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殺気立つ面談

商人の皆さんは、古茶さん達の所へ行かせて、俺は問題の山県さんから話を聞く為に、大広間に来る様伝えたんだけど、


「赤備えの皆、儂はこちらの山県殿と話がしたいから大広間に移動させたのに、何故、皆も来ておる?」


俺の質問に源太郎が


「若様。この者は、それなりの立場がある人間です。そんな者が、商人達の隊列に紛れ込んでまで、柴田家に来るとなると、


若様や大殿の命を奪いに来た事を疑うのは当然です。幸いにも、槍も刀も我々に預けておるとはいえ、油断は禁物です」


と、納得出来る理由を言ってるんだけど、1人に対して門番以外の196人が殺気をぶつけていたら、萎縮するだろ。とりあえず、話を進めるか


「さて。山県殿。先ずは名を名乗ってくだされ。そして、此処に来た目的を教えていただきたい」


「ははっ。拙者は山県源四郎昌満と申します。亡き父の遺言と取れる文を読み、そして現在の武田では将来が不安しか無かった為、全ての役目を終えてから、


出奔して来ました。父からの文が柴田様に届いております可能性を信じて、そして新たな仕官先として、此方に来たのです」


やっぱり山県殿の子か。でも、「仕えさせて」、「いいよ」とは簡単には出来ないよなあ。他にも聞いてみよう


「山県殿。いくつか聞くが、正直に答えてくだされ」


「ははっ。包み隠さずに全てお答えします」


「うむ。では先ず、武田にはいつまで仕えておった?」


「前月まで仕えておりました」


「山県殿が主に担っていた役目は、どの様な内容であった?」


「拙者の主な役目は、亡き父が城代を務めておりました、駿河国の江尻城周辺の年貢や銭の徴収を請け負っておりました。父が亡くなってからは城代の職に就いておりました」


「ふむ。山県殿のお父上は儂の様な若僧でも名を聞く程の名将であるが、そのお父上とは共に出陣しなかったのですかな?」


「何度かは有りました。ですが、父から「お主は戦は凡庸じゃ。それでは赤備え達は着いて来ないであろう。


ならば儂が城代を務める江尻城の内政に専念せよ。と、言われまして、それ以降は内政に専念しておりました」


「成程。山県殿は、自身をお父上の様な猛将ではないと」


「はい。拙者は武将としては、最低限の能力しか無いと自覚しております。ならばせめて、前線で戦う父達をお支えしようと思って、内政を必死に学んだのです」


「ふむ。その甲斐あって、お父上の城代の職を継いだというわけですか。しかし、その城代という職を捨ててまで、出奔した理由を教えてくださるかな?」


「出奔した理由は、先程お渡しした拙者の荷物の中に入っております、父からの書状を見ていただけたら


分かると思います。読んでいただいても構いませぬ」


「ならば、見させてもおう。利兵衛、持って来てくれ」


と、俺が命令すると、利兵衛が風呂敷を持って来た。その中から文を3通見つけて、その中の1通を読んでみると、俺の名前は無かったけど、出奔の理由は何となく分かった


「ふむ。山県殿。お父上からの文を見ると、武田の現在の当主が立場が弱く、周りの佞臣が幅をきかせたら領民に重税を課す様になり、


それは家が滅亡への第一歩だから、そうなった場合は、出奔しても構わない。と、あるな、それで出奔を決意したと」


「はい。それこそ父が亡くなった後から、ほぼ毎月の様に「前月の二割増しで銭を出せ」と言われ続けておりましたが、


拙者は城代の立場として拒否して、いつもどおりの銭を出していたのですが、前月、ついに武田の者達は


「前月の五割増しで銭を出せ」と言ってきました。どれ程の抗議をしても武田の重臣達には届かないので、


これはもう、滅亡へ歩み出していると判断した結果の出奔でございます」


「成程。領民を守りたい気持ちは有ったが、色々と限界が来てしまったと」


「不甲斐ない、情けないと言われても仕方ない事ではありますが、最早、拙者では何も出来ないと分かったのです」


「そうか。山県殿の思いについて偉そうな事は言えぬが、内政が出来るならば、とりあえず内政の指導役に」


「若様。よろしいでしょうか?」


俺の発言途中だけど、源次郎が何か言いたい様だ


「源次郎。何かあるなら言ってみよ」


「そこの山県源四郎は、我々と歳が近いのです。我々赤備えと同じ訓練が出来るか出来ないかを見せてもらいたく」


源次郎は山県さんが赤備えの訓練をクリア出来るかやらせろ。と言っている。正直、それは。と、思っていたら源太郎が


「源次郎!いい加減にせんか!」


ブチ切れた。皆が驚いているけど源太郎は続ける


「儂達の父上の事を、山県殿にぶつけるでない!!その身ひとつで、城代の立場を捨てて柴田家に仕官の申し出に来たのだぞ!


本来なら家臣数人連れていてもおかしくない立場なのに、その身ひとつで来た時点で、覚悟を決めてきた事が分かるではないか!」


「し、しかし兄上」


「源次郎!お主も嫁をもらって一家の大黒柱になったのだから、感情を抑える事を覚えよ!」


「分かり、ました」


「若様。申し訳ありませぬ。お話の続きを」


「ああ。済まぬな源太郎。さて、山県殿。改めてじゃが、直ぐに召し抱えるわけにはいかぬ。なので、しばらくは客将の形で、内政の指導役として」


俺が説明していると、山県さんから


「柴田様。先程、飯富源次郎殿が言っていた訓練を受けたいのですが、よろしいでしょうか?」


「いや、内政の指導役をやるだけで良いのですぞ」


「いえ。先程、飯富源太郎殿が言っておりましたお父上の件、拙者の父は遺言状で後悔を滲ませておりました。ならば、


拙者は父の後悔も背負って生きていかなければなりませぬ。なので、飯富源次郎殿が言っておりました訓練を受けて、拙者を微々たる程度で構わないので、


共に柴田家に仕える者として、敵対心を無くしてもらえたらと」


真っ直ぐな目で見てるし、これはやらさないとダメだろうな


「分かった。山県殿。そこまで言うならば、赤備えの訓練に参加してみよ」


「有り難き」


どうなるかなあ。体型的には動けそうだけど、何故か俺が緊張してます。

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