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母の出産と父の報告と問い

「父上!母上の様子は」


「まだ産まれておらぬ。だからこそ、神棚に母子共に無事である事を祈るぞ!娘達も祈っておる」


親父に呼ばれて言われるままに神棚に祈る事、およそ3時間。隣の部屋からは


「奥方様。もう少しです。頑張ってください」


産婆さんの声が響いている。お袋は唸り声に近い、いきんでる声しか聞こえないけど、かなり苦しそうだ。


そこから更に1時間後、


「おぎゃあー!おぎゃあー!おぎゃあー!」


産声が聞こえました。産婆さんから


「柴田様!産まれました!姫君です。奥方様も姫君も無事でございます。どうぞ、お子達とともに奥方様の元へ来てください」


呼ばれて、全員でお袋の部屋に行きました。


部屋ではお袋が産まれたばかりの赤ちゃんを抱っこして、微笑んでいます。俺達が来た事に気づいて、


「権六様。無事、娘が産まれました。六三郎、茶々、初、江。あなた達の妹です」


お袋が産まれたばかりの妹を見せてくれる。茶々達は新しい妹への元へ駆け寄るし、親父はお袋の背中を手をやりながら感謝していた。俺はと言うと、お袋に言われるまで気づいてなかったけど、


「あらあら六三郎。四人目の妹の誕生に涙を流して喜んでくれるなんて」


泣いていた様だ。それからは、親父が抱っこして、次に俺、そして茶々、初、江と順番に抱っこしていった


お袋に休んでもらう為に、俺達は外に出て親父は殿に誕生報告の文を書きだして、俺は赤備え達と利兵衛、そして利兵衛の元で学んでいる4人の元へ誕生報告をしに行った


赤備え達は特に喜んでいたんだけど、その理由の1つが


「年内に産まれてくるであろう、源太郎の子供と同い年の姫様とは、間違いなく吉兆じゃ!」と


主家の子と同い年の子は縁起いい扱いという、始めて知った事でした。遊び相手とか一緒に家を盛り立てる仲間。みたいな扱いなのかな?


まあ、赤備えの皆の喜び様は、俺の元服後の初陣が決まった時と同じぐらいだったし、きっと4人目の妹も可愛がってくれるだろう


で、次につるさん達女中に誕生報告に行ったら、


「次は光の子供が産まれるのですか?」


「妹と同じく可愛いのでしょうね」


「楽しみにしてます」


と、茶々、初、江の3人が光に話しかけていた。そんな3人に光は


「茶々様、初様、江様。産まれるのはまだ先の話ですが、産まれた時は見に来てくださいませ」


「「「勿論」」」


「うふふ。ありがとうございます」


3人をお姉さん扱いして、気分良く帰してくれた。たださ、ちょっと思うんだけど、この状況、お袋は出産したばかりで、光も年内出産予定だけど、


新しい領地である越前国への引っ越し開始は、いつからになる?俺としては、親父が先に行って、後から俺達が移動する形なら俺と一緒にお袋や光が移動出来るから良いんだけど、


まさかの逆パターンで、俺と一部の者達が先に行っとけ!みたいな事も有り得るか?


これは、親父と相談だな


同日夜

勝家私室にて


「父上。六三郎です。入っても宜しいでしょうか?」


「うむ。入れ」


「夜中に申し訳ありませぬ。父上に相談であり確認したい事がありまして」


「何じゃ?」


「はい。母上は出産して間もないから当然ですが、源太郎の嫁の光も年内に出産予定です。なので、


父上の新しい領地である越前国への引っ越しは、年内は無理なのでは?と思いまして、改めていつ頃から引っ越しをする予定かを聞きたく」


「ふむ。六三郎よ。新しい領地の事なら、儂からも伝えておかねばならぬ。しっかりと聞き、お主なりの考えを示せ」


「は、はい」


「実はな、殿はこの土地を任せる事の出来る者を決めきれておらぬ。それこそ、殿曰く、お主のやった事を全て禁止にする愚か者が後任だった場合、


今や京や堺で売れて、織田家の重要な財源になっておる上質な麦が無くなってしまうかもしれぬ。と、お考えじゃ


「それならば、この地を柴田家が再び治める流れにならないのですか?」


「それが、そうもいかん。その最たる理由が越前国全体が混乱しておるせいじゃ」


「何故、越前国全体が混乱しておるのですか?」


「三年前に越前国の守護だった朝倉を滅ぼしたが、その当時、殿は武田と本願寺の両方に頭を悩ませておられた。その結果、朝倉の旧臣だった前波という者に


国土を復興させながら治める様に命令したのだが、その前波を妬んだ富田という、同じく朝倉旧臣が戦を仕掛けた。その結果、前波は討ち取られ、富田が守護の座についたのじゃが


