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裁決が決まったから帰ると

天正四年(1576年)十月二十五日

美濃国 岐阜城にて


「皆!本願寺との会食という名の戦、誠にご苦労であった!特に六三郎!料理人達が居ない中、よくぞ一人で乗り切っただけでなく、織田家に勝利をもたらし、


自身だけでなく、権六と十兵衛にも官位が与えられる程の栄誉を賜るとは!権六、まだまだ先の事じゃが、


これ程の働きを見せる六三郎ならば、いつか家督を譲っても柴田家は安泰じゃな!はっはっは」


皆さんおはようございます。身も心もダメージを負った料理対決が終わって尚、疲れております柴田六三郎です。


あの後、本願寺のクソ坊主共が、大声でイチャモンをつけたのですが、主上から、直訳すると「お前ら、自分達の料理は美味くて、身体にいい料理だから、有り難く頂戴しろ」みたいな料理を出してたけど、


六三郎の料理はお前らの料理と違って、俺の身体を気遣ってくれた温かい料理だから、織田家の勝ちにしたんだよ!何が文句あるの?あるんなら、お前ら本願寺全員、それこそ信者も含めて、全員朝敵認定するよ?」


と、中々の言葉が出たので、本願寺のクソ坊主共は引っ込みました。で、その結果なのかは分かりませんが、殿が右近衛大将という官位を、親父が左京大進という官位を、明智様が日向守の官位を、


そして俺が大膳史生という官位を貰ったんだけど、

俺が官位貰っても、こんな若僧に権威とか箔なんて出ないだろ。今の所は。


でも、俺の官位のトップは大膳大夫と言うらしいけど、聞いたところ、俺の官位の11個も上らしい


これはつまり俺の官位は何かしらのイベントの参加賞みたいな物なんだろうな。まあ、貰っておいて損が無いなら貰っておこう。で、さっさと領地に帰りたいし、


「父上。領地への出立はいつになさいますか?」


親父に聞いたら、


「その事じゃが六三郎よ。お主、先に戻っておけ。お主だけならば、霜月の頭頃には領地に着くであろう。


だから先に戻っておけ。儂はやらねばならぬ事があるから、それが終わったら領地に戻る」


「はあ。分かりました。では、拙者は明日にでも出立しますので」


俺はそう言って殿と親父と明智様の居る大広間を出た。これでしばらくは親父の越前国への移動が先延ばしにならないかなあ。


六三郎が口には出さないけど、のほほんとした願望が頭に出ていた


天正四年(1576年)十月二十八日

駿河国 江尻城内にて


場所は変わって、此処は駿河国の江尻城。城代を務める山県昌満は主家の武田家からの文を見て、怒りが出ていた


「もう無理じゃあ!この様な要求、聞く事が出来る訳が無かろう!何故、甲斐国に居るお館様たちは、それが分からぬ!


銭を五割増しで出せなど!無理に決まっておるではないか!駿河国は海があるから多少は交易で銭儲けが出来るとはいえ、常に銭が溢れているわけではないのに、


何故それを分かってくださらぬ!これでは、儂も銭を出せなかったとして処罰されて、立場も下の下に落とされるかもしれぬ。


そうなったら、お館様の側の佞臣共が更に幅を利かすだろう。そうなってしまえば、武田の滅亡は不可避じゃ。儂は先代の信玄公の頃から仕えておるが、


父上は「出奔するも、仕え続けるも自由」と仰っていた。ならば、先行きが不明、嫌、絶望的な先行きしか見えない武田に仕えても意味はないか


ならば、全ての書類と出奔の文を残して、出奔しよう」


翌日


「ご家老!ご家老は居りますか?」


「何じゃ騒々しいのう。何かあったのか?」


「ご城代が」


「ご城代がどうかなされたか?」


「武田を出奔なされました」


「はあ!お主、それは誠か!?」


「誠にございます!朝、ご城代が起きてこないので、部屋に呼びに行ったら年貢や銭に関する書類の全てと、


出奔の意志を示す文が有りました。こちらにございます」


家臣から文を受け取った家老は中を読み出す


「ふう。どれどれ「江尻城の皆へ。儂の様な、親の七光りで城代の職に就いた若僧を補佐してくれたのにも関わらず、出奔した事、誠に済まぬ。


儂は甲斐国のお館様や、その周りの者達から、この一年間、「銭を前月の二割増しで出せ」と言われても、そんな銭は無いと拒否してきた。だが、今月、「銭を前月の五割増しで出せ」と言われて、限界が来てしまった。


