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お迎えの使者を驚かせたい

天正五年(1577年)三月三十日

美濃国 柴田家屋敷にて


「若様!織田様からの文でございます」


「父上に何かあったのか?どれ」


皆さんおはようございます。お袋の錯乱から1ヶ月が過ぎて、それ以降特に何も無く過ごしております柴田六三郎です。


あの時のお袋を見たら、俺を満福丸に重ねて見てる時があるのは分かるんだけど、秀吉がそこまでやるとは思ってなかったよ。8歳の子供を槍で串刺しはなあ


史実の話で言うなら、大坂夏の陣で捕まった秀吉の孫の国松も8歳で処刑されたんだよな。これに関しては、因果応報としか言えないけど


まあ、それで俺や妹達に何か起きない様に気をつけて動くしかないか。で、殿からの文は


「六三郎。お主達が保護しておる古茶殿親子だが、来月、遠江国から二郎三郎と於大殿を中心とした面々が


そちらに行って、しばらく世話になってから、連れて帰るそうじゃ。その滞在期間中は、引っ越しの準備をやめて、


世話をする事に集中せよ。権六にもその事は伝えてあるから、安心せい」


うん。これは、皆に伝えておかないといけない案件だな。一旦、全員集合だな


「若様。此度はどの様な事で赤備えの皆だけでなく、水野様、古茶様まで集められたのでしょうか?」


「うむ。今から話す事が重要だから、皆に集まってもらった。水野様や古茶殿にもじゃ。


改めて話すが、皆も知ってのとおり、古茶殿親子は安全の為に、柴田家の領地に一時的に避難しておった。


だが、およそ2年前に、徳川様の御正室の築山様から、古茶殿を徳川様の御側室と認めていただき、


頃合いを見て、徳川家から迎えの使者が来る事になっていたが、今日その事を記した文が岐阜城の殿から届き、


来月に徳川様御本人と御母堂の於大様を始めとした面々が、此方に来るとの事。そして、滞在期間中は、


越前国への引っ越し準備をやめて、徳川様一行のお世話をしろとの事じゃ」


「六三郎殿。それは儂も顔を見せた方が」


「水野様の場合、水野様が顔を見せずとも、於大様が見に行くと思いますぞ」


「確かに、それは否定出来ぬ。まあ、その時はその時じゃな」


「ええ。そこは水野様にお任せします。そして、古茶殿」


「はい」


「於義伊様と於古都様に、父親を紹介出来るのです。楽しみにしていてくだされ」


「はい。誠にありがとうございます」


「では、皆。徳川家の方々が来た時は、粗相の無い様に」


「「「ははっ」」」


とりあえず、於大様が過ごした過去2回の時みたいにやれば大丈夫かな?


天正五年(1577年)四月十日

美濃国 某所


前月の徳川家来訪のお知らせから十日後、家康達は柴田家屋敷まで、残り少しの距離まで来ていた


「岩村城から近いと聞いていたが、一刻くらいで着きそうじゃな。柴田家の領地には。改めてじゃが、


よく当時の武田に勝てたものじゃな六三郎は。のう、平八郎」


「拙者もそう思います。柴田家の屋敷は見た感じ、お世辞にも防衛能力は高くないので、だからこそ六三郎殿は、あの時、籠城策を取らなかったのかもしれません」


「ふっふっふ。平八郎と小平太が歩く事もままならない程、疲れ切った上り坂も早く見たいのう」


「二郎三郎。本来の目的は古茶達を連れて帰る事ですよ。それを忘れてはいけません」


「母上、それは承知しております。ただ、やはり心躍る話ばかり聞かされていたので、楽しみなのですよ」


「それならば良いですが、あの時の平八郎や小平太みたいに、二郎三郎まで動けない事になったら、誠に恥ずかしい事ですからね」


「それは気をつけます。それよりも母上、柴田家から迎えの使者が来た、六三郎殿?」


「徳川様、そして皆様、お待ちしておりました。ささ、屋敷へ御案内します」


六三郎の登場に家康は驚いたが、他の面々は1回は柴田家に世話になっているので、これを知っていた。


そして、徳川家一行が屋敷に到着すると、


「さ、徳川様。上座へどうぞ」


「うむ。しばらくの間、世話になるぞ」


「ははっ快適に過ごしていただける様に務めます」


「うむ。では六三郎殿、古茶達を連れて来てくれぬか」


「かしこまりました」


家康に言われて、六三郎は古茶親子を大広間に連れて来た。その時の着物を見て、家康は驚いた


「おお!古茶よ!於義伊と於古都の着物は、どこで手にしたのじゃ?何とも見事な色合いであるが、


二人の身の丈や身幅に合致しておる。これは儂は商人から買って送らせた記憶が無いが」


「殿。こちらは、六三郎様の母君に仕える女中の方々が作ってくださったのです」


「そうか。六三郎殿、その女中に礼を言いたい。連れて来てくれぬか?」


「かしこまりました」


そして、六三郎が連れて来た女中は智と伊都だった。


「徳川様。この2人が作ってくれた者達です」


「うむ。二人共、面を上げて名を教えてくれ」


「智と申します」


「伊都と申します」


「そうか、ん?智とやら、何処かで見た事ある様な」


「徳川様。その既視感は当たっております。こちらの智は、殿の家臣の羽柴様の姉君なのです」


「おお!そうか!どうりで見た事があると思った!成程、羽柴殿は色々出来る器用な人であったし、


その姉が我が子の着物を作れても不思議ではないな。そして、同じく着物を作ってくれた伊都、その方にも感謝いたす」


「「勿体なき御言葉にございます」」


「うむ。では、改めてじゃが於義伊、於古都。儂がお主達の父じゃ。色々あって会うのが遅くなり、済まぬ」


家康が子供達に呼びかけると、


「「とと様?」」


戸惑っている様子だったので、


「二人共、殿が呼んでいるのですから、お返事なさい」


「古茶、良い、初めて会うのだから身構えるのも仕方ない。少しずつ慣れていくしかあるまい。今も六三郎殿の手を握ったままなのじゃからな」


「徳川様。拙者が2人と一緒に近くに寄れば、少しは大丈夫と思いますので、寄ってもよろしいでしょうか?」


「そうじゃな。ものは試しじゃ。やってみよう」


「では。2人共、儂と一緒に2人のとと様のお側に行ってみるか」


「「はい」」


で、俺が2人の手を引いて家康の前に行って、


「2人共、自己紹介をしてみなさい」


「はい!於義伊です」


「於古都です」


「おお。おお。しっかりと話す事が出来るとは。六三郎殿。感謝致す」


「徳川様。これは第一歩です。4年という長い時は、簡単には埋まりませぬ。若造が偉そうな言い方になってしまいますが、少しずつ、2人と過ごす時を増やしてくださいませ」


「うむ。忝い。ところで六三郎殿。ひとつ聞きたいのじゃが、於義伊と於古都は、同年代の子よりも、身の丈が高い気がするのじゃが、どの様な物を食していたのじゃ?」


「徳川様。丁度、昼飯に良い頃合いなので、2人の好んでいる食事をお出ししましょう」


「期待しておるぞ」


さあ、子供も大人も大好きなあれを作るぞ!

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