富田が前波を討つ為に助力を求めたのが、よりにもよって一向一揆じゃ。このままだと、越前国は一向衆の治める国になる。殿はそれを危惧しておる


そこで殿は、戦果次第ではあるが越前国を丸々儂に与えようと考えると同時に、越前国の北の四ヶ国を平定する軍勢の総大将にする事も考えておられるそうじゃ。


まだ確定しておらぬが、このまま行けばその役目を頂戴するであろう。その時にでも」


勝家の北陸方面軍の総大将就任という、史実と同じ流れが近づいている事を知った六三郎は


(まずいまずいまずい!西の毛利と戦う希望を以前の評定の場で遠回しに出したのに、俺の知ってる歴史と同じ流れになってる!このまま行けば、親父はそのまま北陸方面軍の総大将に就任して、当然俺は親父と一緒に北陸道を進軍する。


そうなったら、本能寺の変が起きた時、上杉軍の粘りと、情報伝達の遅さと、親父の性格の結果、秀吉が明智光秀を一早く討ち取って、織田家中で発言力を上げてしまう


これじゃその後、北ノ庄城で死ぬ事確定じゃないか!!どうする?どうすれば、本能寺の変が起きた場合、明智光秀を討ち取る事が出来る!?


ん?待てよ?明智光秀を討ち取る事ばかり考えていたけど、そもそもの話で、明智光秀が自由に動けない状況なら、本能寺の変は起きないじゃないか!


そんな状況になるとしたら、明智光秀を遊軍じゃなくて、親父の北陸方面軍に無理矢理捩じ込んでもらおう!


親父のこれまでの働きなら、殿は少なからず、いや、かなり融通をきかせてくれるはず。そうしよう!)


六三郎が新たな死亡フラグ回避の為に頭を回転させていると、


「そこで六三郎。六三郎!聞いておるのか!?」


勝家の雷が落ちた。


「申し訳ありませぬ。北陸方面軍の総大将就任の後は何でしたか?」


「ちゃんと聞かぬか。本来なら儂は、明智十兵衛と共に、京の警護を務めておるが、今月末には京に戻り、再び役目に就く。だが、その役目は家臣達に任せて、


まとめ役を藤吉郎が担う事になった。その結果、儂と十兵衛は一度、殿の岐阜城に戻る。その時に軍勢の編成を考える事になるが今の所、与力として又左と内蔵助までは決まっておるが、もう一人加えるとしたら」


「明智様にお願いしましょう!」


「十兵衛を儂の与力にしろと言うのか?」


「はい!歳上の方にこんな言い方をしたくありませぬが前田様も佐々様も、力攻めは得意でしょうが、それでは父上があれもこれもと細かい策を一人で考えなければならなくなります。


ならば、明智様の様に智勇兼備で広い視野を持った、父上と同じくらい総大将に適したお方に与力として参加してもらいましょう。それに、京の警護に共に就いていたのならば、気心も知れているでしょう」


「それはそうじゃが」


「父上。まさかと思いますが、羽柴様に与力になって欲しいと思っておりませぬか?」


「な、何故分かる?」


「分かりますよ。父上の子ですから。低い身分から現在の立場まで来た羽柴様に、更なる領地を持って欲しいと思っているのかもしれませぬが、


羽柴様の出自に物言いする人は絶対居ます。父上が名前を出した方では、佐々様がそうでしょう。軍議の最中に2人が言い争いをした時、父上は止められますか?


戦に集中している父上は、危険な場所は気にかけても、そうでない場所は放っておくのは、武田との戦での働きを聞いたら分かります。


だからこそ、父上が危険な場所に居る味方の救援に行った時、前田様も佐々様も明智様の采配ならば、素直に聞けるでしょうが、羽柴様の采配は佐々様が聞かないでしょう。そうなった場合、父上が味方を助けた後、


その場に父上や家臣の皆が残されてしまい、総大将が討たれるという最悪の事態になってしまいます」


「分かった分かった。そこまで言うなら、十兵衛を与力にしてもらう様、殿に進言してみよう」


「是非ともよろしくお願いします」


「話は変わるが六三郎よ。儂は市と再婚して、子が出来た事を殿と十兵衛以外には言っておらぬ。


儂を「親父殿」と慕う又左にもじゃ。お主に問うが、

この事は付き合いの長い者に伝えた方が良いか?」


(え?親父、何かあったのか?そんな事を聞いてくるなんて。でも、人の嫉妬や妬みは恨みや、それこそ殺意になる可能性が高いしな)


「父上。拙者の考えですが。夫婦になって10年以上過ぎているのに、子が居ない方が嫉妬から父上や拙者は勿論、母上や妹達にも良からぬ事をするかもしれませぬ。


昔から言うではありませぬか。「口は災いの元」と。父上にとっては、幸せである事を話しただけでも、


その方にとっては、一歩間違ったら殺意を覚える言葉になるかもしれませぬ。なので、言わない方が絶対に良いです!」


「そうか。分かった。夜も遅いから戻って休め」


「ははっ」


こうして六三郎は勝家に言われて部屋に戻った。残った勝家は


「子が居ない者からしたら嫉妬の対象か。儂の口のせいで、市や子達が辛い目に遭うのはしのびない。


ならば、黙っておくに限るな」


勝家は改めて、プライベートな事は話さないと決意した。

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