所も埋まって来ております!」


「誠か!石川!六三郎殿!見に行こう!」


で、慌てて中庭に行くと、


「おい!そこは、あと何俵置く事が出来る!?」


「あと二十くらいじゃ!反対側はどうじゃ?」


「ここも詰めに詰めても、三十以下じゃ!」


「これは三郎様と石川殿に伝えて、新たな米蔵を作らないと置き場所が無いぞ!」


と、文字通り、足の踏み場もない状況でした。それを見た石川殿は


「おい!これは、全ての領地から来たのか?」


「いえ、上流の村から来た米俵で蔵が埋まって、この米俵は中流の村のうち、半分の村から来たのです」


「中流の半分でこれならば、下流の村からの米俵が来たら、更に米蔵を作らないと駄目か。三郎様!」


「急ぎ、米蔵を一つ、いや、二つは作らせよ!米蔵か出来るまでは城の中で保管しておけ!これは、予想以上の豊作じゃ!六三郎殿!


この米蔵は勿論、これから来る米俵が売れたら、借銭分以上の銭になるかもしれぬ!」


「そうなれば有り難いですが、三郎様。三河国が豊作ならば、他の国も豊作の可能性もあります。そうなったら、


米の値が低く抑えられるかもしれませぬので、

まだまだ油断は禁物です」


「そ、そうじゃな。じゃが、これ程の米俵は、生まれて初めて見た!ううむ。天晴れじゃ!」


上機嫌の三郎様だったけど、石川殿に米蔵を作らせる手配をさせて、自分も米俵を城の中に運んで、


それを下流の村から米俵が来るまで毎日やって、米蔵が完成したら米俵を移動させての日々を過ごしながら、


近隣の商人達が米の買い付けに来て、売る用の米を売りまくった結果、


天正六年(1578年)十二月十五日

三河国 岡崎城にて


「三郎様。おめでとうございます」


「「「おめでとうございます!」」」


「うむ。皆が一丸となって働いてくれたおかげで、岡崎城及び三河国全体の財政改善を達成出来た!六三郎殿、この一年半、治水工事と土地改良から働き続けてくれた事、改めて松平家一同、感謝する」


皆さんおはようございます。現在松平家一同から頭を下げられております、柴田六三郎です。流石に頭を上げてもらいましょう


「三郎様、皆様。頭を上げてくだされ」


「うむ。六三郎殿。儂達の無理難題を聞いてくれただけでなく、一年半で達成させてくれた事。誠に感謝しかない!この事を、父上に伝えたら喜びと驚きが文に書かれておったし、


義父上に伝えたら、父上と同じく驚いておった。そして、返事の文には六三郎殿が居ない事で、母君と妹君達の機嫌が悪いから、早く越前国へ行かせてくれ。


との事じゃ。出立の日は六三郎殿一行に任せるが、義父上に伝えておこうと思うが、いつ頃出立予定じゃ?」


「そうですな。年明けに出立して、今の領主である明智様に挨拶してから、越前国へ行きたいと思います」


「うむ。それまではゆっくり過ごしてくだされ!六三郎殿は家臣の皆と共に働き、三河国を立て直してくれた恩人じゃ」


「勿体なきお言葉です」


「うむ。それとじゃが、儂個人の事じゃが、六三郎殿にも伝えておこう。徳が二人目のやや子を授かった」


これを聞いた家臣の皆さんは


「誠でございますか!おめでとうございます」


「おめでとうございます」


「財政改善され、更に二人目のお子を授かるとは!おめでとうございます!」


とても、盛り上がっていた。で、三郎様は姿勢を正して、


「六三郎殿。六三郎殿が皆と共に働いてくれたおかげで、財政改善が達成された。六三郎殿が竹千代の宇治丸嫌いを治してくれた。そして、竹千代の時の様に、


六三郎殿が美味い飯を作った時に、子を授かった。誠に六三郎殿が近くに居る時は、幸運が舞い込む。


改めて感謝いたす。父上からも、古茶殿と弟と妹を保護してくれた礼の品や色々な物を義父上に渡しておるそうじゃ。


機会があったら、受け取ってくれ。そして、改めてじゃが、この一年半の働き、誠に感謝する」


「ははっ」


なんとか早めに出張が終わって、来年から越前国で働く事になりました。なんとしても、早死にする未来を変える為に必至で動きたいと思います。

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― 新着の感想 ―
織田家の家臣に勝手に褒美出しては、織田の殿様が家臣の忠誠疑っちゃうよね。織田家に渡してから、本人に渡すのが良いよね。
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