これもある意味では戦
天正四年(1576年)十月十三日
山城国 御所にて
「顕如め。そこまでやるとは思わなんだ。停戦合意をしたのにも関わらず、まさか岐阜城から料理人達が来られない様に僧兵で包囲するとは」
「これでは、料理を作れる者が六三郎殿しか居ない事に」
皆さんおはようございます。現在、絶望的な状況におります柴田六三郎です。先程、殿と近衛様の会話で分かると思いますが、本願寺側は何としても勝つ為に、
まさかの料理人を参加出来ない様に岐阜城を包囲するという力技に出るとは。俺達武士よりやる事えげつないな。
本願寺側のせいで、俺が全部の料理を、お手伝いの人と一緒に作らないといけない事になったんです。チクショー!料理は楽しみたい人間なんだけどなあ俺は
俺がそんな事を考えてると、怒りの元凶が憎たらしい顔で此方にやって来た
「これはのれは織田家の方々。随分と早くに来ておりますなあ。不測の事態でも起きたのですかな?」
「これはこれは本願寺の方々。いきなり不測の事態とは、何か知っておるかの様な物言いですなあ。まさか、信者を使ってよからぬ事でも?」
「はっはっは。その様な恥ずかしい事をやる気概、唯の僧侶である拙僧にはとてもとても。それよりも織田殿。料理人の姿が見えない様ですが、何かありましたか?」
「確かに「何故か」料理人達が岐阜城から出られない状況になっておるが、心配無用!岐阜城の料理人達に
新たな料理を教えた者が料理を作るのでな。楽しみに待たれよ」
「はっはっは。何やら自信がある様で。それでは楽しみに待たせてもらいましょう」
高笑いしながらくそ坊主達はその場を去った。凄いムカつくけど、あいつら黙らせる為に死ぬ気で料理を作ってやる!
俺の考えが分かった様で、殿は
「六三郎!大変な役目になるが、お主なら出来ると儂は見込んでおるぞ」
と、言われて、近衛様からは
「六三郎殿。本能寺で食べさせてもらった料理の様に、固定概念など捨てて料理を作りなされ」
と激励されて、明智様からは
「六三郎殿。手伝う人間が足りなければ、いつでも呼んでくだされ。手伝いますぞ」
と宣言されて、最後に親父から
「六三郎!儂は料理に関しては偉そうな事は言えぬ。だが、娘達の好きな物を作った様に、相手の事を考えて、料理を作るのだぞ」
と、珍しく優しい言葉を言われた。うん。何か、肩の力が抜けた気がする。よっしゃ!カルト宗教のクソ坊主の思惑を潰す、美味い料理を作りますか
で、色々準備をしておりましたら、連絡役の人から
「織田家の料理番の方、本願寺側より「織田側は料理人が全員来てない様ですので、我々が先に料理をお出しするが、宜しいか?」との事ですが、宜しいでしょうか?」
これは幸運かもしれない。相手が出している料理と被らない物を作れるし、考える時間が出来た。ただ、本願寺側の料理も知りたい。この連絡役の人に織田家の誰かに伝えてもらおう
「はい。織田家が後にお出しする事で構いませぬが、申し訳ありませぬ。織田家の出席者の誰かに、拙者に本願寺側がどの様な料理を出したか、伝える役目をして欲しいと拙者が言っていたと、お伝え願います」
「分かりました」
返事をして、連絡役の人は戻って行った。さて、本願寺のくそ坊主共は、きっとドヤ顔で殿達にごちゃごちゃ言ってるんだろうな
六三郎が色々と考えている頃、会食会場は緊張感に包まれていた
「織田殿。我々が先に料理をお出しして、誠に良いのですかな?」
「早くお出しすれば宜しかろう。我々の料理人は全員集まるまで時を要する。そちらの料理を全てお出ししている頃には全員集まっておるから、
今は居る者達で、準備に取り掛からせてもらおうではないか」
「織田殿がそこまで言うのであれば、我々本願寺が先にお出ししましょう。では、主上。我々の料理を御堪能くださいませ」
本願寺の代表の顕如の発言に、信長は内心苦々しく思っていたが、顔に出ない様に振る舞っていた。
そして、本願寺側が料理を出し始める。1時間で5品を出し、出番を終わらせた。そこから1時間の休憩を取ると主上が宣言する。
これは実質、1時間で5品作れと言われている事と同じだった。そして、織田家側の連絡役が来たのだが、
「父上と明智様?」
まさかの2人だった。時間もないので、出した料理を聞くと、菜の花の胡麻味噌和え、春菊の白和え、たたき牛蒡、蕪のふろふき、茄子の鍋しぎ。という、精進料理も含めたコースだった様だ
これは、あの条件をクリア出来たら、勝てるんじゃないか?と思ったので、親父と明智様に
「父上!明智様!料理道具を主上を始めとする皆様の前に持っていきたいので、その許可をいただいてくれませぬか?」
「何をする気じゃ?」
「父上!これは死人の出ない戦なのです!美味い物をお出しする為に、織田家が勝利を掴む為に、
拙者は出来る限り手を尽くします!なので、許可をなんとかいただいてくだされ!」
「ええい!分かった。十兵衛、すまぬが」
「柴田殿。勿論やります。若い六三郎殿が織田家の為に戦っているのです。我々年寄りも戦わないと駄目でしょう」
「忝い!」
「待っておれ」
で、親父と明智様が許可を取りに行ってる間に、更に準備を進めて、ほぼ完了したら、親父と明智様が戻って来て
「料理道具を持って来ても良いと許しを得たぞ!」
よし!準備は完了!許しも得た!舞台は整った!待ってろクソ坊主共!俺の胃痛の恨み、倍返しでぶつけてやる!