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あの兄弟の登場

天正四年(1576年)四月二十日

美濃国 柴田家屋敷にて


「岐阜城の織田様より、奥方様の出産の手助けに参りました。これより出産から産後の肥立が良好である事を確認するまで、お世話になります」


「はい。父上は出陣しておりますので、家中の事は嫡男の拙者、柴田六三郎が取り仕切っております。


父上は五月の頃にはこちらに一時的に戻るとの事なので、その間は、必要なものが有りましたら、拙者に一声かけてくだされ」


「お言葉に甘えさせていただきます。それでは、奥方様のお身体の状況を確認したいのですが」


「はい。こちらですので案内します」


皆さんおはようございます。殿から派遣されたお袋の「この時代では」高齢出産を助けてくれるスペシャリスト達を、お袋の部屋まで案内している


柴田六三郎です。もうね、経験豊富にしか見えないお婆ちゃんと、その孫もしくは弟子っぽい若い女性、


そして分厚い医学書みたいな紙の束を持っているお爺ちゃん等、これなら安心だな。と思っております。


そして、部屋の前に到着して


「母上。殿が派遣してくださいました、産婆の方を含む方々が到着しました。部屋に入ってもよろしいでしょうか?」


「はい。大丈夫ですよ」


と、お袋が答えたので、襖を開けまして。


「母上。この方々が、母上のお産を助けてくださる方々です」


「「奥方様には」」


「固い挨拶は良いですから。あら、「たみ」ではありませぬか?」


「お久しぶりです」


おや?お袋の顔馴染みなのか?一応、聞いてみるか


「あの、母上。こちらのたみ殿とは、どういったご関係で?」


「私が浅井家に嫁いでいた時に、茶々の乳母を務めてもらっていたのです。浅井家の周辺が危なくなっていたから、城から避難させていましたが、生きていたのですね」


「はい。前年に亡くなった夫が命がけで逃がしてくれて、逃げた後も半分百姓半分武士の生活で、私や子達を支えてくれたおかげです」


「そうですか。大野殿が」


(おい、ちょっと待て!今、お袋は大野殿と言ったよな。史実で、お袋と関係ある大野なんて、大野治長達が居るけど、じゃあ、このたみさんは、大蔵卿局と呼ばれた人か。


で、その長男の治長は、茶々が産んだ秀頼の実の父親疑惑で大本命の男だったな。人によっては「能力も胆力も並で、忠誠心だけで、滅亡寸前の豊臣の重臣になった男」とも言われてたな


でも、今、目の前のたみさんは、1人だけなんだが?もしかして、子供は実家に預けているから、


此処にはいません。とかか?だとしたら、妹達に変な影響はないかも)


と、六三郎は考えていたが、その希望はあっさりと潰えた。


「姫様。いえ、奥方様。先程話したとおり、夫が亡くなって、子達を食べさせていかないといけないので、どうか、


奥方様のお産が終わった後も、柴田家に仕えさせてもらえないでしょうか?」


おい、このおばちゃん。何言ってんだ?


「たみ。それは私ではなくて」


「たみ殿!」


「は、はい」


「たみ殿は、母上のお産の助けに来たのですか?それとも、柴田家で仕えたいから来たのですか?」


「お、お産の助けに来ました」


「それならば!母上に要らぬ負担を負わせないでくだされ。弟か妹か分からぬが、大事な家族を身籠もっている母上に要らぬ負担を負わせるならば、


良くて、追放。最悪の場合、切り捨てますぞ。よろしいですな。血の繋がりは無くとも、母上は大切な家族じゃ。


士官希望の話は、母上が子を産んで、産後の肥立が良くなってから、拙者が聞きまする。良いですな?」


「は、はい。申し訳ありません」


「分かっていただけたならよろしい。母上、騒がしくして、申し訳ありませぬ」


「良いのですよ六三郎。それに、貴方の声を聞いた赤備え達は勿論、女中の皆も、気になって来ていますから」


俺がお袋に言われて後ろを見ると


「若様!我々に聞こえる程の大声で。何かあったのですか?」


「若様!奥方様に何かあったのですか?」


中庭にぎゅうぎゅう詰めで皆が居た。史実を知っていた事と、お袋に対して図々しいから少しばかり、


怒ってしまった結果、皆が集まってしまった。


「大丈夫じゃ。大した事ではない。役目に戻ってくれ」


俺が皆に戻る様に言うと、


「離せー!」


「此処に母がお役目で居るから会いに来ただけです」


「盗みなどしませぬ」


源次郎、銀次郎、新左衛門が、襟首を捕まえて、男の子をそれぞれ宙ぶらりんにしている。で、話しやすい様に地面に落とされて、


「3人共、その子供はどうした?」


「三人で屋敷の周りをうろうろしていたので、怪しいと思い、捕まえました」


「名前を聞いても、名乗らないので」


「とりあえず、悪さをしない様に、この状態にしましたが、落としましょう」


「ふむ。そうか。お主達、名は何と申す?」


「お主は儂達と歳の変わらぬ小童ではないか。お主には名乗らぬ」


「儂達は、柴田家の嫡男で、柴田の鬼若子と呼ばれておる柴田六三郎様に仕えさせてくれと頼みに来た」


「お主ではなく、六三郎様を出せ!」


こいつら、見た感じ妹達と同じくらいじゃないか。なのに、ここまでのクソガキとはな。仕えさせてくれと頼みに来た割には、まともな教育も出来てないとは


で、俺がそんな事を考えていたら、


「貴様ら、誰に向かってそんな口を聞いておる!?余程の阿呆か?それとも命知らずか?」


あ、源太郎がブチギレ寸前だ。子供相手だから刀は抜いてないけど、思いっきり握り拳を作っている


まあ、あれだけクソガキを見せたんだ。拳骨くらいは。と思っていたら、たみさんが慌てて出て来た。


「お、お待ちください。この三人は、私の息子達です。何卒、何卒ご容赦ください」


「母上!居たのですか!ならば我々も」


「母上が働いているのだから、良いではないか」


「早う、六三郎様に会わせよ!」


クソガキ三人の口がヒートアップしてきたら、赤備えの皆も怒りがレベルアップしてる様だ。これは、俺が止めないといけないかな?


