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主君に報告したら

天正四年(1576年)十一月二十五日

美濃国 岐阜城にて


「殿。柴田六三郎殿からの文でございます」


「ほう。また何か面白い事でも起きたのか?


どれ「殿へ。父上にも殿にもお伝えしないといけない事が出来ましたので、報告します。


半年程前に見せていただいた、武田家重臣の山県殿の嫡男の山県源四郎殿が武田を出奔して、召し抱えて欲しいと頼んで来たので、現在、客将という形で理財を始めとする内政の指導役として、


拙者より歳下の子達へ教えてもらっております。このまま行けば、召し抱えようと思います。


本人曰く、「自分は赤備えの大将であった父から内政に専念しろと言われたので、戦は殆ど出なかった」との事です。


そして、最大の懸念であった飯富兄弟との件も、どうにか解消出来た様です。


利兵衛達と子達の間の年齢で理財や内政が出来る貴重な人材なので、じっくり柴田家に馴染んでいけば。


と思っております。そして最期に、源四郎は柴田家に来る前は駿河国の江尻城で城代をしていたそうですが、


甲斐国の武田の中枢の者達が、長篠と設楽原の戦で敗れて以降、急速な建て直しや軍備の増強の為に、


源四郎の様な立場の者に「前月より銭を二割増しで出せ」と無理難題を言っているそうです。


源四郎はその要請を断っていたそうですが、前月に「前月より銭を五割増しで出せ」と言われて、色々と限界が来てしまったとの事なので、


当面は大きい仕事はやらせずに、小さい仕事をやらせたいと思います」


六三郎からの文を読んだ信長は、


「やはり山県の倅が六三郎の元に来たか。誠に訳ありな者を引き寄せる力があるのう。とりあえず権六に届けてやるか。


しかし、前月より銭を二割増しで出せ。とは、武田も相当躍起になっておるな。駿河国は湊が有るから交易が可能とはいえ、


くっくっく。これは、良い情報じゃ。だが、更に六三郎から聞きたい。いや、件の山県源四郎から直接聞きたいものじゃな」


「殿。楽しそうな顔をしておりますが、何やら企んでおりますね?」


「帰蝶よ。企んでおるわけではない。驚かせてやろうと考えておるだけじゃ」


「ほほほ。物は言いようですね」


「お蘭!六三郎へ文を出す!内容は「市の四人目の娘に会いに行くから、色々と準備しておけ」としておこう。二十日後くらいに到着予定とも書いておけ」


「ははっ!」


こうして、信長の何か別の事も含めた柴田家訪問が決まった。


天正四年(1576年)十二月五日

美濃国 柴田家屋敷にて


「若様!織田様より文でございます」


「殿からと言う事は、例の文を父上に届けてくださったのかな?に、してはかなり早いと思うのだが、どれ」


六三郎が文を開くと、


「はあっ!!!?」


「若様。織田様はなんと言われておるのですか?」


「利兵衛。母上と水野様と源太郎と源四郎を呼んで来てくれ。全員揃ったら話す」


「かしこまりました」


そして、利兵衛が全員連れて来ると


「母上、水野様、源太郎、源四郎。いきなり呼んで申し訳ない。実は全員に伝えておきたい事が出来たのです」


「どの様な事ですか六三郎?」


「柴田殿に何か起きたのか?」


「若様。何処かへ出陣ですか?」


「いや。戦に直接関わる事では無いのだが、十日後を目処に殿が此方へ来るとの事なのですが、その文の内容が、


表向きは末の妹の文に会いに行く。と言っておるのだが」


「六三郎。表向きと言う事は裏向きの事もあるのですね」


「はい。裏向きの理由は源四郎から、武田の内情を聞きたいとの事です。それ以外の理由として、


この土地の領主の役目を父上から引き継ぐ予定の明智様が付き添いで来るとの事です。


源太郎、明智様は赤備えの皆と合同訓練をしたいから、家臣の方々を数名連れてくるそうじゃ。源太郎にはその事を赤備えの皆に伝えて欲しい」


「ははっ」


「うむ。それから源四郎」


「ははっ」


「殿はお主に色々聞いてくると思うが、全て正直に答えてくれ」


「はい。知っております武田の全てを答えます」


「うむ。よろしく頼むぞ。水野様も呼び出しして、申し訳ありませぬ。殿から水野様へ「弛んでいないか見るからな」とも有りましたので」


「はっはっは。何とも殿らしい。儂はいつも通り、三吉に色々教えて、赤備えの皆に教養を学ばせるという、いつも通りに過ごすだけじゃ」


「その三吉の事なのですが」


「まだ、何かあるのか?」


「三吉と道乃に会う為に、帰蝶様も御同行するとあります」


「六三郎!それを早く言いなさい!」


「母上?何故、その様に慌てて」


「慌てるに決まっているでしょう!道乃が茶々や初と同じ様にお転婆に長刀を振っている姿を見たら、


義姉上に絶対小言を言われます!その時は、三郎兄上は絶対に助けてくれないのですよ」


「母上。もう日が無いのですから、無理して取り繕う事は諦めましょう。それに殿も帰蝶様も、むしろ褒めてくださると思います」


「それなら良いのですが」


「いざとなったら、つる殿を連れてきて長刀を毎日振っている事が、美の秘訣と説明したら帰蝶様も納得してくださいましょう」


「そうなる事を祈りましょう」


「母上。ありがとうございます。話は変わるが源太郎よ、そろそろ光の出産も近いのではないか?」


「若様。恐らくなのですが、織田様が此方へ来る時期と光の出産時期が被っておりまして」


「それは」


俺がどうしようか考えていると、


「源太郎!」


お袋が喋り出した


「源太郎!光の出産の日は、光の側に居てあげなさい!初産なのですから、不安でいっぱいでしょう。


そんな光の側に居て、手を握ってやりなさい!三郎兄上が何か言って来ても、私や六三郎が盾になります!ですよね!六三郎!」


「それは勿論です。源太郎、父上の姿を見たから言うが、出産の時、男は祈る事や側に居る事しか出来ぬ。


ならば、光の出産時は側に居てやれ。その日は訓練を含めて、全ての事をやらなくても良い」


「ははっ。その日が来ましたら、若様のお言葉に甘えたいと思ってます」


「うむ」


とりあえず、殿達一行が来る前に産まれたら源太郎も気が楽だろうけど、滞在期間中に産まれるなんて事、ありそうだなあ


知らず知らずのうちにフラグを立てる六三郎だった。

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