表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
214/610

3兄弟の変化

天正四年(1576年)七月十五日

美濃国 柴田家屋敷内にて


「利兵衛。輝一郎達は静かに学んでおるか?」


「若様。輝一郎達兄弟ですが、眠いはずなのに眠い目を擦りながら学んておりますぞ。特に三男の光三郎は、若様の見立てどおり、


文官の適性は兄弟の中で一番有りますな。長男の輝一郎は、「文官でも領地や金銭が支給されるならば、母に楽をさせてやれるから、頑張らないと」と、


言って頑張っております。ですが、次男の正二郎は」


「2人に比べると、色々劣る。と」


「はい。気持ちが武に偏りすぎていると言いますか、理財を侮っているといいますか」


「そうか。ならば、儂が一人一人と話してみる。何かしらの変化を感じ取れるかもしれぬしな」


「お願いします」


皆さんおはようございます。家臣の利兵衛からヤンチャ坊主達の現状を聞いております柴田六三郎です。


柴田家に居候して赤備え達に鍛えてもらって、利兵衛に理財の基礎を教えてもらっての日々が約3ヶ月続いて、


長男は家族を養う意志が強いから頑張っていて、三男は文官の適性が有ると利兵衛は言っているけど、次男は中途半端らしいです


これはこのまま行ったら、史実で滅亡直前の豊臣家で兄貴に切りかかってやらなくても良い戦を起こした、


大馬鹿者に育ってしまう可能性が有る。それを、親父の生きている柴田家でも、俺が家督を継いだ柴田家でもやられたくないから、


矯正の意味も含めて個別面談をしましょうか


で、先ずは長男からです


「六三郎様。お呼びと聞きましたが」


「うむ。輝一郎よ。利兵衛から色々教えてもらったが、赤備え達との訓練の後に理財を学ぶ際、眠い目をこすりながらも頑張っておるそうじゃな」


「勿体なきお言葉にございます。赤備えの皆様に身体を、利兵衛様に頭を鍛えていただいて、更に小吉殿の学ぶ姿勢を間近で見たら、如何に自分が甘えていたかが分かりました」


「赤備えの皆が怒り心頭になった生意気な口調も正された様じゃな」


「あの頃は六三郎様のお話を聞いて、自分も同じ事が出来ると思っていたから、あの様な口調になっておりました。


ですが基礎とは言え、理財を学び、領地に出て領民の方々の手伝いを赤備えの皆様と共に行なって、六三郎様がどれ程慕われているか分かると同時に、


自身の考えが甘い事も実感しました。一人では何も出来ない事を知らない事は、世間知らずと言われても仕方ないと今なら理解できます」


「そうか。3ヶ月前の輝一郎のままだったら、元服しても、士官先の家で周りと不要な争いを起こして放逐されて、最期は野垂れ死ぬだろうと思っていたが、


今の輝一郎なら、己を抑えて周りとの協調も出来るだろうが、更に色々学び出来る事を増やしていけ。


さすれば、母親だけでなく、兄弟を養えるだけの領地を手に出来るかもしれぬぞ」


「ははっ。六三郎様に召し抱えてもらう様に励むだけでなく、召し抱えていただいた後も必要とされる様に精進します」


「うむ。楽しみにしておるぞ。それでは利兵衛のもとに戻って良い」


「ははっ」


こうして輝一郎との面談は終わったけど、ちゃんとし始めている。以前よりは本当にまともになったな。


さて次は三男だな


「六三郎様。お呼びと聞きましたが」


「うむ。光三郎よ。利兵衛から話は聞いておるぞ。兄達よりも、理財の基礎の習得が兄達より早いそうじゃな」


「勿体なきお言葉にございます。拙者は兄上達より身体も小さいですし、赤備えの皆様の訓練も苦しみながらやっております。


そんな拙者が兄上達の足を引っ張らない為には、理財で役立つ人間である事を示した方が良いと思いまして、


兄上達と共に利兵衛様の部屋を出ても、部屋に戻って利兵衛様や小吉殿に教えていただいた結果です。


