表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
248/611

武断派の両親の仕官理由

殿五年(1577年)八月二十一日

三河国 某所


「では、石川殿。拙者は2人と話して来ますので、工事のほう、お願いします」


「お任せくだされ。六三郎殿もしっかり判断してくだされ」


皆さんおはようございます。現在、仕官希望の夫婦の家に来ております柴田六三郎です。昨日、働かせてくれと頼んで来た岸夫妻ですが、


子供や孫は江戸時代に良い事でも悪い事でも名を残すから、両親もぶっ飛んだ人かと思ったら、


パッと見は普通の人です。でも、前世の歴史知識だとこの時期の岸さん親子は秀吉に仕えていたし、


息子の嘉明に至っては、殿の4男で秀吉の養子になっていた人の小姓だったのにも関わらず、初陣で本陣を守らずに突撃して、秀吉の正室の寧々さんに


追放レベルで怒られたけど、秀吉が宥めて事なきを得た。とかのエピソードもあったけど、


やっぱり1番有名だと思うのは、石田三成襲撃、所謂七将襲撃のメンバーの1人に名を連ねている事だと思うんだよね


他の小さいエピソードも合わせて、かなりの武断派な人なんだけど、両親はどうだろうか


「さて、改めてじゃが。三之丞殿、かえで殿。確認したいが儂が何処の家の誰に仕えておるか、分かったから声をかけたのか?」


「いえ。失礼ながら、護衛についております家臣の方の身体つきと爆破に使われた物を見て、二年前に三河国で織田家と徳川家が、武田家と戦った戦において、身の丈高く、屈強な身体の武士が、


武田家の籠る砦を爆破する武器を使い、完膚なきまで破壊したと聞いた事が有りまして、皆様が川岸を爆破させている様子から、もしかしたら。と思い、お声かけしたのです」


「そうか。その様な理由ならば、儂も自己紹介しておこう。儂の名前は、柴田六三郎長勝じゃ。父と共に織田家に仕えておる」


「お、織田家の柴田様!?という事は、お父上は、織田家随一の猛将、「鬼柴田」と呼ばれております、


あの柴田様ですか。では、あなた様は、常人では思いつかない事を戦でも内政でもやっていると噂の


「柴田の鬼若子」様なのですか?」


「一応、そう呼ばれる時もある。儂としては、勘弁してほしいのじゃがな」


「「失礼な物言い、申し訳ありませぬ」」


2人が慌てて、頭を下げる。まあ、三河国に居たら、織田家の事なんて、余程の事が無いかぎり伝わらないだろうし、人の顔なんて、もっと伝わらないだろうから、仕方ない。


でも、まあ。変な下心も無く本当に仕官希望者なんだと分かっただけでも良いか


「気にせずとも良い。齢十三の若造じゃ。「柴田の鬼若子」など仰々しい二つ名のせいで、堂々たる体躯の二十歳前後の若武者だと思われても仕方あるまい。


それよりもじゃ!三之丞!かえで!何故、儂に召し抱えて欲しいと願い出た?その理由を話してくれ!」


「はい。お恥ずかしい話なのですが、実は拙者、三年前まで羽柴家に仕えていたのですが


羽柴筑前は、拙者の子の孫六の才覚に何かを見出したのか、重臣の加藤某の猶子にすると言って、拙者とかえでから奪い、


更には我々を放逐したのです。拙者は、元々徳川家に仕えておりましたが、十四年前の一向一揆の時に


一揆側について徳川家を出奔しました。それでも、各地を放浪しながらかえでと共に孫六を育てて来たのに。


筑前に奪われて、このまま引き下がる事は出来ませぬ!しかし、いまさら徳川家には戻れませぬ。


それに、徳川家は織田家と同盟関係です。奇跡的に拙者が徳川家に仕える事が出来ても、孫六を取り返す事は不可能です


だからこそ、羽柴筑前を叩きのめす事が出来る、若く才覚のあるお人に仕えたいと思い、柴田様にお声かけしたのです」


おいおいおいおい!秀吉!何で、そんな人攫いみたいな事をしてるんだよ!此処まで悪どい事してると、


「本能寺の変、秀吉黒幕説」が正解なんじゃないかと思えて来たぞ。それよりもだ。これだけ重い仕官希望理由の人を俺がどうこう出来るのか?


むしろ、親父に仕えさせた方が良いんじゃないかと思えて来たんだが。俺が悩んでいると、


「若様。若様」


今回の護衛役の源次郎、銀次郎、新左衛門の3人のうち、銀次郎と新左衛門が俺を呼ぶ


「何じゃ2人と、も」


振り向くと、源次郎が大泣きしていた


「源次郎?如何した?」


「申し訳ありませぬ。若様、岸殿ご夫婦の願い、どうにか出来ませぬか?このままでは、智殿家族の様になってしまいます


我が子の晴れ姿を見られないだけでなく、会えない様に仕向けるなど、間違っております。過ぎた物言いである事は分かっております。ですが」


「「若様!我々からもお願い致します!」」


源次郎が平伏しながら懇願すると銀次郎も新左衛門も平伏しながら懇願してきた。


まったく、小吉の時もそうだったけど、お前達、子を思う親の愛情に弱いよな。それは俺もだけどな。


分かったよ、流石にこれは見過ごせないからな。じっくりと計画を立てて動こうじゃないか


「三之丞!かえで!」


「「は、はい」」


「2人の子の孫六を、今すぐに取り返す事は約束出来ぬが、それでも儂に仕えたいか?」


「「はい!柴田六三郎様の家臣として働き、いつか孫六を。う、うう」」


2人共、泣き崩れました。殿と親父と俺が生きなきゃいけない理由が増えたけど、じっくりと秀吉を弱体化させて、親子感動の再会を叶えてやろうじゃないか!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