儂はもう死んだ者として、扱ってくれ。父上や伯父上は先先代の信虎公の時代から、武田に仕えて来たが、


もう、儂には無理じゃ。済まぬ」と。ご城代。それ程追い込まれていたとは。ご城代が居ないならば、甲斐国へ文を送り、新しいご城代に来ていただく他ない


新しいご城代が来るまでは、儂が臨時で城代の代理を務めるしかないか」


家老の顔には苦悩と疲れが出ていた。そんな事を知らない昌満は、


「何と晴れやかな気分か。本来ならば有り得ぬ事じゃが、父上も好きにして良い。と仰っていたのじゃ、


儂もやるべき事を全てやってから出奔したのだから、色々言われても無視しよう」と、


言葉的には少しは気にしているけど、重い仕事から解放された事で浮かれている事が見えている。そんな昌満は


「さて。何とか舟と馬を乗り継いで駿河国を出て、遠江国へ着いたが、流石に徳川家に仕えたいと頼んでも、まず無理であろうから、


うむ。やはり美濃国に居るであろう、「柴田の鬼若子」と呼ばれる若武者の元へ行ってみよう。


ただ、儂みたいな武士が一人で歩いていたら、変な目で見られるかもしれぬ。どうやって美濃国へ入るか?」


昌満が悩んでいると、目の前に商人の隊列があった。商人達の荷車が溝に嵌って動けなくなっていた様で昌満は


「お助けしよう」と言って、荷車を溝から出した。その事で商人の代表者が


「お侍様。ありがとうございます」


「いや。礼には及ばぬ。ところで貴殿達は今からどちらへ?」


「我々は今から美濃国の柴田様のお屋敷に商品を届けに行くところです」


「誠か?実はな、儂は柴田様に仕えたい思っているのじゃが、武士が一人で居ては変な目で見られるから、


誰か共に行ってくれる者を探しておったのじゃが、商人殿!柴田様のお屋敷へ行く道中、儂が護衛を請け負うから、隊列に入れてくれぬか?」


「助けていただいた恩をお返しするのが、その様な形でも良いのであれば、我々は構いませぬ」


「うむ。忝い!」


こうして昌満は怪しまれない形で、美濃国へ入る事に成功した


天正四年(1576年)十一月十日

美濃国 柴田家屋敷にて


「門番の方。遠江国の徳川様より、御側室様の御子たちへの衣類を含めた品をお持ちしました」


「古茶さま親子への品ですな。おーい。若様か利兵衛殿へ伝えてくれ!」


門番の声に反応して、源次郎が出て来た


「何を伝えるか言わないと分からぬと、前も言った」


隊列の中に居る昌満を見た源次郎は、


「待て!お主、山県の子ではないか!」


屋敷に響き渡る大声で叫ぶ。その声を聞いて、六三郎も利兵衛も源太郎も集まる。そして源太郎が


「源次郎。何を叫んでお」


昌満の顔を見て固まる。その状況に利兵衛が、


「若様。とりあえず全員、中に入れましょう。そうでないと収拾がつきませぬ」


「それもそうじゃな。とりあえず、商人の方々も、そこの武士も、中に入りなされ」


と、六三郎に事態をまとめさせたが、当の六三郎は


(また、俺の仕事が増えるみたいだなあ。頼むから、トラブルを起こしやすいトチ狂った人じゃないでくれよ)


と、またフラグを立てていた。

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