盛大な宴会と発表
「皆!盃は持ったな!?」
「「「ははっ!」」」
「うむ。では、源太郎の嫡男誕生を祝って、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
皆さんこんばんは。昼間に源太郎と光の夫婦に男児が誕生した事を祝う宴会が開かれているのですが、
まさかの殿が音頭を取ってくれている事に驚いております柴田家六三郎です。
本当なら、俺が色々準備して赤備えの皆と盛り上がるんだけどさ、まさかの殿が、
「慶事は皆で分け合うものじゃ!」と、小姓の蘭丸君や明智様も巻き込んでの大宴会になりました。
出産した光は流石に参加出来ないけど、光の妹の花と、この度お婆ちゃんになったつるさんは参加しております。その他、智さんも伊都さんも、
それこそ古茶様も参加して、源太郎におめでとう。と言ってお酒を注いでおります。
で、そんな中、源次郎は
「兄上が遂に親になるとは。なんと良き日か。四年前に若様に仕える事を選ばなければ、これ程の幸せは来なかった」
と、大泣きしてます。それを見た源太郎は
「源次郎。お主がそこまで泣くと、儂は泣けないのだが?」
「申し訳ありませぬ。ですが」
「はっはっは。源太郎、源次郎には負けるが、儂の弟の三十郎も儂の慶事を自らの事の様に喜んでくれる。
その様な兄弟は、この戦国の世では中々居ない。だからこそ、お互いを大切にするのじゃぞ」
「「ははっ」」
「そして、つる殿。初孫の誕生を皆で祝おう。柴田家で一年に二人も子が産まれたとは、正に吉兆。
六三郎が元服前から働いて、織田家に銭をもたらし、戦で勝利をもたらしただけでなく、慶事も起こしたのだから、まさしく「神童」じゃな」
「織田様。初孫の誕生をこれ程までに盛大に祝っていただいた事、とても嬉しく思います。四十三で孫を抱ける日が来て、これ程」
そこまで言うと、つるさんは泣いていた。それを見た源太郎は
「義母上。これからは孫に囲まれた暮らしが待っております。数年後には源次郎と花の子も居るでしょうから、まだまだお元気で居て欲しいですぞ」
「ふふっ。勿論、可愛い孫が抱けたのですから耄碌するわけにはまいりませぬ。源太郎、二人目も楽しみにしてますからね。
源次郎と花。若様が言っていた、「子を産むなら二十歳になってから」を守りなさい」
「ほう。六三郎よ、その様な子を産む決まりを何故決めたのじゃ?早いうちに子を産んだ方が良いと思うのじゃが?」
殿から聞かれたから答えるけど
「殿。確かに早く産んだ方が良いでしょう。拙者の最初の母上の話になりますが、二十歳になる前に拙者を産んだ後、寝込む事が多くなったと、
父上から聞いたのです。だからこそ、体力的な事も考えて二十歳ぐらいが問題なく子を産んだ方が良いと決めたのです。勿論、強制はしません。
あくまでそれぞれの嫁の身体の為にです」
「そうか。六三郎を産んだ母は」
暗い空気になりそうだから
「殿!拙者の事よりも、源太郎に何か御言葉を」
「うむ。そうじゃな!改めてじゃが、源太郎!これより先、辛い事も苦しい事も出てくるであろう。
だが、我が子が産まれ、皆と祝った今日を思い出せば大概の事は乗り切る事が出来るはずじゃ」
「ははっ!織田様に言われました「我が子と嫁に恥じない男になれ」の言葉を胸に刻み、若様と赤備えの皆と共に戦う所存にございます」
「うむ。さて、話は変わるが、一部の者は六三郎から聞いておるであろう。来年、柴田家はこの地から越前国の南部に領地替えが決まった。
だが、当主である権六は京の警護をやっていて忙しい。そこで、来年の五月を目処に六三郎の差配で、
領地へ移動する様に準備しておく様に」
「「「ははっ!」」」
「六三郎!最期にお主から何か言って、宴を閉めようではないか」
(俺?こんな場では、立場的に殿が閉めの挨拶して欲しいんだけどなあ。仕方ない)
「では、殿に指名されましたので。さて、大体の事は殿が仰ってくださったので、簡単に話すが、
来年の五月を目処に新しい領地へ移動する。その地は、政治的にも軍事的にも敵に取られてはならない場所である。
その場所を我々柴田家が治める事は、殿は柴田家が絶対にその地を守り抜く事が出来る家であると、期待しておる証。父上や家臣達の古強者達には
まだまだ劣るかもしれぬが、我々は出来る事をやろう」
「「「ははっ!!!」」」
「そして、改めてじゃが源太郎!子の誕生、誠にめでたい!いつになるか分からぬが、儂の子が産まれたら、
お主の子が儂の子の良き友であり、主従になれる事を楽しみにしておるぞ」
「有り難き御言葉にございます。子も産まれて、改めて柴田家の為に、この命尽きようとも、全身全霊で働きまする」
「うむ。戦無き世を見る為に頑張って行こうではないか。源太郎だけではないからな」
「「「「ははっ!!!!」」」」
「うむ。では、明日の為に解散じゃ」
「「「ははっ」」」
こうして、源太郎の男児誕生の宴会はお開きになった。




