親として、大名として
「徳川様!於義伊様と於古都様が、飯を沢山食べられる様になる解決策が見つかりました!」
「孫か六三郎!それで、どの様な事をやれば良いのじゃ?」
「徳川様。それは◯◯◯での食事です」
「誠にそれで、2人は沢山食べられる様になるのか?」
「はい。これは、拙者か美濃国の屋敷でいつもやっていた事なので、2人が飯を食べなくなったのは拙者の責任でもあります。なので、本日の夕食は提案した形を取っていただけませぬか?」
家康はしばらく考えこむ。そして、
「分かった。六三郎殿のいうとおりにやってみよう」
「有り難き」
で、そこからしばらく夕食まで時間が空きまして、
「古茶様、於義伊様、於古都様。夕食にございます。大広間にお越し下さいませ」
「はい。さ、二人共。行きますよ」
「母上、また、父上と祖母様だけですか?」
「六三郎様は?」
「二人共。先ずは夕食を食べてからです」
「「はい」」
2人共、浮かない気分だった。しかし、そんな気分も、大広間に到着したら一気に変わった
その訳は
「誠に美味い!六三郎殿の料理は素晴らしいですな!特にこの、猪肉にパオンの衣を纏わせた物は!」
「儂は、この鹿の味噌漬け肉を焼いた物が最高じゃ!飯が進む!」
「この鳥肉にパオンの衣を纏わせた物も負けておらぬぞ!この絶妙な塩味、飯も進むが、酒も進む!」
「いやいや、この麦粉を使った丸形の物も美味いぞ!特にこの薄切りの猪肉が、食感の違いを生み出す!」
家康の家臣達が、集まれるだけ集まって大人数で騒がしく夕飯を食べていたからだ。勿論、その中に家康も居る。家康は3人に気づくと
「古茶、於義伊、於古都。中央に来なさい。皆で飯を食うぞ!」
「「はい!」」
於義伊と於古都は古茶の手をほどいて、一目散に中央に走っていった。その様子に家康は
「これこれ。飯は逃げぬぞ。慌てるでない」
と言い、家臣達は
「殿。きっと、お二人共早く御食事したくてたまらなかったのでしょう」
「我々も美味い飯は楽しみでありますからな」
「おいおい!於義伊様と於古都様を、お主と同じ大飯喰らいにしては、失礼ではないか!」
「おっと、殿。これは失礼しました」
「「「わっはっはっは!」」」
騒がしくも楽しい雰囲気に、於義伊と於古都は
「六三郎様のお屋敷に居た時みたいに、食事が楽しいです」
「こんな食事時なら、沢山食べられます」
と、言いながら泣いていた。それを見て家康は、
「於義伊、於古都。二人が食事の時、辛かった理由が分からず済まぬ。これから毎日とはいかぬが、
時々はこの様に皆で飯を食う形を取る。だから、沢山食べて大きく育ってくれ。父からの頼みじゃ」
「「はい」」
「うむ。沢山食べよ」
この日の2人は、美濃国に居た時の様に食べた。それを見た家康も於大も古茶も、安心して食事を楽しんだ、
夕食後、2人は古茶に手を引かれて、そのまま寝床に入った。動きが無い事を確認した家康は六三郎を呼んで、
「六三郎殿。二人がしっかり飯を食べた。六三郎殿の言っていた様に、大人数の騒がしい中での食事なら楽しく食べる事が出来た。誠に感謝いたす」
「いえ。徳川様。これは本来なら、拙者が頭を下げるべき事です。拙者が屋敷内で父上が居ないからと、
毎日あの様に飯を食べていたから、あの様になったのです。申し訳ありませぬ」
「いや。六三郎殿。儂は親としてではなく、大名として二人に接していたのかもしれぬ。今思えば、三郎が小さかった頃は、領地もそれ程大きくなく、
家臣の数も少なかったからひとつの部屋で共に飯を食ったが、領地が大きくなり、家臣が増えるにつれて、
いつの間にか、共に飯を食うのは一部の者だけになっておった様じゃ。二人にも言ったが、毎日とはいかずとも、時々は大人数で飯を食おうと思う」
「良き事かと」
「それとじゃな、六三郎殿。三郎からの文で見たのじゃが、なんでも宇治丸を美味な料理に作ったそうじゎが、それを儂にも出してくれぬか?」
「宇治丸が居るならば、作ってお出しするのは構いませぬが」
「そこは大丈夫じゃ。数は少ないが、この時期でも宇治丸は捕獲出来る。明日から家臣達に取りに行かせるから、
取れたならば、竹千代が麦飯五杯も食べた料理を頼むぞ!?」
「は、はい」
返事したけど、冬の鰻って美味いのか?まあ、あんな見た目でも一応、魚類だし。冬は脂がのってるんだろうな。




