その日の父は超人
終盤に下ネタが出ますが、苦手な人もご容赦ください。
屋敷周りを二周して、水野家の皆さんにも事情説明して、親父の元へ行ったら、上半身裸で湯気が出る程、体を動かしていた様で、準備万端だった
「来たか!誰からでも良いぞ!儂に一撃でも入れた者は、何かしらの褒美を与えよう!さあ、かかって来い!」
親父がそう言うと、
「ならば大殿!一番手は、拙者、土屋銀次郎が参りまする」
武田との戦で一番乗りを果たした銀次郎だった。
「よし。銀次郎よ。いつでも来い」
親父が声をかけて稽古が開始されたけど、基本的に怖いもの知らずの銀次郎が親父の圧にビビって動けない
そこで親父は
「来ないならば、儂から行くぞ」
そう言いながら動き出した。無駄の無い足捌きで、あっという間に銀次郎の懐に入る。そして、
「ふん」
銀次郎の顔の前に模擬槍を寸止めした。銀次郎は思わずへたれこんだ
「銀次郎!六三郎の初陣では、武田の砦に一番乗りを果たしたそうじゃが、勢いだけでは何も出来ない時もある。それを忘れるな」
「ははっ。ありがとうございました」
「うむ。精進せよ。さあ、銀次郎の次は誰じゃ?」
「大殿。銀次郎の次は、拙者、原新左衛門が参ります」
銀次郎と並んで脳筋2トップの1人、新左衛門が親父に挑む様だ
「良かろう。新左衛門よ、来い」
「そうりゃあ!」
新左衛門は親父の圧に負けないで、突撃していった。
だけど、親父は
「甘い!」
足を払って、新左衛門を転ばせた。見事な回転を見せた新左衛門は、直ぐに体勢を立て直したけど、
立て直した時には親父の模擬槍が新左衛門の首の横にあった
「参りました」
「新左衛門よ。相手が動く前に叩く考えは良いが、相手を見ずに動いてはならぬぞ」
「ありがとうございました」
新左衛門もあっさりと終わった。で、そんな親父にそれぞれ挑んでいったけど、全員倒されて、途中、妹達を寝床に行かせて、お袋が見に戻るという多少の休み時間はあったけど、それでも残りは
「源太郎と源次郎と六三郎の三人か。誰でも良いぞ」
「ならば拙者が参ります」
「源次郎か!かかって来い!」
源次郎が挑んでいった。ガタイ的には親父に負けてないけど、どうなる?
「大殿!参ります!そりゃあ!」
源次郎が鋭い踏み込みから、親父へ模擬槍をぶつける。
「源次郎よ!以前よりは腕を上げた様じゃな!嬉しいぞ」
それでも親父は喋る余裕がある様で、喋りながら避けている。源次郎は親父の声を聞く余裕は無い様で
「そりゃあ!」
更に模擬槍を上下左右に振り分ける。それでも親父は全て捌く。そして、源次郎の動きが鈍くなった時に
「むん!」
親父の模擬槍が源次郎の顔の横を通って、源次郎がへたり込んで
「参りました」
「源次郎!相手を叩く為に打ち分けるのも良いが、ここぞという時の為に、一撃に繋がる基本を大事にせよ」
「ありがとうございました」
「次は源太郎か?六三郎か?」
「拙者が若様の露払いとして、参ります」
「源太郎からか。かかってまいれ」
「大殿参りますぞ!そりゃあ!」
源太郎は模擬槍を上下に打ち分けて、親父の意識が下に行ったら上を攻撃して、上に意識が行ったら下を攻撃する上手さを見せていたけど、
「ふん!」
上からの攻撃を避けると親父は模擬槍を踏みつけて、源太郎の顔に模擬槍を寸止めして
「参りました」
「源太郎!正攻法で戦えば、お主は強いかもしれぬが、相手も正攻法で来ると思ってはならぬぞ」
「ありがとうございました」
「さあ!最期は六三郎、お主だけじゃ!かかって来い!」
「父上!参ります!そうりゃあ!」
と、言った後、見事にボコボコにされて
「ありがとう、ござい、まし、た」
と、言葉を残して六三郎は気絶した。
「「「「若様!」」」」
「安心せい!倅はこれくらいで死ぬ様な軟弱な男ではない。寝かせておけば、明日にでも目覚めよう。
お主達も、今日は風呂に入って休め!儂が水野殿に話しておく」
「「「ははっ」」」
こうして勝家直々の四百人稽古は勝家の年齢を疑う程の圧倒的な強さだけが際立った。
六三郎達全員がその場を去った後、その場には勝家と市だけが残った。残った市は、勝家の汗を拭いてあげていたが、
勝家は、余程昂っていたのか
「市!済まぬ」
と言いながら、市をお姫様抱っこしながら、部屋へ行き、
「権六様、せめて何か敷いてください」
と市に言われて、一瞬落ち着くが、それでも昂りは止まらなかった様で
「ご、権六、様。す、凄い、で、す」
再婚とは言え、一応新婚でもあるので、そのまま致してしまった。この時、勝家は55歳、市は29歳。