それに、母上が三ヶ月前に「夫が亡くなってから、息子達に教育をしてやれなかったのは私の責任です」


と言わせてしまったのは、今思えば、とても恥ずべき事です。なので、あの様な口調は自らを世間知らずな子供と言っている様なものなので、


利兵衛様を始めとする皆様には感謝の思いでいっぱいです。ですが、感謝の思いだけでは学ばせてくださる六三郎様に恩返し出来ないと思い、


文官として働かせていただき、柴田家の財政を今以上に良くしたら六三郎様への恩返しになると思い、


理財を全身全霊で学んでおります」


「うむ。その気持ち、誠に嬉しいぞ。だがな光三郎よ。一度に大量の事は覚える事は出来ぬ。少しずつで良いから無理をせずに、覚えられる事から覚えていけ。では、利兵衛の元へ戻って良いぞ」


「ははっ」


光三郎との面談はこうして終わった。普通、末っ子は甘やかされてしまうから我儘に育ってしまうのに、


光三郎は逆だな。母親の謝る姿を見て、自分が悪いと思えるんだから。責任感は輝一郎と同じくらいあるかもな。


さて、最期はやんちゃ坊主の次男か


「六三郎様。お呼びと聞きましたが」


「うむ。正二郎よ。利兵衛から聞いておるが、理財の基礎の習得に苦しんでおる様じゃな」


「はい。お言葉ながら、拙者は兄や弟よりも武芸に自信があるので、利兵衛様の理財よりも赤備えの皆様と同じ訓練をやりたいのです」


「正二郎よ。お主、何か勘違いしておらぬか?」


「と、言いますと?」


「儂はな、お主達を文官にする為に理財を学ばせているのではない。戦場に出さないが、ただ飯を食わせる気は無いから、元服前に出来る事をやらせておるだけじゃ」


「な、ならば!拙者は文官になる気は無いので、赤備えの皆様と共に」


「たわけ!良いか!赤備えの皆を臣従させた時、歳が1番下だった、源次郎、銀次郎、新左衛門の3人は14歳であった。


だからこそ儂は、前線に出て戦って武功を挙げたいと申す者が居ても14歳になるまでは、前線に出さぬと決めておる。


更に言うならば、14歳になっても身体が出来てない者は元服しても前線には出さぬ。


だがな正二郎よ。今のままのお主では、元服して身体が出来ていても前線には出さぬぞ」


「な、何故ですか?拙者は」


「武芸に自信があったとて、周りと協力出来ない自分本位な者は、味方に要らぬ被害を出す。分かりやすく言うなら、正二郎よ。武功を挙げたい気持ちが先走って


1人だけ突出したお主を救出する為に、赤備えの皆が敵に囲まれる場所に行く事になる。お主の行動で、死なずとも良い者が死ぬのじゃ」


「そ、そんな事は」


「無いと言い切れるのか?」


「それは」


「だからこそ正二郎よ。今のままのお主では、輝一郎と光三郎は召し抱えても、お主は召し抱えない事になるぞ」


「そ。そんな。六三郎様」


「だがな正二郎よ。元服するまでは理財を学べ!理財の基礎を学べば、人と協力する大切さを知る事になる。


それに、臣従した当初の源次郎もお主みたいに喚いておった」


「赤備えの副将格の源次郎様が拙者の様に」


「そうじゃ。その源次郎も理財を学び、軍略を学び、身体を鍛えた結果、柴田家で必要な存在になった。


ならば源次郎より学べる時間のある正二郎は、元服したら源次郎と同等の存在になれるかもしれぬ。


だからこそ正二郎。今は理財を学び、人と協力する事を覚えよ」


「ははっ。為になるお言葉、ありがとうございます」


「うむ。気持ちも新たに利兵衛の元で学んで来い。戻って良いぞ」


少しは変わった感じが見えたから、これからは大丈夫かな?


で、面談を終えた俺に


「六三郎!市が産気づいたぞ!神棚の部屋に来い!」


お袋の出産が近いと親父から呼び出しが来ました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