そしたら、


「静かにおし!」


と、息子達全員にビンタした。息子達も目が点になっていたけど、1番冷静な息子が、


「何をするのですか母上」


「何をするかはお前達の方だよ!お前達が、小童と言った、あそこにいる若いお方が柴田六三郎様なんだよ!」


「う、嘘じゃ!」


「六三郎様は鬼若子と呼ばれておるのじゃ。こんな小童なわけが」


「母上、いくらなんでも」


たみさん親子が言い合いしていると、


「「兄上、赤備えの皆が居ないのですが」」


と、茶々と初が来た。すると、


「あー。輝一郎だー。何で此処に?兄上は輝一郎を知っているのですか?」


「本当だー。兄上。輝一郎は何か悪さしたのですか?」


二人の言葉に


「は?兄上?茶々様、初様。お二人には兄君は居ないはずでは?」


と聞いて来た。すると茶々が


「母上が今の父上と夫婦になって、今の父上の子が兄上なんだよ。そうですよねえ六三郎兄上」


「輝一郎。六三郎兄上は、強くて賢いお人ですよ」


「こ、この小童が六三郎様?」


「輝一郎。何で兄上を小童と呼んでいるのですか?」


「そうですよ!兄上は前年に元服して、立派な大人です!それに、元服前に初陣を経験して勝利した、凄い兄上なのですよ。


その兄上を小童とは。輝一郎。どう言うつもりですか?」


茶々と初が輝一郎を含めた三人に、トーンの低い声と冷たい視線を送る。それで全てを察したのだろう


「「「申し訳ありませぬ」」」と三人が平謝りしてきた。


「息子達が申し訳ありませぬ。平に、平にご容赦を」


たみさんも更に平謝りしてきた。


でも、赤備えの皆は怒りがマックスに近いな。仕方ない。


「たみ殿の息子達。改めて自己紹介するが、儂が柴田六三郎長勝じゃ。何故か知らぬが、一部で元服前には「柴田の神童」と呼ばれ、元服後は「柴田の鬼若子」と呼ばれておる。


そんな儂に仕えたいと申すならば、先ずは自己紹介をしないといけないのではないか?長男から自己紹介せよ」


「長男の大野輝一郎おおのきいちろうです」


「次男の大野正二郎おおのしょうじろうです」


「三男の大野光三郎おおのこうざぶろうです」


大野と言う名字で3人兄弟。うん。間違いない。こいつら、史実だと、茶々と秀頼と大坂夏の陣で一緒に死ぬ大野3兄弟だ。


「ふむ。輝一郎と正二郎と光三郎か。それぞれ歳はいくつじゃ?」


「八歳です」


「六歳です」 


「五歳です」


「成程。まだ十歳にもなっておらぬのに、いや、十歳になってないから、ここまで口が悪いのか」


「申し訳ありませぬ。前年に父親が亡くなって、息子達にまともな教育を出来る人が近くに居なかったので、


この様な口になってしまいました。全て私の責任です。申し訳ありませぬ」


どうしようかな?俺が考えていると、


「たみ殿であったな。前年まで父親が居たなら、まだマシになるはずではないか?若様は、三歳で前の母君を亡くしておる。そして、前年に奥方様が嫁いでこられるまでの間、


父である大殿は、戦に出陣し続けて、それでも若様は、歳相応の振る舞いをしては父が心配で戦に行かなくなるから、自分の事は自分でやる様になった結果が、


現在の十二歳で「柴田の鬼若子」と呼ばれる様に繋がったのじゃ。それをたみ殿の息子達は」


源太郎の怒りが特に凄いな。これは、怒りを下げる為に、これをやろう


「源太郎。とりあえず、そこまでにしよう」


「若様。しかし」


「勿論、何も無しというわけではない。儂に仕えたいと申すならば、年齢的には、赤備えの皆がいつもやっている訓練を三人とも、三分の一の距離と回数を達成出来るか見てからにしよう」


「それは良いですな。生意気な減らず口も、多少は無くなるかもしれませぬな」


「よし。決まりじゃ!輝一郎、正二郎、光三郎よ。赤備え達と同じ場所で、同じ事を少ない数でも出来るかで、お主達を召し抱えるか決める。気合いを入れよ」


「「「は、はい」」」


「兄上。茶々も行きます」


「初もー」


「と、いう事で、母上。少しばかり訓練に行って来ます。何かあったら利兵衛に言ってくだされ。


そして、たみ殿。母上に要らぬ負担を負わさないでくだされ」


こうして、クソガキ3兄弟の訓練が決まった。

三兄弟の仮名は適当に決めました。史実と違うでしょうが、ご容赦ください。


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